二杯目 門出と記憶の片隅

 志望校に無事合格した私は、家からは結構離れた高校に進学を決めました。

 地元を離れてしまい、同じ学校に行く友達はいないので、また初めから作ることになるけれど、あまり心配はしていません。

 通う学校の名前は『月見ヶ丘高等学校』、略して“月見高”(つきみこう)。さらに略されて月高(つきこう)とも呼ばれている学校でした。圧倒的に後者の方が多かったけれど、競技なんかで学校が紹介される際は前者だったかもしれません。

 元々は女子高で、何年か前に共学になった学校でした。けれど学校見学の際の説明では、八対二の割合で女子生徒が多くを占めている話で、男子生徒は肩身が狭いからしっかり考えてほしいと、生活指導の先生が話していたのを覚えています。

 この高校に決めた訳は、将来のことを考えた時、何もやりたいことがなかったからというのが理由でした。

 ただ闇雲にこの学校に決めた訳じゃなく、月に二度、さまざまな職業の講師を迎えて講義を聞かせてくれるというのが魅力的だと思ったからです。この学校自体、大学への進学率は確かに高いけれど、就職率も県内の普通高校に比べて高かったので、ここなら何か将来やりたいことを見つけられるかもしれないと考えた私は、この学校を選んだ次第です。

 中学の友達は、美容師や学校の先生、芸術家や公務員になりたいと言って専攻の高校なんかを選んでいました。それに比べて私は何もやりたいことがないなと考えていたけれど、両親は“これから見つければいい”と言ってくれたので、そこは甘えさせてもらうことにしました。


 そして私は今、今日から学舎(まなびや)となる校門の前にいました。視界前には木造の校舎、左手に体育館があり、右手に広い校庭がありました。

 門から校舎の間には桜並木が一直線に連なって広がっていて、校舎を綺麗に彩っています。

 綺麗さに圧巻されながらも、私は高鳴る心おを落ち着かせるために、大きく息を吸って“よしっ”と小さくつぶやき、門を潜って下駄箱のある校舎へと向かいました。


 下駄箱のある校舎玄関口。

 ここに来るまでに、かなりの部活に勧誘をされました。

 桜にも目を引かれていたので、たどり着くまでに結構時間を要した感覚になりました。

 下駄箱に靴をしまい、学校指定のサンダルに履き替えて、クラス表の隣にあった地図を頼りに教室へと向かいます。

 正面玄関の目の前に幅広の階段があって、そこから上の階へと階段が続いていました。

 横に広い大きな階段で、折り返しの踊り場の左右から階段がさらに伸びている不思議な階段でした。幅広階段の右手には北校舎へと続く廊下があり、屋根と壁のある渡り廊下になっていました。そこを通って北校舎に向かうと、西側の中庭には綺麗な枝垂れ桜が植えられていました。

 まるで入学生を迎えてくれているようにも感じます。

 一年生の教室は北校舎の3階。各階で学年分けされており、3階が一年生。2階が二年生、一階が三年生になっています。

 階段は玄関前の大きな中央階段の他に、東西に伸びる本校舎の端に一箇所ずつ。北校舎は本校舎ほど大きくはない中央階段と、東西に二箇所と、似たようなところに階段がありました。

 それとは別に北校舎には屋上があり、昼休みになると解放されるとのことなので、あとで行ってみようと思っています。

 ここか…

 いろんなとこに目移りしていると、割とあっという間に目的地の教室の前に到着しました。

 教室の場所は北校舎3階、西側の一番端の一年一組。結構歩きました。教室のドアを開けて中に入ると、まだ誰もいなかったので、指定された席に座ります。

 鞄を机の脇にかけながら、購買なんかはどこにあるのだろうかと考えていると、教室のドアが開きました。

 現れたのは、長い髪を靡かせた、女の子でした。

 おはようと声をかけると、

 「おはよう!」

 と、ひまわりみたいな笑顔で返事を返してくれます。

 髪を頭の高い位置で結い上げてポニーテールにしている、かわいい子でした。結い上げているにも関わらず、背中くらいまである長い髪は、とても綺麗な艶のある髪です。

 「わ、私は珈賀(かが)めぐみ。よろしくね」

 とりあえずは自己紹介を。

 「……! よろしく! 西藤(さいとう)エミリっ! よろしくね珈賀さん!」

 なんて笑顔……! 眩しい……! そんでもってめっちゃフレンドリー!

 目を見開いて私は思ったけれど、今は心の内にしまっておこうと思いました。

 「よろしく、西藤さん」

 「えへへ…♪」

 ウキウキな彼女はそのまま私の隣の席に腰を下ろしました。

 「ねぇねぇ! 珈賀さんってどこの学校だったの!?」

 グイグイくる子だな……。

 あっけに取られますが、とりあえず親睦も深めたいので、答えることにします。

 「えっとね…知らないと思うんだけど、鷹塚(たかづか)中ってとこなんだ。弓道が強かったかな? 私はテニスだったけど…」

 「鷹塚中!? そんな遠くからきてるの!?」

 「え? 知ってるの?」

 「うん! バスケの練習試合で行ったことあるの! あそこの体育館綺麗だよね!」

 「そう? 立て替えたのは随分前だったから…あんまり綺麗とは思ってなかったかなぁ。 確か私が5年生の時に立て替えるって話が出てたから…」

 「そうなの!? じゃあ結構経ってるんだぁ……かなり綺麗に使ってたんだね!」

 「そうだったかも。 あそこの体育館、ワックスがけとかもしてるから」

 「ええぇ!? あんな広い体育館のワックスがけしたことあるの!?」

 「え? う、うん。いつも使ってるからって…授業の一環でやるんだ」

 「へぇおもしろ~い」

 私の経験で、かなり話が盛り上がりました。ちょっと嬉しいな。エミリちゃんのことも何か聞かないと。

 「西藤さんはどこ中だったの?」

 「私は上牧北中(かみもくきたちゅう)ってところ! この学校から歩いて30分くらいだよ!」

 「へぇ、じゃあ地元なんだ」

 「うん! 他にも同じ学校の友達いるんだ! クラスは違っちゃったんだけどね」

 「そうなんだ。 ちょっと羨ましいな、私はまた最初から作らなきゃいけないから…」

 「あ! そうか。 なら私が最初の友達だね!」

 「え?」

 「嫌……かな…? あはは……」

 上目遣いで苦笑いしながら、エミリちゃんは私を“友達”と言ってくれました。

 「じゃ、じゃあ…よろしく…お願いします……」

 面と向かって友達と言ってくれた人が今までいなかった私は、照れながらも彼女に返事を返すと

 「わあははああぁい!」

 “わーい”を長く言ったのだろうか、ハグされながら喜ばれました。

 フレンドリー!

 思わず声に出しそうになりました。


 クラスが賑やかになり、現在の時点で男子生徒はまだ一人しかいませんでした。窓際に一人腰掛けて、窓から見える中庭の桜を見ているように伺えます。

 彼の身長は、教室に入ってくる時まで話していた女子が、沈黙するほど大きなものでした。私も同じく言葉を失った一人です。

 明らかに話を掛けずらい相手ではありますが、入ってきた時に、普通に「おはよう」と挨拶をするとこを見ると、体こそいかついですが決して怖い人ではないことは確かでした。

 お顔も体型とは裏腹に、どこかありがたみのあるゆるい感じの印象もありますが、目鼻立ちが良いので、とても優しそうな面持ちでした。

 普通のイケメンとは違い、“ありがたみ”のあるイケメンに見えました。

 そんなボーッとしている彼に、最初に声をかけるのは誰かと、黄色い声が少し聞こえてくる中、一人堂々とした姿勢で彼に声をかける女の子がいました。

 「ねぇねぇレンくん! 同じクラスだね! やったね!」

 さっき私に友達と言ってくれた女の子で、フレンドリーなエミリちゃん。どうやら知り合いのようです。

 「まぁたお前と一緒か。ここまでくると呪いか何かだな」

 「ひどぉい! そんな風にいうことないじゃない!」

 フグみたいに膨れる彼女に

 「うるへぇ」

 その膨れた頬を、レンくんと呼ばれた男子が両手で潰すと

 「ぷひゅー」

 萎んで空気を吐く彼女の姿は、フグみたいでちょっと可愛いです。

 「ムー…もうちょっと喜んでくれてもいいんじゃないんですかぁー…こんないたいけな少女と触れ合えるんだからぁ…」

 「山をかけてるとこのどこが“いたいけ”なんだ。 むしろ“強靭”(きょうじん)だろ」

 「そ、それは言わないでぇ!」

 「ふにゅ」

 古い過去を掘られたエミリちゃん、自身の頬にある大きな手を払いのけて、彼の頬を同じように勢いよく潰します。年頃の女の子、聞かれたくないことの一つや二つありますよ。

 そして吊り目のになったぶさ顔の彼も、悪くない物でした。

 しかし「やめなさい」と言いながら、レンくんは小さな手をどかします。

 「他言はしませんよ。“エミ”の前では言うけど」

 「言わないでぇ! 口縫い付けるよ!」

 「可愛く言っても言葉に棘ありますぜお嬢」

 「ム~~…」

 また膨れるエミリちゃん。

 「そんな顔したら、可愛いのが台無しですぞぉ~」

 今度はペチペチ叩きながら言います。いい音です。

 「それにこれ以上口開いたら収集つかないよ?」

 「ハッ!」

 言われて気づいたエミリちゃんは、口を押さえて表情に出します。本当に可愛いです。

 教室にいた全員が、美女と美男に釘付けになり、ほんわかとした空気が流れていました。そんな和やかムードの中、教卓側のドアが開かれました。

 「は~いおはよう~、みんな席着いてぇ。入学初日に遅刻しないで良かったなお前ら」

 気だるそうに入ってきたのは、女性の先生でした。その後ろから二人の男子生徒が入ってきます。“お前ら”とはあとに続いていた男子生徒二人でした。

 一人は短髪に体格の良い男子生徒で、もう一人は細身の大人しそうな生徒でした。二人ともレンくんほど大きくはありませんが、一般男性よりは大きいくらいでしょうか。決して小さくはありませんでした。

 先生は声を聞かないと男性と間違えてしまいそうになるくらい綺麗でした。すらっとした体格はさながらモデルみたいで、長い足のおかげで体が大きく見えます、ショートカットの似合うイケメンの先生でした。

 イケメンは失礼ですね、美人な先生でした。

 すぐにみんなが各々の席に着いて、先生が「いいか~?」と聞くと、ホームルームが始まります。

 「え~…今日から担任になる篠山(しのやま)です。え~…よろしく」

 めんどくさそう。私は第一に思いました。

 心底眠そうだし、何かパッとしない先生だなと思ったけれど、しっかりとホームルームを続けます。

 「今から入学式で、そのあと教室でレクリエーションという名目で自己紹介をしてもらうから、各々考えとくように。それが終わったら委員会とクラスの係も決める。それが終われば今日はしまいで下校になる、今日は昼から購買もやってる。食い終わったら部活を見にいくもよし、学校を散策するもよしだ。けど朝と同様部活の勧誘があるから気をつけろよ。帰りたいやつはメシ食ったら帰るが吉だ」

 私は女性の先生から“メシ”という単語が出てきたことに驚きました。相当男まさりな先生なのだなと感じました。

 少なからず先生が話している間、周りの女子生徒からは黄色い声が聞こえてきます。これはそのうち“レン派”と“篠山派”かで分かれるかもしれませんね。

 私がそう考えいる間も、先生は話を続けます。

 「え〜それと…今日限り、学級委員をギリギリになって教室に入った者がやること。え〜赤木(あかぎ)、頼んだぞ」

 名簿を見ながら生徒の名前を呼びました。

 「えぇー! なんで俺!? それなら“もう一人”も同じじゃないっすか!」

 短髪の男子が反論しますが、即座に先生が返します。

 「お前の方が素質ありそうだったもんでな。今日だけだからあまり気張らんでもいい。とりあえずやってみなさい」

 何か企みでもありそうな笑みを浮かべて言いました。その微笑みもカッコイイです。男子からすると憎たらしいでしょうが、女性なので比べられないことは確かでした。

 「はぁ…めんどいなぁ全く……」

 赤木と呼ばれた生徒は、めんどくさそうに愚痴みたいに漏らします。

 「まぁ気張るな。それじゃ、ホームルームを終わる。委員長代理、号令」

 「はい……起立!」

 良く通る声でクラスが彼の声に包まれると同時に、全員が彼に従います。

 「礼!」

 頭を下げると篠山先生は、廊下へと並ぶよう指示しました。


 入学式を終えると、一年生は体育館に残りすぐに学年集会が開かれました。

 強面の学年主任の先生の話を、みんな静かに聞いていました。

 集会が終わって教室に戻る際、終始お葬式みたいに学年が暗かったことは、高校に入って私の最初の思い出になることになるかもしれませんね。

 教室に入ると、緊張が和らいだのか、みんな肩の力が抜けた気がしました。

 すっかり疲れ切っていますが、これからの時間はまだ気は楽でしょう。

 「鈴木先生怖かったね……」

 隣を歩いていたエミリちゃんが、席に座る私にそう話しかけてくれました。

 「そうだったね……一瞬ヤクザかと思っちゃったよ…怒らせたら怖いんだろうなぁ……」

 「校則破ったら“ケジメだ。小指出せ”って言ってきそう」

 「どんだけ重罪なのそれ」

 そんな他愛もない話をしていると、先生がすぐに教室に入ってきました。

 やはり気だるそうに「席着け〜」と言うと、立ち話をしていた人は自身の席へと向かって行きました。エミリちゃんは去り際に私に“またね”と声をかけて戻って行きました。

 女の子の私でも、彼女には惚れ惚れします。本当に可愛いです。

 全員が席につくと、篠山先生が口を開きました。

 「え〜それでは、宣言通りレクリエーションを始める。廊下側の一番前から自己紹介をしてくれ。各々一年間仲間になる名前は覚えるように。こっちもどんな奴か把握したいので、時折質問するのでよろしく。それじゃ、始めてくれ」

 最初の紹介は、今日遅刻しそうになってた男子。委員長代理でした。

 「え〜っと…今日限定の委員長、赤木 昂(あかぎ のぼる)です! 中学ではバスケをしていました、部活はバスケ部があれば入ろうかと思ってます! 趣味は特にこれと言ってありません! 言っときますが、委員長は今日限定だからな! これから一年よろしく!」

 ウケを狙い、少しウケました。

 それから二人自己紹介をすると、クラスで二人目の希少な男子です。赤木くんと同じように遅刻しかけた人でした。

 「えっと、朝霧 凛葉(あさぎり りんよう)と言います。親しい人からは“りん”と呼ばれることが多いです。中学では美術部で、高校でも入ろうと思っています。趣味は絵を描くことと、映画鑑賞やテレビゲーム、結構インドアが多いです。苦手なのはスポーツ全般になります」

 するとここで、篠山先生から質問が彼に向けられました。

 「朝霧、名前の由来なんかは聞いてたりするのか? 不思議な名前だから気になってな」

 クラスからは確かにと言う声が多く聞こえてきました。

 「あぁ。“凛と舞う青葉のように美しくあってほしい”からと聞いてます。親父が考えたと言ってました」

 クラスがどよめきました。素敵な意味から来ているのだと、先生も関心を示していました。すると今度は生徒からの質問が来ました。

 「質問したいです」

 挙手しながら声を出したのは、レンくんでした。長い腕がタワーみたいに聳(そび)え立っていました。

 「ん? あぁいいぞ」

 篠山先生が許可を出すと、立ち上がって質問します。

 「絵は主にどんなのを描いていますか? あと、今ハマっているゲームとか、オススメの映画なんかを聞きたいです」

 レンくんが発言しただけで、彼に好意を向けているクラスの女子は一気に聞き耳を立てます。朝霧くんを見る目が変わりました。

 レンくんが気になっている朝霧くんを起点に、彼との距離を詰めようと言う魂胆でしょうか、もうすでに彼を我が物にする戦いは始まっているようです。

 「え? あ……えっと…」

 レンくんの質問に答えようとしますが、朝霧くんは言葉を詰まらせました。

 それもわかります。かなりの視線を浴びているのですから。

 それ以外に考えられるとしたら、質問なんてこないと考えていたのでしょう。返す言葉を絞り出すように、朝霧くんは口を開きました。

 「えっと……絵は、自分の考えたキャラクターを描いたり……漫画やアニメ、ゲームのキャラなんかを、模写したりもします……」

 なんだそれは?

 私はあまり良くわかりませんでしたが、質問したレンくんは、頭を縦に振っています。

 「げ、ゲームは最近…P○4って言うゲーム機で、○トル○ィールド4をやっています……」

 ……わかんない

 全くわかりませんでしたが、質問したレンくんは、しっかりと頭を縦に振っています。目も心なしか輝いて見えます。

 「お、オススメ映画は……“死神の最後”です…」

 知らない……

 全く知らない映画でした。質問したレンくんは、かなりしっかりと頭を縦に振っています。さらには熱い視線を誰よりも朝霧くんに送っていました。

 周りの女子を見ると、訳わかんないと言いたげな顔をしているのがちらほら見受けられます。

 実際、訳わかりませんでした。

 「いいこと聞けたよ。ありがとう」

 最終的にレンくん、朝霧くんに手を合わせていました。


 廊下側のクラスメイト五人の自己紹介が終わると、二列目の一番前の列に戻って次が私の番、二列目の2番目です。前の人が自己紹介を終えると、私は立ち上がって自己紹介を始めます。

 「珈賀(かが) めぐみと言います。 中学では“めぐちゃん”と呼ばれていました。 県境にある鷹塚中学校出身です。 電車に1時間揺られて通学しています」

 クラスが響めきました。と言うより驚いていました。

 そらそうです。校内でも通学にそんなに時間をかけてるのは私くらいですから。

 各々驚きの声が出続けていましたが、私は続きを話します。

 「えっと、趣味はコーヒーを淹れることで、ミルって言う道具を使って豆を挽いて淹れています。 よく自分の淹れたコーヒーを飲みながら、本を読んでいます」

 ここで篠山先生から質問が来ました。

 「ほう、珈賀はなかなかいい趣味をしてるんだな。 豆は何が好きとかあるのか?」

 そのまま流されると考えていた私は、少し驚きながらも、先生の質問に答えます。

 「えっと、グァテマラが好きです。 香りが高いのが結構好きなんです。 まぁ…専門店とかの豆じゃなくて、スーパーなんかで売ってる市販のやつなんですけど」

 「ははっ! 今はその方がいいな」

 先生は笑いながら言うと、続けて私に忠告みたいな言葉を選んで話しました。

 「バイトするなら申請は忘れるな。 何も言わないでバイトすると、さっきの学年指導の先生のとこに問答無用で連行されるからな」

 全員の背筋がゾッとしたことでしょう。実際私は固まりました。

 「わ、わかりました…」

 しかし、同時に疑問を抱きました。

 あれ? なんでバイトの話になったんだ?

 そんな疑問を置き去りにするかのように、先生が質問を続けました。

 「本は何を読むんだ?」

 「え? あ、はい! 最近はジャンルは問わずに色々読んでます。 中学の頃はコーヒーの雑誌、焙煎士やバリスタの方が出してる本を結構読んでました。 今はわかりやすくまとめられた漫画なんかが多いですね」

 「おぉ、そうか……コーヒーかなり好きなんだな…」

 「はい、好きです。 親からは遺伝だって結構言われますね」

 私は、自分の言葉でおじいちゃんを思い出すと同時に、まだ一人で暮らしているおばあちゃんのことを思い出していました。 最近会いに行ってないな…。

 「そうか、まぁ長い話になりそうだからここまでにしようか。 機会があったらまた話してくれ」

 「あ、はい」

 「それじゃあ、次」

 私が返事をして席に座ると、後ろの席の子が立ち上がりました。


 三列目の4番、エミリちゃんの番になりました。

 「西藤 エミリです! 趣味は体を動かすことが好きなので、お父さんと山登りに行ったり、魚釣りをよくしています! あ、あと! バスケ部に入部します! みんなよろしくね!」

 元気に自己紹介を済ませました。可憐で、本当に可愛いです。

 「見た目にかなわぬ、渋い趣味をしてるんだな」

 篠山先生がそういうと、“ハッ!”と声を出して口を隠しました。

 可愛い……

 先生が続けます。

 「結構アウトドアみたいだが、キャンプなんかもするのか?」

 「! はい! 毎年夏休みには行ってます! いずれソロキャンプもやって見たいなぁーなんて…」

 「そうか。 経験を積むことはいいことだ。 そのうちやれるといいな」

 「! はいっ!」

 運動部らしい返事の後に、満面の笑みを出す彼女を見て、全員が同じことを考えたことでしょう。と言うより、それしか思い浮かびませんでした。

 “可愛い…”


 とうとう窓際の席、五列目の一番前。クラスの女子全員が、待ちにまった人の自己紹介が来ました。

 背格好的にそこじゃないだろうと言いたくなりますが、誰も言いませんでした。なぜなら彼には、“自分に”好意を抱いてほしいのですから。

 「え〜…琲ノ湜 蓮(ひのじき れん)です。 趣味は朝霧くんと似たような趣味になります。 絵は描いていませんが、アニメからドラマ、小説や漫画と言う感じで、色々と読み漁ったり見漁ったりしています」

 納得です。彼が朝霧くんに抱いていただろう好意は、どうやら共通の趣味だったようです。どうりで輝いた目をしていた訳です。

 今は死んだ魚のように遠い目をしながら、自己紹介を続けます。

 語り口調的にはイキイキとしていますが、なぜでしょうか。理由はわかりませんでした。

 「好きでオススメの映画は“ブーケの行方”です。 ゲームは朝霧くんと同じ物を中心に、最近は〇ポ○クロイスシリーズの初代作品から順にやっています、最近やっと三作目に入りました…」

 ここで先生が食いつきました。

 「ほぅ。 蓮くんにそんな趣味があったとはね、知らなかったよ」

 篠山先生が、生徒を下の名前で呼びました。さっきまではそんなことなかったのに、なぜでしょうか。それとは他に、私は“知らなかったよ”と言うセリフが気になります。

 「まぁ、“いつも”先生の話に合わせていますので。 それがオレのできる精一杯のサービスですから」

 「ふふっ。 ありがとうね」

 彼の言葉で確信に至ります。どうやら互いを知っているようです。

 蓮くんの言うサービスとはなんのことでしょうか? さらに気になります。

 「えっと…続けても?」

 「お? いいよ」

 「それじゃあ」

 まだあるのか。

 さっきの会話が気になりすぎて、これからの話は頭に入ってこないと思っていました。

 「最近ハマっている漫画と好きな小説の話になります」

 前言撤回です。集中します。

 「漫画は“サバイバー”で、作者は岩本 源二(いわもと げんじ)先生です。 小説は“アゲ○ン、私と〇〇の300日”です。 小説の方はかなりオススメの作品で、一冊完結の作品なので読みやすいと思います。 漫画の方はマニアックな作品ですが、“ささる人”には“ささる”と思います。 ちなみにまだ終わってません」

 クラスの女子全員が、脳内にメモしたことでしょう。ここで私が朝霧くんを見ると、先ほどの蓮くんみたいに頷いで、目は輝いていました。同類がいるとでも言いたそうです。

 「まぁ…こんなですが、よろしくお願いします」

 全員が拍手しました。朝霧くんだけ一際大きく聞こえてきます。

 しかし、篠山先生は違いました。

 「もう一つはいいの?」

 その問いかけには、クラスの女子全員を困惑させました。先生との間にしかない秘密がまだあるのです。男子二人は関係ないと言いたげですが、女子は彼を凝視します。

 「大丈夫です……というか…」

 というか?

 「“ど天然”でよかったです…」

 視線の先には、蓮くんを知るもう一人。教室のちょうど中心の席に座る女の子でした。

 「へ?」

 エミリちゃんは何かと声に出すと、篠山先生は笑いました。

 「あっはっはっ! 確かにそうだな。 とりあえず、よろしくね蓮くん」

 「はい。よろしくお願いします」

 “なんだ今の会話は”と、全員が言いたくなりました。そしてもう一つ。蓮くんの過去を知っているのは、少なからず先生だけではないと言うことでした。


 クラス全員の自己紹介が終わり、次に委員会を決めてからクラスの係を決めました。

 蓮くんの取り合いという名の委員会と係決めが進むと思っていましたが、自己紹介だけで意気投合した蓮くんと朝霧くんの間に入ることができず、無事に終わりを迎えました。

 無事というより収穫なしに終わったと言った方がいいかもしれませんね。

 「それじゃ、これで全部決まったな。ん〜…まだ10分くらいあるなぁ…」

 今日のスケジュールが終わり、残りは放課後を待つのみとなりました。篠山先生が何をしようか考えている時でした。

 「んー…よし」

 考えがまとまったようです。

 「とりあえず今日はここまでにする。 時間になるまで教室からは出るなよ。 委員長、号令」

 「はい……起立!」

 一瞬やる気のない返事をした委員長。結局赤木くんがそのまま勤めることになりました。


 なぜ彼が継続することになったかというと、委員会決めの時のエミリちゃんの一言でした。

 「え〜? 続けないの?」

 「へ? あ、やります」

 二つ返事だったのです。思い切り奪われていきました。

 「よろしくねっ! 赤木委員長!」

 「お、おう!」

 最後に笑顔という一撃が、彼のハートを完璧に射抜いた形になりました。


 「礼!」

 よく通る声で号令がかかり、「さようなら〜」と声が揃いました。

 「はいさよなら〜。 静かにしとけよぉ」

 それだけいうと、篠山先生は教室から出ていきました。

 「ふぅ…」

 蓮くんが一息つきますが、女子にしかわからない緊張感のあるピリッとした空気が漂いました。エミリちゃんも気づきますが、何かと周囲を見ていました。

 立ち上がってエミリちゃんの元へ行けない雰囲気でしたが、そんなことは関係ないと朝霧くんは蓮くんの元へと歩み寄っていました。

 「琲ノ湜、ハード持ってるってほんと?」

 「おっ! 来たね。 ホントよ〜。 とりあえずアカウント教えて。 フレンド申請送っとくから」

 「え? お、おう」

 「あ。 あと連絡先も教えて」

 クラスの女子一同が目を見開きました。

 予想外です。とんとん拍子に話が進んだかと思うと、彼の方から連絡先の交換を告げてきたのですから。

 「え? なになに? なんの話してるの?」

 それに興味をそそられたエミリちゃんまで加わろうと知るから驚きです。

 「へ? え、えっと…」

 朝霧くんはテンパって答えられませんが、

 「男の密談」

 蓮くんはあっさりと答えます。密談なんかになっていませんが。

 「どこがだよ」

 すかさず朝霧くんが蓮くんにツッコミを入れました。既に二人の息はかなりのものです。

 本当に今日初対面? ものすごく言いたいです。

 「ねぇ、二人とも今日初めて会ったんだよね?」

 エミリちゃんが代わりに聞いてくれました。

 「え? まぁ…そうだね。 琲ノ湜とはさっきの自己紹介が初めてだね」

 「まぁ、オレが一方的に趣味似てんなってだけで食いついた感じだな。ゲームも最近でたばっかであんま普及してないから、ゲームフレンドが少ないからな」

 「へぇ、そうなんだ…そのゲームって、私もできるかな?」

 エミリちゃんは二人を見てそういうと、

 「無理だな」

 「ヒドーっ!」

 蓮くんが即答しました。

 「オレのファ○コン、壊した事忘れてないだろ?」

 「うぅ…」

 「機械音痴なのは知ってるんだ。 それに無理して話を合わせようとしてやりたくない事やっても意味ないからな」

 ごもっともでした。流石のエミリちゃんもあとに引きます。

 「まぁ…興味が沸いたら、やってもいいんじゃない? 最初から誰でもできるって訳じゃないし…」

 しかし、助け舟を出したのは朝霧くんでした。

 「! うんっ!」

 満面の笑みでした。

 「けど…人のゲーム機壊すのはちょっと……気をつけないとね」

 「あはは…そうするよ」

 朝霧くんのおかげで、何か少しいい雰囲気で終わった気がします。

 すると、会話が終わった時でした。

 「おーい、そこで盛り上がってるお三方。 ちょっといいかい?」

 声の主は委員長の赤木くんでした。教卓へと進んで、話始めました。

 「委員長からの提案なんだけど、これからお昼を各々調達したら、親睦会って事でみんなでここでお昼ご飯食べない?」

 いい提案でした。学校の食堂なら生徒のお財布にも優しいでしょうし、どこかお店を予約して行くより断然いいです。

 私はこのあと特に何も用事はないので、クラスメイトの事も色々と知りたいので、参加は確定でしょう。

 「それ! いい! 私参加しまぁーす!」

 真っ先に乗ってきたのはエミリちゃんでした。

 「お! 他には!?」

 ちらほらと、エミリちゃんが参加するならと、参加の声が聞こえてきます。

 「他は?」

 クラスの半分が参加することになり、残りはどうしようかと悩んでいるようでした。

 「二人は?」

 赤木くんが男子二人に聞くと、

 「どうしよっかな……」

 朝霧くんはあまり乗り気じゃありませんでした。しかし隣の彼の発言で、状況が一変しました。

 「参加しようかな、このあと特に何もないし。 一緒に食堂行こうぜ“凛葉”」

 全員参加が確定した瞬間でした。

 この時、朝霧くんのことをちゃっかり名前呼びしていたことは、本人と“呼ばれた人”しか気がついていませんでした。


 「疲れた…」

 親睦会が何事もなく終わり、私は帰りの電車に乗っていました。

 3時過ぎの電車だというのに、中は学生で溢れていました。

 え? 親睦会で何もなかったのかって? 率直に言いますと、何もありませんでした。

 クラスの親睦は深まりました。そこはかなりの利点です。友達もエミリちゃん意外にもできました。蓮くんを狙う張り詰めた緊張もあるだろうと覚悟はしましたが、それは途中からなくなりました。


 チャイムがなると、教室にいた全員が一斉に購買へ向かいました。

 購買には食堂が隣接されているので、食券を買えばそこでも食べることができました。先生方もそこでお昼を済ませることがあるようです。

 今日は教室で食べられるものを買って行く形なので、ここでのお昼はお預けです。私はサラダとタマゴとハムのミックスサンドと、ツナマヨおにぎりを買いました。

 他にもホットドックなどジャンキーなメニューも展開しているようで、赤木くんはサンドイッチにホットドックでした。朝霧くんと蓮くんは同じで、ホットドックにフライドポテトを注文して、極めつけはコーラでした。

 教室に戻ると、向かい合う形で席を二列に並べ、男子三人は並んで座ることになったのですが、ここで蓮くんが一言。

 「何これ? 合コン?」

 蓮くんの衝撃の一言に、

 「んなことされても困る」

 そう言われてめんどくさそうにする朝霧くんと、

 「確かに! なってるなこれ!」

 気づかないでセッティングして、今更気がついて笑っている赤木委員長。

 その発言に張り詰めた空気が一気になくなりました。

 「せめて宴会にしとこうぜ!」

 「いや親睦会って言ったの誰だよ」

 赤木くんの言葉に適切なツッコミを披露する朝霧くん。笑いの神様でも降ってきたみたいに、クラスメイトは笑いました。

 「お二人さん。 コントはそれくらいにして、とりあえず座ろう。 みんなも好きなとこに」

 そう蓮くんに促されると、男子三人は固まって廊下側に並べられた席に腰を下ろしました。女子も各々好きなとこへ座り、蓮くんの隣に座ったのは

 「私ここー!」

 エミリちゃんでした。誰もが納得しますが蓮くんは違かったみたいです。

 「えぇ…他行けよ……親睦会の意味なくなるやん」

 「え〜」

 残念そうにする彼女とは裏腹に、ごもっともなことを言ってました。

 「委員長の隣にでも行っときな。 オレ以外初対面でしょ?」

 「ムー……わかった」

 また膨れる彼女です。かわいいです。

 しかしナイスな配置です。

 「失礼します」

 「は、はい、どうぞ…」

 委員長の隣、作られた長いお見合い席の中央側に、エミリちゃんが座ります。

 一途来(いっとき)は蓮くんの前を誰が取ろうか、争奪戦になるところでしたが、今はそんなことは関係なくなりました。

 「それじゃあ、全員席に着いたということで! 合掌をお願いします!」

 席を立った委員長の言葉に、みんなが従います。

 「いただきます!」

 よく通る声の後に、みんなも言葉を揃えました。


 その後はみんなで楽しくお昼ご飯を食べました。

 私もクラスメイトから話を振られ、好きなコーヒーの話をして親睦を深めました。

 わかったことは、クラスメイトの多くは流行りや話題になった漫画なんかは読んでいることでした。他にもテレビ番組の話などかなり幅の広い話題のおかげで、話の種に困ることはありませんでした。

 少なくとも私のクラスは、蓮くんの奪い合いで起こるだろうギスギスさえなければ、問題なさそうです。

 かなりの収穫をした私は、乗り換えの駅までまだあるので、今は静かに電子書籍を読んでいます。蓮くんのオススメの小説は残念ながら電子版はありませんでしたが、オススメされた漫画の方はあったのでそちらを。

 「………」

 読んでは見ます、物語に惹きつけられる魅力がありますが、内容が濃いので私は読んでいて疲れてしまいました。

 民間軍事会社の話で、内容は現金輸送車の護衛から用心警護と言った警備の仕事を通して、主人公が幾多もの危険な任務をこなすという話でした。

 「ふぅ…」

 第一話の45ページを読み終えましたが、疲れました。ちょうど乗り換えの駅に到着するアナウンスが流れたので、続きはとりあえず繰り越しにします。

 ホームに降りて階段を下り、改札を通って別の路線の改札に向かいました。

 電光掲示板に記された時刻表を見ると、乗車予定の電車までまだ20分ほどありました。

 とりあえず、改札を通ってホームにあるベンチに向かいます。今度は朝霧くんがオススメしていた漫画を探すことにしてみます。

 定期券の入った生徒手帳を取り出そうとした時でした。突然、私の携帯が着信を知らせます。

 何かとポケットから携帯を取ると、母からの着信と判明しました。

 「もしもし? どうしたの?」

 相手がわかっているので、とりあえず要件を聞きました。

 「“めぐ、今どこ?”」

 「え? 帰ってるとこ。 乗り換えの電車待ってるとこだよ」

 「“そう……”」

 「? 何かあったの?」

 雲行きの怪しい母の声色が、私の記憶の片隅にあった不安がよぎりました。そしてその不安が的中することになります。

 「“おばあちゃんが体調崩したみたいなの……お父さんからさっき連絡があって、私も様子見に行こうと思ってるの”」

 私の高校入学という門出に、雲がかかりました。


 「………」

 家に帰って、特にやることがない私は、リビングのソファで寝転がっていました。

 静かに天井を見上げ、時計が秒針を刻む音しか聞こえてきませんでした。

 1分が、とても長く感じました。おばあちゃんは大丈夫なのだろうか、お父さんとお母さんからの連絡も、駅の改札で来た一回きりだったので、とても心細いです。

 「………」

 セーラー服を着たまま横になっていた私は、とりあえず着替えようと体を起こしました。このまま寝ていたら、制服がシワだらけになってしまいますし。

 二階に上がって、制服をハンガーにかけていた時でした。

 私は部屋着のようなものを持っていないと気づきました。ほとんどが外行き用の服でし他ので、使っているパジャマに着替えようかと思いましたが、まだ日が落ちていない四時です。流石に気が早く感じました。

 「あ」

 そんな最中、思いついたことがありました。中学の時の運動着があるではありませんか。それをとりあえず部屋着にしてしまおうと考え、タンスの奥に手を伸ばしました。

 まだそんな懐かしくはない、着慣れた学校のジャージ。流石にいつかは捨てようと考えていましたが、それは今ではないようですね。しばらくは、またお世話になりそうです。


 「………」

 一階に降りてから、1時間は経ちました。

 しかし以前と、両親からおばあちゃんの容態についての連絡がありませんでした。

 大丈夫かな……

 不安が積もる中、聞き慣れた家の電話が鳴りました。

 ソファから起き上がって、すぐに電話を取って耳に当てました。

 「もしもし!」

 勢い余って、結構な声が出た。

 「“あ、めぐ?”」

 紛れもない、母の声だった。

 「“どうしたの? もしかして、かなり心配してた?”」

 「……うん、おばあちゃん…どうだった?」

 声色で私の心境に気づいた母がそういうと、素直に自分の感情を伝えました。

 「“安心して。 病院に連れて行って検査してもらったんだけど、季節外れのインフルだったのよ”」

 「そ、そっかぁ…」

 力が一気に抜けた私は、その場に腰を落とすように座りました。まだおばあちゃんは亡くなっていません。

 「“けど安心しきれないから、治るまでは今日からウチで見守ることになったから。 悪いんだけど、客間に布団敷いてもらっていいかしら?”」

 「わかった…」

 「“心配かけちゃったわね。 帰ったらごはんにしましょう、それじゃあ切るわね”」

 母が電話を切ると、私は受話器を元の場所に戻して、すぐに客間へと向かい、おばあちゃんを迎え入れる準備を始めました。

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珈琲に導かれ 笠野 緑(仮) @ace-r

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