第11話 監督不信任案提出

 夏大の初戦敗退後、練習試合で何度も桃野ももの鉄平てっぺいを先発させるも、四死球を連発して試合にならない。



 部員達は小野沢おのざわ監督の桃野弟重用ちょうように嫌気がさし、ついに不信任案を提出した。その不信任案には、部員ほとんどの署名がついていた。



椎座しいざ君の方がコントロールが良いし、スタミナもまぁまぁあります。それなのに、ずっと桃野を先発で使い続ける意味が分かりません!」



 新主将は声を荒げて話し続ける。



「今後も桃野を使うなら、僕達は好調に訴えます。小野沢おのざわ監督は甲子園を目指さんと、ノーコン投手で遊んでいると!」


「まぁまぁ、落ち着きなさい。確かに、鉄平はノーコン投手だが、甲子園を目指すには必要不可欠な投手だ。彼が化けるよう、練習と経験を積んで――」


「答えになってません! なら、勝負して下さい! 椎座しいざ君と桃野の弟、どっちがいい投手か、紅白戦をやろうじゃありませんか!」


「紅白戦ねぇ……」



 かつての小野沢おのざわ監督なら、選手をどやしつけて、無理にしたがわせていただろう。しかし、令和の今では、選手を大切に扱わないと、PTAやマスゴミがうるさいのだ。



「わかった。1週間後に試合しよう。紅組と白組の選手についてだが」


「それなら問題ありません! 我が白組には椎座しいざ君と金藤こんどう君、ツルオリ君などが入ってます。つまり、不信任案に署名してくれた人が白組です。紅組は署名しなかった人なので、監督がご指導・采配お願いします。では、いい試合できるよう、頑張りましょう!」



 新主将は颯爽さっそうと監督室を出て行った。



 確かに、不信任案には、金藤こんどうやツルオリなど主力の名前が載っていた。監督は署名人数を数え始める。



「紅組は4人だけか……」



 紅組は、桃野ももの兄弟と浦間うらま瓜子うりこの4人が入った。



(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る