野津田公園

 階段を登りきってからも歩く。ひたすら歩く。川を越え、木々が作り出した天然のトンネルを抜けて山を登る。いつまでも続く坂道を登り続ける。

 野津田公園正面入口までの道は舗装された道路が続いていたはずだ。それにしても長い。辺りは霧に包まれていた。

 雲の中にいると錯覚する。天空の城とは良くいったものだ。舗装を頼りに歩き続けるしかない。

 

 町田ゼルビアと言えば、二人の監督を思い出す。相馬直樹とポポヴィッチだ。オズワルドもいたが成功したとは言い難い。

 相馬直樹は、教授と言われたほどの知的なプレースタイルが有名な選手であった。鹿島のサイドバック時代が最も有名だろう。ブラジルスタイルの鹿島にとってサイドバックは生命線でもある。逆サイドの動きを把握していなければならず、また試合の流れも読めなければこのポジションは務まらない。運動量とサッカーセンスを兼ね備えた者だけが鹿島のサイドバックになれるのだ。少なくとも、どちらか一方は上に上げたタスクを遂行しなければ試合にならない。

 鹿島、そして代表で名を轟かせた相馬直樹が監督としても一定の成功を納めたのは必然であった。そして、その成功は町田ゼルビアと共に成し遂げたものでもある。


 相馬直樹に思いを馳せていたら、だいぶ先に進んでいたらしい。両脇にあった木々は広がり広場に出た。ついに野津田を登頂したのだ。

 目の前には野津田陸上競技場の威風堂々とした姿が見えた。天は開け霧が晴れている。爛々と輝く太陽が近くに感じた。

 私は天空の城に入るためにチケットを購入した。試合開始は一時間ほど後になる。


 この日の試合は登山をしたかいのある面白い展開だったのだが、それはアーカイブで確認していただきたい。



 

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野津田登山紀行 あきかん @Gomibako

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