一掃 / present

「ただいま見えてきた島は、ユキヒメ・ベニヒメが治める諸島群の本拠地でございます。左手には青い海、右手にも青い海で嫌になるほど美しいですね。もう海の旅は真っ平御免です。大変長らく航海をし続けて参りましたが、ここで終わりの様です。またのご利用・ご予約お待ちしております」

「なにやってるんですか、クソ姫」


 船上放送を利用しクルーズツアーを締めくくるようなアナウンスをしていた。悪ふざけをしたツキヒメは満足したのか下船の準備をはじめる。それを眺めながら正宗の手入れを終えたアンチンは鞘に収めると、髪を掻き揚げた。コノエは船着き場に船を停泊させる。一方のオロチは甲板に集まっていたカモメと遊んでいた。


「見張りも居ないとはとんだクソ間抜けですね」

「まあ、こんな所まで攻めてくる人たちなんて滅多に居ませんからね。泳げるモノノケも珍しいですし」

「ふーん。ついでに、くたばっていたら嬉しいんだが」


 船の乗降用タラップをカタンカタンと渡っていくツキヒメ一行。上陸を果たすと島中の警報が鳴り響く。


「侵入者あり、3名の侵入者。2人は男性、1人は姫君(オニ)。これは訓練ではありません。繰り返す――」


「見張り居たんですね」

「含まれていない・・・」

「それだけクソ小さいなら見つからないだろ」


 どこから見られていたか不明だが、オロチのことはカウントされていなかった。これからすぐに敵兵は緊急配備されはじめるだろう。船着き場を抜け鉄柵が掛けられ上段へ続く道を歩いていく。


「ま、全員殺せば済む話さ」

「クソ簡単に言ってくれる」

「とてもゾクゾクしてきました。愉しみです」


 1人だけ違う事を期待している男が居たが「クソ変態が死んだら帰れないから生きて帰ってこい」と蹴り飛ばされていた。ツキヒメは【武器の換装】【波動砲】【巨刃】【光の弓】が行使できる感覚がある。チカラを取り戻した時に起こる症状は未だ謎だが、妹たちを殺さなければならない事は確か。


「さて、やってきましたねお客さん」

「どっちかというと俺らがクソ客だろうな」

「存分にもてなしてもらおうか」


 ゾロゾロと狭い道を行進してきた敵兵たちは完全武装し、3人と1匹を迎え入れた。手始めにツキヒメは手を翳すと手のひらから波動を発生させる。一直線に伸びていく波動は敵兵の先頭に立つ盾兵に直撃する。


「クソ姫が暴れれば俺たちの出る幕なくない?」

「いや、ワタシのチカラは無効化されるみたいだ」


 戦闘に立つ敵兵が持っている盾からは幾何学模様が点滅しており、ユキヒメ・ベニヒメが持つ【無効化】が付与されていると読んだ。


「じゃあ、ちょっとは楽しめそうですね。クック、アハハ!!!!」


 狂乱化したアンチンは敵陣へ一直線に攻め込んだ。狂気な笑い声で場に轟き、敵兵の鬨と組み合わさり一瞬にして戦場になる。異常な跳躍で大勢の敵兵を飛び越し、飛び去り際に最後尾の敵兵の首を刎ねる。アンチンはそのまま突っ走り上段へ続く道へ姿を消した。


「気早なクソガキだな」


 続くツキヒメはゆっくりと敵兵に近づき先頭に居る敵兵の盾を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた敵兵は勢いよく飛び、体勢を崩しドミノ倒しの様に敵兵が倒れていく。倒れた敵兵を踏み台にし狭い道を歩いていく、途中で様々な唸り声や怒号が飛び交うなか平然と渡り切った。


「コノエ、オロチあとは頼んだ」


 1人と1匹は船着き場に取り残される形になった。おそらく船を守るように、ということでコノエとオロチは船着き場で船の防衛をすることにした。

 アンチンが消えていった道を辿ると見慣れた地獄絵図。血で落書きしたかの如く、路地余すことなく赤で染め上げられている。


「??」


 死屍累々となっている路地を闊歩する。足場が無い為、切り刻まれた死体を踏みつけ歩くと路地は拓けた広場が奥に見えるも敵兵が待機している。途中で壁伝いに血が屋根側へと伸びている。殺戮を好むアンチンが敵目前で近道をしたのか、もしくは誰かに襲われたのか。現状、得られる情報はないため進むしかない。目前に控える敵兵を皆殺しにするために。


「おもてなしをしてもらおう。土産は・・・刃でどうだ?」


 拓けた広場に辿り着くと臨戦態勢の敵兵が迫って来る。刃を向け戦争を始めることにする。

 目前に盾が連なりツキヒメ対策は万全。姫のチカラは無効化されるだろう、そんな心配も無用だった。一面の盾に跳躍を決めると、盾ふちを飛び台にし高く飛ぶ。中心地の敵兵を串刺しにし強引に引き抜く、体勢を低く回転するよう攻撃を躱すと同時に足元を切り裂く。体勢を崩した敵兵たちの甲冑の間を狙い再び回転斬りを行うとバタバタと倒れていく、血しぶきが舞うと衣服が返り血で染まる。


「お土産、楽しんでもらえたか?」


 未だ敵兵に囲まれるなか余裕のツキヒメは言い放つ。

 盾を持たない中心地の敵兵を【巨刃】効果中の三日月を投げ、ブーメランの要領でなぎ倒していく。まだ敵兵は残る。


「もう雑魚には飽き飽きだ」


 家屋の壁を駆け足で登り跳躍すると宙返り中に【光の弓】を発現させる。縦横無尽に射出させると矢の雨が全敵兵に命中する。

 敵兵を一掃したツキヒメはさらに奥に進んで行くのだった。

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プリンセスストーリー~姫(妹)を皆殺しにして天下統一~ @ikurumi_kurumi

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