第2話 森のクマさん
辺りは暗くなり森も風に揺られる音しか聞こえない中私は森の真ん中で木箱を見つけ、何と中には人が寝ています。
「人...それも私と同じぐらい」
不思議とその女の子はしっぽがあり耳も私たちと違った、私はモフモフのしっぽをつい触りたくなって指先で触れるたびにしっぽは左右に揺れ動く。
そうとしていると女の子は起きて私の方を振り向くといきなり飛びついてきた。
「ガーガー!」
「きゃあ!」
いきなりの事で驚きそのまま後ろに倒れたはずみで二人は頭をぶつけ合った。
「痛てて〜!大丈夫?...あれ?」
頭を摩りながら立ち上がるとぶつけた頭の前に魔法陣が浮かび上がりすぐに消えてしまった。
「うー...パパは?」
「パパ?」
何の事か分からないけれど私は話を聞く事にした。
「すっごく大きくて茶色の。」
「それって...」
(あの冒険者を襲ったモンスター)
私はあの時の事を思い出していると遠くから何かが近づいてる音がした。
「あっ!パパだ。」
遠くから姿が見えるとついさっき逃げてきたあのクマのモンスターがこっちに向かって私たちの前で止まった。
「パパおかえり!」
「おう、もう起きてたのか。」
「...えっ?」
私はクマにも驚いてたけどある事に気づいた。
「この子森で会ったんだよ!」
「...人間。」
クマはじっと私の方を睨みながら警戒していた。
「喋れるのですか?」
「!? これは驚いた、言葉が通じる。」
私が言葉を交わすとクマもびっくりしていた。
あの女の子は私(人)に近いから違和感はなかったけどモンスターとは初めて喋る。
そういう種族なのかその時の私はまだ何も知らなかった。
「何しに来た、人間!」
「えっと、私はこの森に冒険者が入るのを見たのでお友達が危ないと思って助けに来ました。」
そう告げると私の後ろからスライムちゃんが近づきぴょんぴょん跳ねた。
「ほう、見たところエメラルドスライムか」
「スライムちゃんを知ってるの?」
「前に住んでいた森はスライムや色んなモンスターも居たからな。」
私はスライムちゃんの変化は害のものじゃないか心配だった。
「スライムの様子を見る限り、嬢ちゃんの言ってる事は嘘じゃないみたいだな。
さっきはすまなかった、ここん所冒険者達がうじゃうじゃと来るから娘が心配で殺気立ってた。」
「気にしないで下さい、私も友達のスライムちゃんが心配だったから夢中で。」
「しかし、今まで色んなモンスターに出会ったが言葉が通じる人間に出会ったのは初めてでびっくりしたぞ。」
「私もクマさんと喋ったのは初めてで嬉しいです!」
何とかクマさんとの誤解が解けて話をしているとまた遠くから草木が揺れる音がする。
「この音は...」
「くそっ、また冒険者か。」
冒険者の集団がこっちに向かって来ている中ただぼうぜんと立っているとスライムちゃんが私たちを引っ張って行く。
「えっ!スライムちゃんどこに!?」
「スライムはこの森に詳しいみたいだな、オレが時間を稼ぐ!その隙に娘と一緒逃げてくれないか。」
「パパ!?」
突然の事で女の子も困惑しているけど時間がなく、急がないと辺りを囲まれそうだった。
「分かりました。」
私も突然聞かれてパニックになってたけどクマさんの目を見たら不思議と冷静になれた。
「嫌だ!パパも一緒に逃げようよ!」
「悪いなユウ、パパも必ず後を追う。」
クマさんは娘に一言いって私に託した。
「最後に嬢ちゃんの名前を教えてくれないか。」
「私は...サアヤ。」
「サアヤか、人間はモンスターを敵とし襲ってくるオレ達の敵と思っていたが最後にサアヤみたいな人間に出会えて良かった。
サアヤならユウを任せれる。」
私はその時分かった。
クマさんの瞳には覚悟を決めた輝きを見て私は落ち着けたと。
「私も、クマさんの名前!」
「クウだ。また後で会おう。」
スライムちゃんを案内に私はユウちゃんを引っ張った。
クウは最後に私たちに笑顔を見せて冒険者のいる方に向かって走った。
後ろを振り返りたくなるたびに泣いた。
辺りは火で焼かれ熱く感じる肌、焦げた匂い。
私たちの生きる幸せな世界はこんなに残酷なんだと。
私はこの日のことを今でも鮮明に覚えている。
農民だけどモンスター使えば最強なんじゃない? @sou1028
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