5 エピローグ



 あれから、1年が過ぎた。

 


 あの日のライブ――ユキとの最初で最後のライブ。

 


 あの日の光景は、歌を中々歌わない変なライブとしてツイッターで話題になり、不名誉ながらも俺の名前は少しだけ有名になった。

 


 もちろんその程度でプロデビュー出来るほど業界は甘くはなく、今日もこうして路上ライブをる為に、重たい荷物を運んでいる。



 ただ去年と違う事が一つだけある。俺は自分の為じゃなく、誰かのために歌えている。全部、ユキが教えてくれた。



 あの日歌った曲も、今では人前では歌わない様にしている。あの曲は、俺の歌ではない。ユキの歌だから。



「――さむ」



 独りごちながら繁華街を抜け、いつもの場所に辿り着きギターケースを地面に下した――



 もうすぐ、クリスマス。



 今日は雪が降っていた。




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その幽霊、歌うたいにつき。 夏村シュウ @kamura_shu

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