最終話 バーチャルアイドルから直接連絡が来ました
『あ゛あ゛あああああ!? なんでそっちなんだよおおおおお!! プレイミスっだああああああ!!』
「ふふっ」
『……う゛ははははははは!! ざまぁ見やがれえええええ!! うぁははっ、げほっ! げほっ! んな゛ぁ!?』
「くっ、くくくっ、ははっ」
スマホの画面に映る女の子の叫び声や笑い声がおかしくて、つい笑い声が漏れてしまった。
俺、
見ているこちらまで笑ってしまうパワフルな笑い声が特徴で、笑うたびに3Dモデルの褐色髪がふわふわと揺れ動く。
皮ジャケットを着たクールそうに見える姿が笑い声や性格とアンバランスで、誰もが一度動画を見てみれば夢中になってしまう。本当に、楽しそうなリアクションをするなぁ。
そして祝復活の放送は終わりに近くなり、彼女がコメントをピックアップして視聴者と交流するコーナーになった。『おかえり!』『ゆめおかえり~!』『交流待ってた!』などというコメントが次々と流れては消えていく。
『【隣家ゆめガチ恋勢です! メッセージ直接送ってもいいですか!?】だって! もちろん! 私はぁ、超嬉しいよ? 暇さえあればできるだけSNSのメッセージも返していくからぁ~! みんなに元気を届けたいしね~!』
ああくそっ、また俺のコメントが読まれなかった。しかもまたガチ恋勢からか。さらに今回はそんなメッセージが多いな。やはり人気なのか隣家ゆめ……。
【隣家ゆめ愛してる ¥50,000】
『ぎゃああああああ!? すんごいスパチャきたあああああ!?』
「ごまっ……!?」
ガチ恋勢の俺でも気軽には出せない金額だぞ!? いったいどんな金持ちなんだ!?
俺の中に黒い感情が出てくる。もし、もし隣家ゆめの感情がそっちに向いてしまったらどうしよう……。
いや、落ち着け俺。みんな隣家ゆめが大好きな同士だ。そんなことを考えちゃいけない。あぁ、だけど悶々としてしまう。
『みんなああああ! またねぇええええ! 私も大好きいいいい!』
無事に放送が終わり、終了しましたの表示が出てくる。よかった、隣家ゆめの復活放送は何事もなく終わった……。
それを確認した俺はすぐにスマホの表示を切り替えてSNSを開き、隣家ゆめにメッセージを送る。
『隣家ゆめへ。ガチ恋勢の絵師です。今日も最高でした! 全力で応援しています』
あっという間に彼女から返信は返ってきた。放送が終わったすぐ後にスマホをチェックしていたのだろう。
『ガチ恋勢さんありがと~! また放送見てねえええええ! 全力で元気を届けていくからああああ!』
SNSの返信が来た直後に、今度はSMSで彼女から連絡が来る。マイクの電源が入ってるかもしれないので、念のためメッセージで連絡を取ったのだろう。
『ありがと~! どうだったどうだった? みんなめっちゃ優しかった!』
『みんな隣家ゆめが好きだからだよ。みんな帰ってくるのを待ってた』
『ガチ恋勢の冬輝が言うんならそうだよね! で、明日一緒にゲーム進めない?』
『テストあるだろ。それに受験までの成績大丈夫?』
『冬輝のおかげでA判定~! 明後日はデートにいきたいな! わはははははは!』
まったく、すぐ調子に乗るなぁ友香は。あんまり調子に乗るなよ、と連絡を返して話は終わった。
スマホを切って、俺はファンアートを描くためにPCへ向かう。今日もいい調子で描けそうだ。
そう、俺は隣家ゆめにガチ恋し、その正体である夢野友香と付き合っている。どっちも中身を知っていたようで、実は全然知らなかったんだ。だから、積極的にどちらの友香にもアプローチして、お互いにもっと知っていこうと決めた。
俺はどちらの友香も大好きだ。だからどちらも愛したいし、もっとどちらも知りたい。ずっと元気を貰ってきたんだ、今度はこっちが彼女に元気を与える側となっていこう。
イラストを進めていく中で、もう一度友香から連絡が来た。時間が経ったのに一体何の連絡だろうかとスマホをチェックしてみる。
「くっ、はははっ……」
そのメッセージの内容があまりにもおかしくて、愛おしくて、つい笑ってしまった。
ああ、幸せ過ぎるだろこんな日常。隣家ゆめにガチ恋して、その正体と付き合う。これ以上幸せなことがあるか。
『だ~いすきだよっ! あはっ!』
『あはって、クサいよ? そのセリフ。俺も友香のこと大好きだ』
いつぞやのお返しだ。自分でも気持ち悪いくらいニヤニヤしながら返事を返して、俺は次の動画のサムネイルを描くために全力でPCに集中するのだった。
ガチ恋していたバーチャルアイドルが顔バレしてその正体が幼馴染だったので、全力で再起の応援をします フォトンうさぎ @photon_rabbit
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