じっくり腰を据えて読む、古き良き"ライトな"古典ファンタジー

12巻と外伝2つまで読んだ感想です。ネタバレを避けるため、ちょっとふんわりした評です。
まず、インスタントでスピード感のある俺tueee好きには向きません。お疲れ様でした。
本作は、なろう系よりも濃厚なファンタジーを求める諸氏に向いています。

この作品は世界を固めた上で立ち上げられた物語のため、読者としてもまずは世界観を固めるために、鈍い進行(に伴う世界設定説明)を乗り越える必要があります。
私の雑感としては、世界観の説明を取り込むために、最低でも2巻までは我慢して読む必要がありそうです。
とはいえ、読み味はライトです。そういった意味ではロードス島なんかと近いですね。ロードスを「古典」ファンタジーなんて評するのはどうかと思いますが、なろう系に親しんでる層にとっては古典になるんでしょう。
海外ファンタジーを読み込んだ諸氏であれば、世界観を取り込むためにじっと我慢する経験はあるかと思います。それとラノベの軽さの文体のハイブリッドと評すれば、評価としてはそこそこしっくりくるかと思います。
古典ファンタジーは、まだ弱い主人公の成長物語を含んだりするものですが、本作品もラノベの香りを漂わせつつも主人公が四苦八苦して成長する物語になっています。
主人公が成長するための小さい伏線・記述がしっかりとあり、ご都合主義が嫌いな私好みの作品です。
主人公の強さはなかなか視覚化されづらく、なろう系に慣れた諸氏にはしんどいかもしれません。
裏を返せば、古き良きファンタジーの香りを感じられる良作であるといえます。
骨太な設定というには若干過大評価な面もありますが、しっかりと世界観全体に根を張り、物語の方向性が魚群のように一斉に向きを変えて突進していくような展開に胸を躍らせることができるでしょう。
繰り返しますが文体自体はライトですし、転生の影もチラチラと見えます。そのあたりの案配で、これは古典ファンタジーではなく、やはりなろう系ライトノベルなんでしょう。
チートもなく、無双もないですが、本作はなろう系から本格ファンタジーへとステップアップして読み進めたい諸氏にとって、うってつけの作品であるといえます。
おすすめします。
評価:★★★★☆4.1

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