最近幼馴染みが動画サイトで流れるCMの商品を買うよう薦めてくるんだけど俺は買わないからな
3pu (旧名 睡眠が足りない人)
買わないからな
「ねぇ、朔多これ良さそうじゃない?あんた口臭いし」
いつものように俺の部屋に居座る幼馴染みの香奈は動画サイトで突然流れたcmを見ながら急にそんなことを言ってきた。
「今生まれて初めて俺が口を臭いと言われたのに、買うわけないだろ馬鹿が。女の子と会話してる時に嫌な顔一度もされたことないぞ。というかこんだけ長年一緒に居て突然口臭いって言ってもそのcmの広告みたいに馬鹿真面目に受け取るかよ」
毎日一緒に居て遠慮のない関係なのに今更言われても信憑性皆無。さらに口臭ケアアイテムのcmを見ながら言われれば適当に思いついたと誰もが思うだろう。
「つまんないの。朔多がこれ使って本当にモテモテになるか知りたかったのに」
そう言って香奈は不貞腐れたような表情になった後動画をスキップしゲーム実況を見始めた。
「もしそれ使って女からモテるようになったら日本中ハーレムだらけだぞ」
「確かに!天才だね朔多」
「猿でも分かるわ!」
そんな物一つでモテるようになったら少子高齢化なんてすぐに解決だ。
「というかその商品買えばって話先週もやっただろ?」
しかも、やたら幼馴染みと結ばれる系の商品の広告に限って話を振ってくるから答えに毎度困るから辞めて欲しい。
「そうだっけ?」
「そうなんだよ。はぁ、香奈がいつか悪徳業者に騙されそうで俺は心配だ」
「大丈夫大丈夫。私自分のお金じゃこういうの買わないから。だって私そんなのに頼らなくてもお肌ツルツルのバインバインのモデル体型で便秘を今までしたことのないパーフェクトボディだしこんな薬飲んでクソドバドバ出す必要ないから」
自信満々に豊満な胸を張りお腹をさする香奈。その仕草が卑猥に見えるのは俺の心が汚れているからではない。男の性だ。強いて言うなら香奈がエロい身体付きしているのが悪い。サラサラとした長い小麦色の髪に顔が小ちゃくて目がパッチリでアヒル口で目鼻立ちが整ってて胸がめちゃくちゃデカくてそのくせ腰は細く尻がデカい。そんなエロエロボディな幼馴染みがあんなことをすれば卑猥に見えるのはしょうがないだろう。
「クソって仮にもお前女の子だろうが汚い言葉使うんじゃねぇよ。引かれるぞ」
「えぇっ、それは男子が女の子に夢見すぎ。意外と女子校の女子は汚い言葉使うよ〜。あ〇〇とかマ〇〇とか普通に言うからね」
「それは流石に嘘だろ」
「突然ですが、問題です。私は現在含め五年どこに進学しているでしょう?」
「女子校」
「ピンポンピンポン!そんな女子校歴五年の私が言うんだから嘘なんかじゃないよ。なんなら高校の時グルチャ見る?」
「いや、流石にそこまでしなくていい本当だって分かった…はぁ、俺の中の女子校のイメージが」
高校からずっと女子校に通っている香奈がここまで言うのだから本当なのだろう。
あぁ、俺の中お淑やかな女子しかいない学園像が音を立てて崩れていく。
「えぇっ、そこは興味示してよ〜。もうちょい粘れよ〜。ほら見てみ高一のグルチャ凄いでしょ。下ネタパレードよこれ」
「マジだな」
さらば、女子校にいる清楚な女の子のイメージ。そして、いらっしゃい下品な言葉を言う清楚ギャルのイメージ。
清楚ギャル…中々いい響きではないか。ふっ、やはり女子校は捨てたもんじゃねえな。あそこはまだまだ未知数の可能性を秘めているぜ。
と俺が新たな可能性の扉を開こうとしたところで香奈は何か思いついたような表情を浮かべた後、鼻を摘んで臭そうな顔をする。
「あっ………朔多、口臭い」
「騙されねぇからな!鈍感主人公じゃあるまいし、この至近距離で今これなら行けるって顔したの見逃すわけねぇからな。バッチリ見てるから!」
「チッ!」
このアマ舌打ちしやがったぶちしばき倒したろうか。あぁっ!?ウチにそんな金がねぇのはお前が一番分かってるだろが。
「ああ〜せっかく言いにくいことを幼馴染みの私が心を痛めて教えてあげるのに、ああ〜、そんなこと言うんだ。じゃあ仕方ない朔多のお母さんにあることないこと言っちゃお!」
「はぁ!?マジお前それ言えばいいと思ってるだろ今日という今日は俺は屈しないぞ」
「チッ、この間電話まで使ったから打つ手がない。仕方ない。……んんっ、お願い〜今日も昼ごはんと夜ご飯一緒にさせて?」
香奈の媚び媚びの撫で声。普通の男なら仕方ないな〜とだらしない顔をするだろうが俺は違う。
「きもい、うざい、吐き気がする。辞めろマジでその撫で声気持ち悪い。そんなこと言われても作んないからな」
「照れなさんな、実は鼻の下伸びてましたぜ兄貴」
「……帰れ」
冷めた目をクソ女に向け服の襟に手をかける。
「冗談じゃんマジな顔して襟掴まないで、ジャパニーズジョーク、ジョークだって。だからお願いします。今月厳しいのでご飯を恵んで下さいお願いします。何でもしますから」
「…何でも?」
「……まさか、朔多。私とやりたいなんて言わないよね。その、私はもうちょっと段階を踏んでからやりたいから最初はやっぱりキスとか手を繋いでから徐々にやっていきたい次第でありまして、はい。いきなり本番は勘弁して欲しいと言いますか。私まだ誰ともしたことないですし、おすし。初めてはもっとムードある感じでしたいという乙女なので。それだけは勘弁してほちいでしゅ」
俺が聞き返したことで、何を勘違いしたのかこの女俺が下衆発言するつもりだと先読みし勝手に喚いて頬を赤くしてソファに顔を埋めやがった。その姿を見て何だか毒気を抜かれ襟首から手を離した。
「はぁ、するわけないだろが、アホ。これに懲りたら反省しろ。そしたら今日は飯を作ってやらんこともない」
「本当……?反省した反省しました。だからご飯作ってくださいお願いします」
人が折れたらすぐこれだ。さっきまでのしおらしい態度は何処へやら、嬉しそうな声上げてニコニコしやがって本当に調子のいい奴である。俺はソファから立ち上がり昼食を作るべくキッチンへと向かった。
これが惚れた弱みってやつかね。
後日
「脱毛しない?朔多」
「しねぇよ!」
はぁ、本当なんで私こういう遠回しなアピールしか出来ないんだろう。
朔多に私の提案を一蹴された私は画面に向き直り動画のヒゲ脱毛の広告を見ながら素直になれない自分の性格を恨む。
十数年も片想いをしているせいで拗らせてしまった恋心を伝えぬままもうすぐ二十歳に差し掛かろうとしているにも関わらずこの有様。いつになったらこのcmのように幼馴染同士で付き合えるのだろうか。
この物語のように単純だったらいいのにと私は画面を睨み、広告に当たっても仕方ないかと溜息を吐く。私は広告の力を借りてアピールしているのだそれに当たるのはお門違いというもの。心の中で私は広告に八つ当たりしたことを謝ると、スキップボタンを押す。するともう一つの広告が流れ幼馴染がまた最終的に付き合うスキンケアの広告が流れる。
これは動画サイトが私の恋を応援しているのだろうか。またも同じ系統の広告が流れるなんて。
「ねぇ、この商品買わない?」
サイトがそんなことするわけ無いと分かってるけれど、私は運命めいたものを感じ、朔多に同じ質問を投げかけた。
「良さそうだな、それ」
「へっ?」
皆さん、もしかしたら私の恋が叶うのはもう少しなのかもしません。
なわけないか。
あとがき
続きは人気があったらします。
最近幼馴染みが動画サイトで流れるCMの商品を買うよう薦めてくるんだけど俺は買わないからな 3pu (旧名 睡眠が足りない人) @mainstume
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