小説に向き合う私へ

八月冷奈(やつきれいな)

私の部屋へようこそ

 やあ、こんにちは。私の部屋へようこそ。腰をおろしてゆっくりしたまえ。私と話をしようじゃないか。

 え、私が誰って?

 そんなの、誰でもいいじゃないか。私はこの部屋の主で、君は招かれた客人だ。私が招待状を届け、君は何か迷いがあってこの部屋を訪ねに来た。設定はこのくらいで十分だろう。

 君は設定通り、何か悩みを持っているらしい。そうだね。さしずめ、君が趣味で書いてる小説のことかな。

 なんでわかるかって?

 言ったじゃないか。私は君に招待状を渡したこの部屋の主。自身が招いた友人のことくらいわかっているさ。

 話を戻すけど、君は小説のことについて悩んでいる。そのことに間違いなどないだろう?

 自身のモチベーションが下がってることについて悩んでいるんだね。誰だって書きたくなくなる時はあるさ。そんなに落ち込まないで。

 自分の小説は需要があるのか、とか。

 設定を活かせてないな、とか。

 面白いストーリーになってないな、とかでしょ。

 うん。私には何でもお見通しさ。なんたって君の愛おしい友人だからね。

 悩むことはいいことだ。君は様々な選択肢を持ち、どれを選ぶか決めかねている。自信がないということはもっと高みを見ているとも言えるよ。それって、ものすごく疲れることだと思わないかい?

 逃げたいよね。その気持ちはわかる。時には逃げることだって必要さ。それでも、君にはこれらの問題と向き合いながら、自分なりの小説というものを、模索していってほしい。

 きっと君はとことん迷うべきだ。へとへとになって、迷って迷って、変な方向へと進むかもしれない。けど、そうして選んだ答えは必ず正しい答えだ。

 考え出した答えには不正解など存在しない。人生には間違いなど存在しない。君が迷って苦労して、導いた答えはいつだって正解だ。

 さあ、迷うんだ。迷った末に見つけたものを、いつの日か私にも見せてくれ。

 さて、長々と話してしまった。実はこうやってネチネチと説教たれるべきじゃないのだろうね。君は本当に、考えることや妄想ごとは大好きだもの。きっと、無意識にまた机に向かっている。本当に、君は昔から変わらないよ。

 君が小説と向き合う時、いつも私は君の側にいる。また君が迷ってしまった時には、私も君の力になりたい。でも君は、一人で立ち向かえるはずさ。

 全力で迷ってこい。私はこうして見守っているからさ。

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