第47話:未来に向けて・ソフィア視点

「真聖女様」

「ありがとうございます、真聖女様」

「うおおおおお、しんせいじょさまあああああ」


 人々が歓喜の声で迎えてくれます。

 人々の感謝の気持ちが私の心を癒してくれます。

 私が寝ている間に全てが終わっていました。

 チビちゃんとグレアムが私のために汚れ役を引き受けてくれました。

 お陰で胸の痛みが思っていたよりも小さいです。


 全く胸が痛まないわけではありません。 

 妹のナタリアの消息を全く聞かないのです。

 私だって馬鹿ではありません。

 ナタリアが副都に逃げていたのだろう事くらいは想像できます。

 恐らくチビちゃんに食べられてしまった事も……


 いけません、過去に囚われている場合ではありません。

 私はこれからの事を考えて行動しなければいけないのです。

 実際には全てチビちゃんとグレアムに任せてしまっていますが、表に立って民に希望を与えるのが私の仕事です。

 ただ独り生き残った聖女の私にしかできない仕事です。


 三連星活動期の被害を受けたのはハミルトン王国だけではありません。

 魔境に接している大陸中の国が壊滅的な損害を受けています。

 それなのに、被害のなかった国が被害を受けた国に攻め込んでいます。

 チビちゃんが介入して止めてくれましたが、これからも油断できません。

 被害を受けた国の民は明日の食事にも事欠いていました。

 だから食料を与えたりハミルトン王国に迎えたりしました。


 まだ三連星活動期ですが、チビちゃんが国境に沿ってマーキングしてくれました。

 悪臭は酷いですが、ハミルトン王国内は魔境に接している場所でも安全です。

 だから多くの民が移民してきました。

 人口の九割を失ったハミルトン王国でしたが、今では三連星活動期前よりも人口が増えています。


 その分国民がいなくなって滅んでしまった国もあります。

 ハミルトン王国同様七割以上の領地を魔獣に蹂躙占拠され、人口の九割を失った状態では、生き残った国民を食べさせていくことも困難です。

 チビちゃんがいなければ下劣な国に攻め滅ぼされていたでしょう。

 何とか生き残った国民も下劣な国の奴隷にされていたでしょう。

 そんな事は絶対に許せません。


 実戦と実務はチビちゃんとグレアムに任せますが、理想は私が示します。

 その為に少し早いですがグレアムと結婚したのです。

 グレアムがハミルトン王国の国王になり、私が真聖女を名乗ったのです。

 これで大陸各国に対する発言権を確保して、下劣な国を牽制しつつ、困窮する民を引き受けて食料を与えるのです。

 

「実務は頼みますね、チビちゃん、グレアム」

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トカゲ令嬢とバカにされて聖女候補から外され辺境に追放されましたが、トカゲではなく龍でした。 克全 @dokatu

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