第3話 お姉さんはお出かけしたい
そういえば今まで言ってこなかったが、実は春休みで学校がないのだ。春休み前の自分は数日でこんな状況になるなんて想像できただろうか。
それはさておき、昨日は散々な目にあった。しまいには同じ部屋で寝るというビッグイベントまで起きてしまったのだ。
そのことを朝食のとき唯さんに相談したのだが、きょうだいだから大丈夫という根拠のない理論を展開され論破されてしまった。我ながら恥ずかしい限りである。
一つ言わせてもらうが僕は童貞だ。あの状況で襲わなかった僕の童貞力(?)を褒めるべきだろう。
そのことを初登場の友人T君に電話で話したところ、「死ね」とだけ言われ、切られてしまった。
キリストなら味方してくれるだろうが、
四面楚歌いや三面楚歌だな。というか死ねはないだろ死ねは、せめてホビロンだろ。
くだらないことをひとしきり考えているうちに昼の11時になろうとしていた。昼食のお手伝いくらいはしようかと思い、部屋のドアを開けると、目の前に唯さんが立っていた。
「うわぁ!びっくりした」
思わず叫んでしまった。ホラー映画ならB級作品ですらないと批判がきそうだが、この作品は一応、恋愛ものである。(この際、そんな展開今までなくね?といった指摘はご遠慮願いたい)
「お姉ちゃんの前でいきなり叫ばないの」
すこしムスッとした顔で言ってきた。今のは理不尽ではないだろうか。
「いや、まさかドアの前に立ってると思わなかったので.....」
「それもそうか。じゃあ仕方ないね。ごめんね~よしよし」
あれ?昨日もこんな風に頭を撫でられなかったけ?態度の変わりようとその行動に既視感をおぼえつつ、
「きょうだいだからって、むやみやたらにスキンシップをしないでください。
勘違いしちゃいますよ」
「勘違いって?なにを勘違いするの?」
この人は本当に僕のことを弟としか見てないらしい。それはそれで男として以下略
「なんでもないです。それより、なにかできることはありますか?」
「なにかできることって言われても....ここに居てくれるだけで私的には満足という
か十分というか....」
さらっと居てくれるだけで満足という言葉を発した唯さんにドキッとさせられてしまった。なんで天然でそういうこと言ってくるのかなぁ!勘違いしてもおかしくないよね!
「いや....そういう意味じゃなくてですね....なにか手伝えることはありますかって
ことなんですけど...」
「うーん....特にないけど.....あっそうだ!ちょっとだけわがままを聞いてほしくてこ
の部屋に来たんだった。
そういえばこの人僕の部屋の前に立ってたんでした。びっくりして忘れていた。それよりそのわがままの内容が気になったので
「僕にできる事なら....でも苗字を揃えて~とかいっしょにお風呂に入って~みた
いな無理なことは勘弁してください」
「まさか、きみにそんな願望があったなんて....お姉ちゃん悲しいよ....」
「もういいです。聞いてあげませんから」
「冗談冗談。ほんと可愛いねきみは。で、本題なんだけど、明日ちょっとだけ
買い物に付き合ってほしいんだけど....いいかな?」
「まあ、それくらいなら全然大丈夫ですよ」。どこ行くんですか?」
「それはね~.....内緒です。明日まで楽しみにしててね~」
そういうと、部屋を出て行ってしまった。
お出かけか~ふぅむ....女性だから服を買ったり、流行りのものを食べたりとかかな....わからん。
そういえば今はタピオカが流行ってるってニュースで見たな。決して馬鹿にしてるわけではないのだが、正直カエルの卵にしか見えなくて、なんか飲もうと思えないんだよな。(タピオカ好きな人、本当にすいません)
でも唯さんが、流行ってるから、という理由だけでなにかをやりに行くとは思えないし...マジで難しい。
考えるだけ無駄か。行き先は内緒って言ってたし、すこし、いやだいぶ不安だが任せよう。
デー.....間違えた。お出かけ当日(デートだなんて全然思ってないんだからね!)人生で初めての親以外の女性と出かけることになる。
中学のころ、すこしだけ彼女がいた時期があったのだが、すぐに別れてしまったため、恋人らしいことは何もできなかった。まぁ、僕がヘタレだっただけなんだよな。
なんか....涙が.....でてくる予定だったのにでてこない....くそ大した思い出もないからこんなことに....
「おまたせ~」
家の前で、自分語りに酔っていたところ、唯さんがきた。
唯さんの衣装は、初めて会ったときに感じた品のある女性のようなイメージで、
誰がみても、どこのお嬢様ですか?苗字は〇〇院さんですか?と聞きたくなるような、非常に目を引くものとなっている。
どういう種類の服なのかは分からないが、白いスカートにグレーのニットだと思われる。
思わず見惚れていると、
「なっなにか、かっ感想はないの?」
頬を赤く染め、ファッションを褒めるように言ってきた。そんな姿はファッションも相まって、どこか様になっていた。きょうだいじゃなければ、間違いなく惚れていただろう。
しかし、ここで動揺してはいけない。水谷亮、一世一代の演技を見よ!
「あっあの、すごくにっ似合ってると思いまひゅ!」
さすがこの僕。アカデミー賞主演男優賞まちがいなしの名演技!ていうかひゅってなんだよひゅって
「ど....どうもありがとう....」
ちょっとなに照れてんすかー!大したこと言ってませんよね!めちゃめちゃ嚙んでましたよね僕。あと、あくまできょうだいですから!
ここはリード男としてせねば。
「じゃっじゃあ、行きましょうか...てどこ行くんですか?」
「えっとね、動物園に行きたいなって思ってるんだけど...いいかな?」
「大丈夫ですよ。昨日もアニマルビデオ見てましたよね。動物好きなんですか?」
「うん。きみの次に動物が好きかな。ほんとに癒されるんだよ~あぁ早く見たいな」
今日も今日とて平常運転みたいだ。安心した。
「リードしてくれるのはありがたいんだけど、私の車で行くんだよ」
そういえばこの人車持ってるんでしたー
車で走ること1時間くらいだろうか。めちゃめちゃでかいライオンが描かれている看板が立っていた。ていうか、あのライオン目が逝っちゃってるんだけど。よくあのままに放置してるな。
「やっと着いた~!来ましたぞ
そんな名前だったのか。さっきはあの看板に気を取られ、それどころじゃなかったからな。
入場料を払い、園内の入る。入園料は高校生が270円と想像していたよりかなり安くて驚いた。
(270円で一通り周れてコスパがいいので、是非、弥生いこいの広場でググって行ってみてください)
入ってすぐにミーアキャット?なるものがいた。僕自身、別に動物に詳しくないので、案内板を参考にしている。そこから順番にダチョウやシマウマといった動物を見ていくのだった。
一通り見終え、唯さんが作ってきたお弁当を食べることになった。春休みということもあり、家族連れが非常に多いように感じる。まあ、動物を見る以外で来る理由もないし、若者がこないのも納得できるが。
そんんことより、唯さんの作る弁当は普段作ってくれる料理のクオリティが高いため、例に漏れず弁当のクオリティも高かった。
木でつくられた高そうな弁当箱に入ったおかずはどれも輝いて見える。だし巻き卵や豚肉の生姜焼きといった定番メニューから、肉巻きおにぎりといったちょっと変わったメニューまで勢ぞろいし、2人で食べきれるのか?と思うほど量が多かった。
「あのー、唯さ....あ、お姉ちゃん作りすぎでは....」
「いやー、ちょっと作りすぎちゃったかなって思ったんだけど、大丈夫かなと思っ
て」
思ったなら調節できましたよね?しかし、せっかく作ってくれたものに文句は言えまい。ありがたくいただこう。
「ふー...ごちそうさまです」
「おそまつさまです」
「それにしても美味しかったですね。料理って習ったりしたんですか?」
「んー?まあ、実家にいたときにちょっとね~」
「へー。そうなんですね」
一瞬、唯さんの表情が曇った気がしたが、気のせいだろう。あまり勘が良すぎると日常パートが3話で終わってしまう。それでは僕の人生があまりにテンポが良すぎてあと5話くらいで卒業式に入ってしまう。まだ未登場のヒロインもいるのに....
「このあとどうします?もう一通り周りましたし....」
「そうだね、もう1時になるし、帰るのにも丁度いいかも」
「それじゃ、帰りますか」
今日は特別何かが変わった日ではなかったが、とても充実していたと思う。
いっしょに動物を見てお弁当を食べて....それは1週間前の僕ではどう頑張っても手にいれられないものだった。こうして一緒に暮らし始めることができたことを嬉しく思っている。これでもまだ2日目なのだが....
これで心置きなく学園パートに入れるぜ!まだ見ぬキャラクター達に俺の心が躍る!俺たちの戦いはこれからだ!
※まだまだ水理先生の作品は終わりません
世界で一番僕を愛してくれるお姉さん 水理さん @MizuRe
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