野津田車庫

 坂道を登り続けて数十分。野津田車庫にたどり着いた。

 ここまではバスでもこれる。しかし、山頂までバスは通っていない。山の麓であるこの駅で降りて、本格的な山を登らなければならないのだ。

 ここから野津田陸上競技場までのルートは2つある。道が比較的整備された推奨ルート。険しい山道を登る事になる非推奨ルートだ。あえて私は非推奨ルートを選んだ。

 先ずは細い脇道を抜けて、そこから山道へ続く急坂を上がる。舗装された道が終わり山道が表れる。

 森林が生い茂る中を貫くその道を進む。木漏れ日だけが照らす道をひたすら歩く。


 鎌倉古道裏道。等間隔に並んだ木々がここが山城であることを物語る。

 一定のペースで歩かなければならない。ここから先が長いのだ。買った150ミリリットルのペットボトルを開けた。

 大きな曲がり角を過ぎた頃、階段が見えた。一歩一歩上がる。階段の終わりはまだ見えない。

 木々の先にある暗闇が私を引き込もうとしている。そちらに気を持っていかれそうな意識を払う。上を見つめて登り続ける。眩しい光が差す頂上が見えた。

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