第12話 獣人形態で投げろ!

 練習試合当日まで、白組が学校のグラウンド、紅組は市営球場を借りて練習することになった。



「監督ぅ~、5人連れて来たよぉ~」



 浦間うらまがトロンとした目の男子5人をしたがえてきた。小野沢おのざわ監督は眉をひそめて彼らを見る。



「何か変な薬、飲ませてないだろうな?」


「そんなヤボなことしないしぃ~。ちょっと血ぃ吸っただけですよぉ~」


「吸血鬼に血を吸われたら吸血鬼になると言うが、彼らも同じか?」


「まっさか~。そこまで効果ないですよぉ。1週間ぐらい、千夜子ちよこの言うこと聞いてくれるぐらいだし~」


「1週間、浦間うらまの奴隷か……」



 監督はその能力を敵チームの選手に使えば、八百長試合が簡単に出来るので、彼女を末恐ろしく感じた。



「人数はそろったけど、問題は鉄平てっぺいのコントロールやな」


「1週間で良うなるワケない」



 鉄平はマウンド上で体育座りして、生気のない目をしている。瓜子うりこがおずおずと挙手する。



「あのぉ、四つんばいじゃなくって、2本足で投げたら、コントロールが良くなるんじゃ?」


「なるほど! ほな、獣人形態で投げられるよう、特訓すっぞ!」


「めんどくさぁ」



 その後、オオカミ化した鉄平が2本足で立てるよう、ド根性の特訓が行われた。だが、一向に上手くいかない。



「もう、アカンて兄貴」



 鉄平はマラソンを終えた選手のように、大の字で寝そべる。



「あきらめんな! こんなんやったら、甲子園行かれへんぞ!」

「別に命取られるワケやないし」

「じゃあ、血ぃ吸っちゃう~」



 浦間うらまが鉄平の首筋にかみついて、血を吸い始める。彼の顔は青白くなり、瞬時に立ち上がって獣化し始める。



「ウッ、ウウウ、ウォーン!」



 彼は兄と同じ獣人型のオオカミになって、立った!



(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エースは狼男、キャッチャーは吸血鬼、4番はフランケンシュタイン、怪物だらけの野球部奮闘記 鷹角彰来(たかずみ・しょうき) @shtakasugi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ