輝きの月(セレーネ)

キムチ鍋

第1話 エピローグ

二〇XX年少子高齢化対策による『ラブキャリー法』通称LCエルシー法が制定された。

LC法は『あなたにピッタリなひとを探す』をキャッチフレーズに二十歳はたちになると国からメールが届き理想の恋人パートナーが知らされるLC法では理想の恋人パートナー三十歳アラサーになる前に必ず二人以上の子供を作らなければならないという決まりがある。

LC法のおかげで人口は爆発的な増加を見せた、ところが人口の増加に歯止めが利かなくなり、ついに国土面積が足らなくなってしまった、そこで世界は人類の英知を結集させ宇宙の国スペースアイランドを完成させた。宇宙の国スペースアイランドから地球へ向けて数十本の柱が伸びておりその柱は各国の首都につながっている、これにより地球と宇宙の国スペースアイランドの行き来が簡単にでき、食事などの物資を届けやすくしている。

さらに人類は宇宙旅行を実現するために宇宙艦を作り上げた、このことにより各国にある柱を使わずにでも宇宙に行くことができるようになった。今では月などの小惑星でも生活が送れないか研究を行っている。

本を読み終えると機田きだ 械斗かいとは席を立つ。

「行ってきます……」返事は変えって来ない。僕の両親は二人とも亡くなっている、母親は物心つく前に亡くなっていて写真でしか顔を見たことがない。父親は四年前に宇宙の国スペースアイランドの増設工事中に事故で亡くなっている。

靴を履き家を出る、自宅から図書館までは徒歩十分と近く散歩がてらに行ってはこうして本を借りてくるというのが僕の習慣になっている。図書館に向かって歩いているといきなり体が軽くなるのを感じた、次第に足は地面から離れ体が宙に浮く。これは一日に一回ある無重力状態になる重力〇ゼログラビティの時間になったからだろう、重力〇ゼログラビティとは地球の自転の問題による重力変異を避けるため宇宙の国スペースアイランドの重力管理システムの電源を切り無重力状態にすることで重力変異を避けている時間帯のことだ。重力〇ゼログラビティは約十五分にわたって続く、いつも一時ピッタリに始まり一時十五分に終わる。時間がもったいないので無重力状態の中を泳ぐようにして図書館まで進んでいく、図書館まで後数百メートルのところで体の重さが返ってきた重力〇ゼログラビティが終わったのだろう、地に足をつけた、少し速足になりつつ図書館へ向かった。図書館の扉の前に立つ自動で扉が開く、中に入るとすぐに見慣れた景色が目に飛び込んできた入口のすぐ左にはカウンターがありいつもここで本を借りる申請をしてから借りる。カウンターには見慣れた顔がありこちらを笑顔で見てくる。

ひいらぎさん読み終えた本返しに来ました」彼女はひいらぎ 彩花さいかここで本を借りる時にお世話になっている歳は三二歳の夫子もちだ、よく図書館に来る僕は彼女の名前を覚えてしまった。「あら、械斗かいとくん今回も読み終えるのが早いのね!」借りてすぐに読むから返すのも早いのだ。「ところで、人類の歴史についての本はどうだった?」「僕は正直どうかしてると思いますよ……将来をともにする人を誰かもわからない人に決められて、挙句の果てに子供を作れなんて!」少し感情的になりすぎてしまった「まぁ、落ち着いて……私も最初はそう思ってたわ、だけど夫と過ごしていくうちに、LC法もありなのかもって思ったの……」柊さんの気持ちが全く分からなかった「そうですか……これ、ありがとうございました……」そう言って持っていた本を返す、そして足早に図書館から出ていく。新しい本を読む気分にはなれなかった。

そして、家に遠回りして帰る歩きたい気分だった。「柊さんに悪いことしたな……」一人、ごちる。「いくら少子高齢化対策でもこんなことをしていいのか?」「人権問題になったりしないのか?」そんなことを考えながら家の近くの公園についた、公園の時計の針は三時三十分を指していた「もうこんな時間か……少し寄り道して行こう……」公園のベンチに座る。公園には小学生ぐらいの子供やそれ以下の子供が沢山いた。「この光景が見られるのはLC法のおかげなのか?……」そう思うとやはりLC法はいいものなのかもしれない……そんなことを考えているとサッカーボールが足元に転がってくる「すみませーん、ボールとってくださーい」ボウルの持ち主と思われる少年がこちらに腕を振りボールを取るように促して来た「わかった!今そっちに向かって蹴るからちょっと待って!」そう言ってベンチから立ち上がると勢い良くボールをけ飛ばす「お兄ちゃん、ありがとう!!」少年はお礼を言うと仲間たちのもとに帰っていった。「子供は元気だなー」ボソッと声が漏れる「はぁ、何歳でもないこと言ってんだろう……」でも少し考えが変わった気がした。LC法は認めたくない、でもLC法のおかげで少子高齢化が解消されたのは確かだ……もしかしたら人類にはLC法が必要なのかもしれない。公園の時計を見ると四時を過ぎていた、それに気づいた僕は急いで家に帰る。

「ただいま……」もちろん返事がない、僕の部屋は二階にある。家は大きいが実際に使っている部屋は僕の部屋しかない。「父さんや母さんのいたころはちょうどよかったんだろうな……」思わず声に出てしまう、毎日一人で朝食を食べ平日は学校に行くそんな生活を繰り返していた。その日はお風呂に入りご飯を食べ翌日の勉強の予習を終わらせてベットに入った。械斗はこの先に待ち受ける運命をこの時はまだ、知るよしもなかった……

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輝きの月(セレーネ) キムチ鍋 @ikiliotaku

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