フェネスター村興亡史
フェネスター村の草競馬は伝統と格式あるものだとみなされていた。少なくとも近辺の村々からは。
なのでマグラウェーが自身の珍妙な馬で出走すると表明したときは非難がなされた。しかもそれで勝ってしまったときは。
村々のお歴々が集まり、なんとかマグラウェーの勝利を無効にしようと画策した。不正がなかったか徹底的に調べられ、八百長の調査が行われ、そしてそれらが全くなく、不正の捏造すらほとんど不可能だということが判明した。
都会から権威ある学者諸氏を招いて調べてもらおうと言い出したのが誰だったのか。ともかく学者たちは不正がなかったか徹底的に調べ、八百長の調査を行い、そしてそれらが全くないと証明した。
ただ一つ、村々のお歴々を喜ばせたのはマグラウェーの珍妙な馬が実は馬ではなくアルパカという動物だと判明したことであった。「アルパカは馬ではなく、よって、マグラウェーの勝利は無効!」フェネスター村の村長は高らかに宣言し、村史に書き込み、マグラウェーが二度と競馬に出ようと企まないように村の入り口の石碑に刻み付けた。
フェネスター村の村長と近隣の村々のお歴々は学者諸氏に「どうかこのことはフェネスター村の競馬の伝統とともに、世間に広く知らせてください」と頼んだ。学者たちは喜んで引き受けた。
こうしてフェネスターは「アルパカに負ける駄馬たちによる競馬を行っている村」としてゴシップ紙に消費され、大衆の笑いものとなり、草競馬を廃して間もなく人々が出て行ったせいで近隣の村々とともに廃村となり、今では道の跡すら消えかけている。それでも村の入り口まで行けばアルパカに負ける馬を称え上げた石碑を目にすることができる。
マグラウェーとそのアルパカがその後どうなったか、それは誰も知らない。
ただ、我がアルパカ牧場の創設者の名前がマグラウェーであることはここに記しておく。
《お題:アルパカの栄光 必須要素:800字以内 制限時間:30分》
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