第7話 これからも爆薬令嬢の爆進は続きますわ!

「ああああ! 燃えてる! 私の屋敷が燃えてる!」


「お父様! 早く逃げなければ! 死んでしまいます!」


 ハミルトン男爵家の屋敷が燃える様を見ながら、マーガレットは父親を避難させようと必死に説得していた。


「屋敷が燃えてるんだぞ!? 全財産が燃えてしまう! そうなればどっちにしろ死んだも同然じゃないか!」


「それでも、死んでしまってはすべておしまいです! 逃げましょう!」


「嫌だああ! せめて金庫を、執務室の隠し金庫だけでも!」


「駄目です! そこの警備兵、お父様を連れて行って!」


 手近にいた警備兵に父を引き摺って連れて行かせると、マーガレットは燃える屋敷を見上げた。


「ああ、エレーナ……ここまでするなんて……」


 かつて親友だったエレーナ・ガンパウダーから自分が憎まれているのは分かっている。あんな仕打ちをしたのだから当たり前だ。


 だけど復讐でここまでするなんて。これではハミルトン男爵家はおしまいだ。屋敷も財産も焼けてしまう。


 ベルグリット侯爵家との繋がりもザウアーの失脚によって絶たれた。エレーナの弱みになりそうな特技を知り、ハミルトン家の発展を図る父にそそのかされてザウアーに言い寄った結果がこの有り様だ。


 涙を流しながら屋敷を見つめていると、



 ドガアアアアアンッッ!!



 という轟音が響き、屋敷は一気に崩壊する。


「ああ、ごめんなさいエレーナ、許して……」


「マーガレット様もどうかお逃げください! ここは危険です!」


 遅すぎる謝罪の言葉を吐きながら、マーガレットは使用人に引っ張られるようにしてその場を離れた。


・・・・・


「マルコ様、あーんしてくださいませ」


「は、はい……あーん」


「美味しいですか? 私の手作りのビスケットですわ」


「は、はい、とても美味しいです、エレーナ」


「うふふ、それはよかったですわ」


 ザウアーへの復讐を終え、マーガレットへのお仕置きも済ませれば、あとはマルコ様と幸せになるだけです。


 侯爵家の嫡男だったザウアーへの復讐はそれなりに準備も必要でしたが、木っ端貴族家のマーガレットに痛い目を見させるのは造作もありませんでしたわ。


 何せ、商取引の書類をちょっと偽装してあの家の倉庫に私のお手製爆薬を紛れ込ませ、あの家の使用人にお金を握らせて倉庫の中でボヤ騒ぎを起こさせるだけでよかったんですもの。


 これでハミルトン男爵家は完全に没落しました。ベルグリット侯爵家という後ろ盾も失い、財産も失くしたあの家に手を貸す貴族などいませんでしたわ。


「エレーナのおかげで、僕も自信をつけることができました」


「そんな……すべてはマルコ様の努力の賜物です」


 ド派手な復讐の手引きという経験を経て、マルコ様は大きく成長なされました。


 実際に、情報戦も駆使してザウアーを嵌める手腕はなかなかのものでした。決して武闘派ではないマルコ様ですが、これからは軍師タイプの逸材として王国の軍部で力を発揮されていくことでしょう。


 オルグレン家のマルコ様と、ガンパウダー家の私。2人が夫婦になれば、王国の軍閥で最大勢力になるのは間違いありません。私たちの将来は明るいですわ。


 この先どんな困難が立ちはだかろうと、私はマルコ様を支え、私たちの前に立ちふさがる者はぶっ飛ばします。


 だって私は、爆薬令嬢なのですから。

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爆薬令嬢がぶっ飛ばして差し上げますわ! エノキスルメ @urotanshi

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