最終話 最初は見切り発車でも最後はわりと何とかなる
「……このまま、赤園に返すつもりか?」
「まさか。神力で復元した方のスマホを返却させてもらったよ。
幸い、このスマホの中に入ってたデータは無事だったしな。
ここから抜いて復元したスマホにデータを移しといたから、本人には何も気付かれてないだろうぜ」
キザな含み笑いを浮かべるシロヤマは、世界を股に掛ける大泥棒を彷彿させた。
「本当のこと、赤園には言わなかったんだな」
「言ってどーにかなることじゃないしね。こればかりは複雑すぎて……俺の口からじゃ、荷が重い」
「……だよな」
不意に真顔で本音を口にしたシロヤマに同情するように、仏頂面を浮かべた細谷は静かに応じた。
「んじゃ、一区切りついたところで、次にやるべきことをするかね」
「次にやるべきこと?」
俄然やる気モードで背を向けたシロヤマに、細谷はきょとんとする。
「おまえ、今から何する気だ?」
すたすたと歩き出したシロヤマを不審に思い、後を追いながら細谷が尋ねる。
「そんなの、決まってるだろう?」
今まで自分達がいたところとは反対方向を歩きながら、意味ありげに微笑んだシロヤマは応じた。
「直接、問い質しに行くんだよ。あそこにいる……黒ずくめのあいつにな」
まるで、犯人を追いつめる探偵の如く、自信と覚悟の入り混じる笑みを浮かべるシロヤマが睨みつける視線の先、見晴らしいの良い屋上の端に佇む人物の後ろ姿があった。
風に靡く黒いロングコートのポケットに両手を入れて佇む、黒髪の男の姿。
まさか……まさかっ……!
突然のことに驚き、感情を剥き出しにした細谷が歯噛みする。
「落ち着けよ。感情的になったら、相手の思うつぼ」
ふと立ち止まったシロヤマは、ポーカーフェースで振り向き、細谷を制する。
「
冷静なシロヤマの言葉で、ふと我に返った細谷も冷静に応じる。
「
張り詰めた緊張感を漂わせ、シロヤマと細谷の二人は、依然として背を向ける黒ずくめの男に向かって一歩踏み出した。
赤ずきんちゃんと死神さま 碧居満月 @BlueMoon1016
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