***Bパート***

「むむむ、なんてヤツだ」


 危険を感じたソーリー将軍は数少ない必殺技である、とっておきの決め台詞を出す事にした。


「貴様、消費税を上げるぞ!」


 国民にとっては大ダメージである。


「ぐふふふっ、参ったか」


「そんなの分かんない!」


 ロリコップには難しい話であった。


「くそー!」


 予定とは違うロリコップの反応にソーリー将軍は焦った。

 結果を出さなくては大幹部の地位の維持は危うくなる。

 なによりチン・ドン・ファン総統のお力になれないのが、お偉いさんになるより嫌だった。


 相手は子供なのだ、大勢の大人で囲んでしまえば泣き出して帰るはずだとヤリニゲ団の皆さんに号令をかけた。


「サラリーマンのスタッフの皆さん! 少女を羽交い締めにしてしまえ!」


「いやっほーい!!」


 元気のいい返事が返って来た。

 黒覆面のサラリーマン達はニヤニヤしながら手を伸ばして近付いて来た。

 それを見ていた一般の中年サラリーマンのオヤジ達もマネをしながら近付いて来た。


「や、やほ~い」


 男達のイヤらしい手が四方八方から迫って来る。

 あぁ、僕たちのロリコップの純潔に危険が迫る、絶体絶命のピーンチ!


 大人たちの急変に戸惑っていたロリコップであったが、彼らが攻撃の有効範囲に入って来た事で瞳が輝いた。


「愛と可愛らしさの名の元に! 必殺『お嬢様とお呼びなさい、高飛車グラビトン』!」


「きゃふん!」

「やられたぁ〜!」

「お嬢様ぁ〜!」


 ロリコップの軽やかで華やかなステップから繰り出された技で、黒覆面のサラリーマン達と一般の中年オヤジのサラリーマン達は地面にひれ伏してしまった。


「ぴくぴく……」


 黒仮面のサラリーマンのスタッフ達とその他オヤジ達は、まったく動けなくなってしまった。


「おのれぇ~、チン・ドン・ファン総統の部下達を!」


 ソーリー将軍は口から泡を吹いて悔しがった。


「あと残ったのはオジサンだけみたいたね」


 立ち尽くすソーリー将軍をロリコップは明らかに舐めた表情で迫った。

 ヤリニゲ団はもう彼ひとりしか残っていない。


「チン・ドン・ファン様~」


 攻撃力がゼロに等しい頼りないソーリー将軍は情けない声を出して、薄曇りの空に総統の姿を思い浮かべて慈悲を求めた。


「チン・ド・……そのチンと言うのを出してみなさいよ!」


 ロリコップは総統の名前を覚える気はまったくなく、名前の出だしだけを生意気に呼んだ。


「お前ごときに見せる者ではないわ!」


 ロリコップのチン・ドン・ファン総統に対する態度にソーリー将軍は思わず声を荒らげてしまった。

 だが、将軍のその態度にロリコップは好奇心を駆られてしまった。


「なんでよ! その、チン? て言うの……いいから見せなさいよ!」


 少女特有のワガママが発動された。


「フンだ! ホントは大した物じゃないから見せられないんでしょ」


「むむむ……」


 ソーリー将軍はグイグイ来るロリコップの勢いに押され、チン・ドン・ファン総統の偉大さを教える事にした。


 まずは体型だが総統は老人であったが背が高く痩せていたが、そのたたずまいにはオーラがあり見た目以上に大きく見えた。


 日頃から会員制のスポーツジムに通って鍛えられた逞しい筋肉は、無駄な体脂肪がなく古代の彫像の様に美しかった。


 そして日焼けサロンに週三回通い詰めて作った浅黒い肌は力強く光り輝き、まさに神のごとくであった。


 なにより漢の匂いを感じさせる熱い好人物である。


「それはとても大きくて、逞しく、黒光りした……まさに匂い立つ者だ」


 ソーリー将軍にとってチン・ドン・ファン総統は尊敬する偉大な人物だ。


「だったら早く出して見せなさいよ!

 その、でっかくて、ぶっとくて、黒々した……くっっさいチンを‼︎」


 ロリコップは駄々を捏ねてしまった。

 駄々っ子ロリコップの誕生だ。


「子供のお前が、そのチンを見たら驚くからな!」


 ロリコップに押されて、つい総統の名前の出だしの部分だけで呼んでしまったソーリー将軍であった。


 さらにとっておきの情報を教えるために、偉大なるチン・ドン・ファン総統の普段の姿を思い浮かべた。

 総統は豪華で高価なガウンを羽織っていたが、中は裸だった。


「チンを出すのは……恥ずかしい……」


 この情報は流石に表には出せない、それだけは知られたくない姿だ。


「やっぱりチンは恥ずかしいんだ、くすっ!」


 ニヤニヤ笑みを浮かべながら小馬鹿にした表情のロリコップにソーリー将軍は声を荒らげて言い放った。


「子供がチンを舐めるんじゃない!」


「ペロペロペロ」


 ロリコップはすぐさま反撃に出た。

 口から小っちゃい舌を突き出し高速で動かして、ソーリー将軍に見せつけてやったのだ。

 子供らしい茶目っ気いっぱいの上目使いのおどけた表情で舌を舐め回す姿はキュート!


「くそ! 子供のくせにチンを舐めやがって! 偉大なるチンをなんだと思っているんだ!」


 自分が敬愛するチン・ドン・ファン総統が舐められてソーリー将軍は顔を赤らめて怒鳴り返した。

 ただ、顔が赤くなったのは怒りだけでもなかったのも確かだ。


 オジサン(ソーリー将軍)との会話に飽きたロリコップは周りを見渡した。


「もしかして、この中にいるんじゃないの?

 でも恥ずかしくて、わたしに見せられないんでしょ」


 ロリコップは地面に伸びているヤリニゲ団の黒服面とオヤジ達に興味の対象を移した。


「いるのなら立ってよ!

 立てないのなら誰でもいいから立たせて見せなさいよ!」

 

 ピクリともしない黒服面とオヤジ達にいら立ち始めたロリコップは街中を見渡しながら大声で叫んだ。


「チーーン! チーーン‼︎

 ……

 チンを立たせて!

 チンが見たいの!

 誰かわたしの目の前で、チンを立たせて見せてよ‼︎

 その、でっかくて、ぶっとくて、黒々した……くっっさい物を!」


 ロリコップは我慢出来なくなって癇癪を起こした。

 だが、黒覆面のサラリーマン達とその他一般の中年オヤジ達はロリコップの必殺技で、もう立たない役立たずになっていた。


「もういい‼︎ わたし、帰る!」


 もう飽きたロリコップであった。


「あぁ~あ! 臭くてぶっといチンを見てみたかったなぁ……

 そうだ! 今日パパに会うんだからパパから……」


 そう言い残してロリコップは足早に遠ざかって行った。


 ……やはりロリコップのりこチャン、少しナニと勘違いしているみたいだね。

 でもソコがマタ、カワイイ!


「子供なのにチンを舐めまくって……イってしまった……」


 スキップして帰るロリコップを見送ったソーリー将軍は無意識に呟いた。

 ただ好奇心だけで行動する彼女の小さい姿に、遠いあの日を思い出して思考停止したのだ。

 子供の頃、近所の幼い少女とお医者さんごっこを楽しんだあの頃を……

 自分が医者役で患者役の少女の体を隅から隅まで調べようと試みたが、逆に自分が患者役になって服を脱がされ医者役の少女に下半身を徹底的にいじくり回された懐かしいあの日を……


「チョット奥さん、聞いたぁ! お隣の奥さんがさぁ……」

「あら、ヤダァ、ウソッ、ホント!」


 陽は落ち始め、夕食の買い出しに来た奥様方の噂話の声で我に返り、ソーリー将軍はあたりを見渡した。

 子供の頃のもろ出しの恥ずかしいのに快感を感じた思い出に、時間を忘れて思いふけっていたようだ。


 我に返ったソーリー将軍は味方を探した。

 黒覆面のサラリーマンのスタッフ達はひれ伏したまま一生動けなくなっていた。

 それはヤリニゲ団とは無関係なその他一般の中年オヤジのサラリーマン達も同様であった。


 ヤリニゲ団は全滅だ。


「お、覚えておけ!」


 とっくに帰ったロリコップに捨て台詞を吐いたソーリー将軍は、ひとり薄暗い帰り道をトボトボ歩きながら複雑な思いを感じでいた。

 チン・ドン・ファン総統の大事な部下を全滅させてしまい申し訳ない気持ちと、美少女とお話しした高揚感……そしてナニかのチャンスがあったのを逃した気がした。



   ***



 地下の本部に帰ったソーリー将軍には総統のキツイお仕置きが待っていた。


 幹部達は全員、薄暗い拷問部屋に連れて来られ正座を強要されていた。

 目の前にはX型の台があり、そこに縛り付ける革のベルトと金属の拘束具が付いていた。

 まさに拷問用の台だ。


 そして、その側にはチン・ドン・ファン総統とアルバイトのコギャル風女子校生二人が待ち構えていた。


「どうやらお仕置きの時間がやって来たようだ」

 

 総統は冷酷無比な表情で幹部達を見つめていた。


「いけませんですわ、ですわ!」

「そ、それだけはばぁ……ごかんべんをだばぁ!」


 セクシィダー婦人とヤク・タタン大使が必死に懇願した。


「私が失敗したのです、私だけを罰して下さい!」


 ソーリー将軍もすべてを受け入れる覚悟で懇願した。


「ええいっ、黙れ!」


 総統は一喝した。


「ははー!!!」


 一同は頭を下げた。

 総統の命令は絶対だ。


「では……」


 チン・ドン・ファン総統は、いつも以上に冷酷な笑みを浮かべながらガウンをゆっくり脱ぎ始めた。



   ***



“パシュン! パシュン! バッチコーン!”


「うお~うお! おおっ! あぁあ~!」


 拷問部屋では外まで悲鳴が響く程、凄まじい拷問が行われていた。


「はぁ~はぁ~はあっ!

 ぐわっと! 

 おうおう、おうぅ~!」


 拷問用の台の上には裸のチン・ドン・ファン総統が縛られ、アルバイトの目隠しマスクのコギャル風女子校生二人が、総統めがけてムチを打っている光景があった。


「うわっぷ! はあぁ~ん!」


 二人の女子校生はイヤらしい笑みを浮かべながら本気で総統の体めがけて思いっきりムチで叩いた。

 女子校生は思いっきり楽しんでいる様だ。


「おやめ下さい!」

「お身体に差し控えますわ、ますわ!」

「や、止めるんだばぁ、これがぁ!」


 幹部達は声を荒らげて、総統を庇おうと腰を上げた。

 ご老体の体にムチを打つ行為は三人にとっても、ごく一般の庶民から見ても痛々しくて目を覆う光景であった。


「黙れ! 黙って見ているのだぴょ~ん!」


 総統は幹部達の意見を制した。


「お前達の失敗は、私の失敗なのだうわっひょい!

 はぁ~はぁ~。

 こんな私を見たくなくばおうっ! ふわっと!

 次こそあは~ん!」


 ひとりの女子校生がローソクを手に持って、笑みを浮かべながら総統の体に溶けた蝋を垂らし始めた。


「あじ~っ! 

 はっはっ……ふにゃ~あ!」


「嗚咽、なんと御いたわしい!」

「嗚咽、ですわ、ですわ!」

「嗚咽、だばぁ!」


 悲鳴を上げながらのけぞる総統を見せつけられる幹部達は嗚咽と泣き出した。


 もうひとりの女子校生が、なんと特注の特大浣腸器を持ち出し勢いよく突き刺した。


「うぉうぉ! 

 びっ! んんんっ……ぽっ!」


 チン・ドン・ファン総統が激しく悶え苦しみながら我慢する姿を、幹部達はいたたましくて見ていられない。

 しかし命令なので見続けるしかなかった。


「我々の甘さが、この結果を生んだのだ……

 総統の偉大なる意志を世界に見せつけなくてはならないのに……」


「ざます、ざます」

「だばっ」


 悔しさを噛み締めたソーリー将軍の言葉にセクシィダー婦人とヤク・タタン大使は深く同意した。


「見、見ないで……いや、見てぇぇ〜!

 ダメ、ダメ……もうぅダメぇ~! 

 ほ、ほ、ほにょう~‼︎

 ……」


“ぴかりん!”


 女子校生たちの容赦ない責めにチン・ドン・ファン総統はおびただしいほどの汗と苦悶の表情で顔は真っ赤に火照り、目からは光悦の涙がこぼれ落ちた。

 その涙がローソクの火に照らされて、まるで星の様に光り輝いた。


「ロリコップ、次こそは容赦せん!

 次こそは世界にそそり立つチンを見せてやる!!!」


 幹部達は、その光り輝く星に誓った。



   ***次回予告***



 次回: まみの場合は



 でも完です

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