第10話 1回戦コールド負け

 高校野球、夏の選手権大会、千葉県予選1回戦、希望きぼう学園は松戸まつど作成さくなりと対戦した。松戸作成さくなりは万年1回戦負けなので、希望学園ナインに楽勝ムードが漂っていた。



 しかし、桃野ももの鉄平てっぺいが9者連続四死球で6点も取られてしまう。椎座しいざをマウンドに送るも、内野ゴロや犠牲フライ、エラーなどで、さらに3点取られてしまう。



 いきなり9点ビハインド。何とか長打を出そうと、各打者は大振りしてバッティングを狂わす。



「ムン!」



 2死1塁で金藤こんどうは三球三振に倒れ、ベンチや応援スタンドからため息が漏れる。



 これ以上の失点は許されない。椎座しいざは懸命に浦間うらまのリードに応える。2回以降は0の山を築いた。



 だが、6回表に疲労がピークに達する。高く浮いたボールをとらえられ、スタンドに運ばれてしまった。



「10点目……」



 小野沢おのざわ監督はまばたきを激しく繰り返す。



 6回裏は4番金藤こんどうから始まる好打順だが、10点差は重過ぎる。



「ムッハー!」



 金藤こんどうが場外の大ファールを打つと、松戸作成さくなりのバッテリーは四球で歩かせた。



「5番センター花咲はなさき君」



 花咲はなさきはレフト前に流し打ち、無死1・2塁のチャンスを作る。



「6番セカンド瓜子うりこ君」



 瓜子うりこはピッチャーの手を石化させ、力のない球を引っ張る。だが、当たりが良すぎてサードライナーになった。



「7番ピッチャー椎座しいざ君」



 椎座しいざはつなぐバッティングを意識し、ボールを軽く打つ。しかし、軽く打ち過ぎて、ボテボテのショートゴロになった。



「アウト! ゲームセット!」



 ショートゴロの併殺打ゲッツーで試合終了。



 怪物選手たちの1年目の夏は1回戦コールド負けに終わった。



(続く)

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