第34話 最強の最後の必殺技!!

 俺たちが地上に出ると、紅い飛空艇が停まっていた。中から出てきたのは、煙突掃除の兄弟、ジニーとトーマスだ。彼らが言うにはレッドホーク・ボスディンからの救援だという。冒険者になった2人はレッドホーク・ボスディン氏が悪漢に襲われているのを救ったらしい。


「俺たち、このレッドブランド号の操縦士に抜擢されたんだぜ」

「お兄ちゃんは副操縦士だけどね」

「こら、ジニー余計なことを言うんじゃない」


 それに対し、みんな和やかに反応しているが、内心は穏やかではないだろう。俺は、このゲームの世界の外から来たとアルマたち仲間に告げた。一番落ち着いていたのは、アルグレインだった。逆に衝撃を受けていたのは学者肌のスヴェン。常識が瓦解したからだろう。


「今から俺たちは二手に分かれる。俺とアルマは東の最果てにある天国と地獄に一番近い島に行く。他の3人は南のドワーフの国に行ってもらう。合流の日時は2週間後、ミルディオス教皇領聖都ウルガーに突入する」

「オルランド様、貴方が何者であれ、この世界を救おうとしていることは、分かりました。僕はそれだけで十分です」

「オレは最初から、おっさんの性格が好きだったからよ。何にも変わってねえぜ」

「難しいことは俺には分からねえ。だが、ライジーンの旦那の決断を信じるぜ」


 スヴェン、アルグレイン、ヴェルファイアが話した後、アルマが口を開く。


「ライジーン様、本当の敵を倒したら、またみんなで冒険しましょう。この世界が造られた世界でも、ライジーン様が知らないことがきっとあるはずです」


 俺は頷き、みんなに声をかけた。


「この世界の為に、みんなの力を貸してくれ」

「「「「了解!」」」」


 俺とアルマは天国と地獄に一番近い島に降ろされた。ここの覇王の洞窟に用があった。アルマを連れて、洞窟に入る。俺はヂアミテイルで体験した地獄以上の試練に打ち勝たねばならない。


「ライジーン様、私、応援しています」

「ああ、その前にアルマ、この世界で一番清浄な島ならば神獣を解放できるはずだ。神獣シャリオクスの名を呼んでみるんだ」


 アルマは目を瞑り、声を出した。


「滅びの神獣シャリオクスよ、お願い出て来て!」

『キュイイイン!』


 白く美しい毛並みをした、アルマの背の半分くらいの高さの神獣が現れた。4足歩行で、毛の先端が青い色をしていて、尻尾は虹色ではなく、にび色だ。俺は、ガラクタ屋のジョニーから買っていたドブネズミの餌を与えた。


『キュルキュルキュル!』


 手懐けることに成功した。これから、この神獣はアルマと一緒に行動する。


「じゃあ、洞窟の中に入るぞ、回復は任せた」

「ライジーン様、頑張ってください! 無茶でも無理でも何でもしても構いません! 私がその分助けますから!」


 金髪金眼の小さな女の子は、涙を溜めて笑う。俺はその涙を拭ってやることしかできない。


 そして、2週間後。俺たちは最強の装備に身を包んでいた。ガラクタ屋のジョニーから、不発弾と一緒に貰ったゴミクズというアイテムは実は、オリハルコンであり、ドワーフの国に持っていくと最強装備が手に入るのだ。


「オジサンたち、聖都ウルガーに突っ込みます!」


 聖都のウルフェイン城にレッドブランド号は突っ込んだ。中から敵兵がうじゃうじゃと現れる。


「ここの雑魚は俺に任せときなあ! 旦那たちには後から追いつくぜえ!」

「ヴェルファイアの親分、100は超えるぜ。俺も一緒に戦うぜ」

「……アルグレインよ、俺はここの敵を片付けたら、必ず合流する。先に行ってくれ」

「親分、素が出てるぜ。待ってるからな」


 ヴェルファイアの魔銃の発砲音と共に奥へと侵入する。


「あはは、ディリーガ枢機卿の奴を倒した手練れかい。このリーナス様が相手をしてやるよ」


 銀髪に薄緑色の肌、琥珀色の瞳に、竜の翼を生やした妖艶な美女が声を上げる。ラスボスであるディリーガ枢機卿の前に戦う魔族のボス敵だ。


「おっさん、アルマ、早く奥へ」

「ここは僕たちが何とかします」


 オリハルコンの黄金の鎧に身を包んだ2人は、リーナスを相手に火花を散らし始める。


 そして城の最深部に辿り着く。本来ディリーガ枢機卿の座っている席には、漆黒の人型の影のようなものが座っていた。


「お前が、僕と同じ選ばれた者か……どうだ? 手を組んでこの世界を弄り尽くさないか? 僕はこのゲームの世界をもっと玩具のように味わい尽くしたい」

「ここは確かに、ゲームの異世界なのかもしれないが、住んでいる人たちはみんな、生きているんだ。玩具とは違う」

「あんた、【ライジーン一人旅】を作った人だろ? ずっと見てたんだ。ザルカバードのカスがしくじってから……。裏技バグ技上等のバグ剣王様が、言うセリフかよ!」

「話にならないな……アルマ、シャリオクスに命令を!」

「知ってるぜ、シャリオクスで敵のレベルを下げれることくらい。スマホ版は一度クリアしてるんだ!」


 俺はニヤリと笑う。裏ボス、『この世の影なる者』は玉座から立ちあがった。


「どうやら、【ライジーン一人旅】は最後まで見ていないようだな。アンブレを死ぬほどやった俺には……ライジーンには……裏ボスだろうが敵じゃないんだよ」

「ほざけ、裏ボスに勝てるわけないだろ! ゲーム史上最強の裏ボスなんだぞ!」


 そうアンブレの裏ボス『この世の影なる者』は体力が異様に高い上、強力な全体攻撃技を駆使してくる強敵だ。普通に戦えば、72時間かけて、ようやく倒せる相手である。もちろん即死無効だ。


「死ねよ、ライジーン! メギドフレイム!」


 俺とアルマの足元に、禍々しい魔法陣が現れ、すべてを焼き焦がす呪いの炎が召喚される。しかし、俺とアルマは、2つのリフレクトバングルを装備している為、無効だ。


「シャリオクス、ライジーン様のレベルを下げて!」

「何⁈ ふざけているのか? 自分のレベルを下げるだと⁈」

「やはり、にわかだったようだな。ライジーンはな、レベルが下がるとステータスが上がる致命的なバグがあったんだよ!」


 そして、俺は腹に最強武器レーヴァテインを突き立てる。もはや痛みには慣れた。雷鳴無双斬の熟練度を上げ切る為、1万回ほど、雷鳴無双斬を使い、威力を極限まで高めたからだ。


「行くぞ! 最強のライジーンの正真正銘の最強の必殺技だ。ゲーム史上最高威力のこの技を喰らって、立てる者など、この世界には存在しない!」

「何だと⁈ そんな情報聞いてないぞ? 死ねよ! メギドフレイム! メギドフレイム! メギドフレイム!」

「いくぞ! これが! 最後の! 雷鳴無双斬だ!」


大上段からレーヴァテインを振ると、暴風が巻き起こる。雷が鳴るような轟音が響き渡り、全てを断絶する剣技が『この世の影なる者』の脳天に炸裂する。


 眩い閃光が走り、裏ボス『この世の影なる者』は塵へと化していく。


「これで……僕の……ゲームは……終わりなのか……! ライジーン……! 貴様も道ずれだ……!」


 グサリと俺の心臓を『この世の影なる者』の崩れかけた手が貫く。


「ライジーン様⁉ 死んじゃ嫌だ! せっかく、倒せたのに!」

「アルマ……多分、これで終わりじゃないさ……裏ボスを……倒した後は……」


 仲間たちが駆けつけて来たのが見える。良かった、誰も欠けていない。だが……エンディング画面は見れそうにないな……。


◇◇◇


 老人が草原の中、椅子に座っていた。額には大きな古傷があり、圧倒的な強者の雰囲気さえ漂っている。長い銀髪に銀眼で、髪はポニーテール。空には紅い飛空艇が飛んでいき、それを1人の少女と眺めている。


 ライジーンと仲間たちの冒険はまだ始まったばかりだ。


 THANK YOU FOR PLAYING!

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最弱無敵のバグ剣王 ~やり込んだゲームの最弱キャラに転生するが、裏技バグ技もゲーム通りなのでシステムの抜け穴やイベントを駆使して無双状態に。必殺技を壁に空撃ちするだけで要塞が落ちるんだが?~ 色川ルノ @hekiyuduru

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