海より来るもの
聖域を穢すものには死を。それが掟であり、私たち、“海より来るもの”に課せられた使命だった。
聖域は砂浜で、かつては村の人々が強く戒めていたので、私たちの手を煩わせるような事態は十年に一度くらいしかなかった。村がなくなると数年に一度は浜で火を焚き、獣肉を食らう者たちがやってきたので、私たちは忙しくなった。人間たちは誰も聖域のことを覚えていなかった。
獣肉を食らう者たちがやってこないよう、残忍に殺した。すると多くの人々が聖域を荒らしに来た。そのすべてを殺すことはできなかった。私たちのうち、あるものは殺され、あるものは自らの不徳を恥じて命を絶った。
聖域を穢すものは彼らだけではなかった。ペットボトル、ビニール袋、漁具、ドラム缶。ありとあらゆるものが、海を漂って聖域へと流れつく。更に海自体も伸びあがって聖域を飲み込もうとしている。
私は今、聖域を穢す罪人の一人、獣肉を食らうものの一人と交わっている。この男はまだ、他の罪人たちが死を迎えていること自体を知らない。いずれこの腹から生まれる子供たちが、聖域を穢す者たちをことごとく殺すのだ。
海は日々膨らんでいる。聖域の浜を飲み込もうと。もはや聖域に価値などないというように。
《お題:楽しかった罪人 必須要素:ペットボトル 制限時間:30分 》
即興小説置き場 s-jhon @s-jhon
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