第7話 働かざる者・・・・・・

 俺は替えのズボンとパンツを買い求め、心機一転レオナの話に耳を傾けた。

 場所は噴水広場のベンチである。


 彼女が言うには、この世界では先天的に能力を待った人間が、千人に一人程度の割合で生まれてくるらしく、その多くが冒険者や傭兵、或いは能力を悪用する人間を捕らえる賞金稼ぎとして活躍しているらしい。

 しかしフリーランスで活動する者はほとんどいない。その理由として、能力者に振り分けられる仕事のほとんどがギルドを仲介する為だった。

 ギルドはいくつも存在し、それぞれ専属の能力者を抱えており、仕事の依頼があればその者達に割り当てるらしい。

 更にそのギルド達を束ねる存在として、ギルド連合があるらしく、ギルドを通さず仕事を直受けすれば、その人間は業界から干されるそうだ。

 何でも、能力者はその強大な力ゆえに国家からの警戒も強く、業界団体たるギルド連合の意向に背くような人間は、警察権力の標的になるらしい。

 どこの国の警察機構も、多数の優秀な能力者を抱えており、国家にとって不都合な能力者を狩るという話だ。

 とは言え、能力持ちの犯罪者はそれほど多くないらしく、警官が相手にするのは殆どが一般の犯罪者だ。その為、ギルドに属して命懸けでモンスターを討伐したりするよりも、安定した職業と言える。無論、国家に尽くすことに誇りを持って警官の道を選ぶ能力者も多いとのことだった。


「ふーん」


 俺は適当に相槌を打ちながらレオナの話を聞いていた。


「ふーんってアンタねぇ、やる気あるの?」


「やるって何を?」


「だからぁ、悪い能力者からチカラを奪って、それを一般人に与えてアンタのギルドで働いて貰うのよ。能力者の数は限られてる、どこのギルドも数を確保しようと必死で、大金を積んで仕事をさせてるわ。それをアタシ達はこっちから能力を与えてあげるんだから、多少キツい条件でも応募してくる人間はいるはずよ! そうなればアタシ達は格安で仕事を請け負えるから市場を独占できるわ!」


「あのさぁ、まずその悪い能力者ってのはどこから見つけてくるんだよ? お前も今能力者は少ないって言ったじゃん。その中でも悪い奴なんて・・・・・・」


「その点は心配ご無用! アタシだってプロの賞金稼ぎよ、いかがわしい連中の情報はいくらでも仕入れられるわ!」


「うーん」


 ハッキリ言って俺はあんまり乗り気じゃなかった。

 だって俺の能力の発動条件はキスだぞ?

 ってことは、極悪人のオッサンとも唇を交わすことになるじゃないか。

 俺だって相手は選びたい。


「いやー、悪いけどやっぱり気が乗らないなぁ」


「そんな事言ったって、アンタだってもうお金あんまりないんでしょ? 働かなきゃいけないんじゃない?」


 誰のせいだ誰の。


「もっと堅気な仕事をするよ。じゃあな。またどっかで会ったら今度は飯奢ってくれよな」


 俺はベンチから腰を上げた。


「そう・・・・・・残念だわ。最初のターゲットは美貌で男を惑わす女占い師にしようと思ってたのに」


「やる。やります」


 俺はベンチに尻を叩きつけた。

 ベンチが壊れないのが不思議なくらいの勢いだった。


「やる気になってくれて嬉しいわ!」


 レオナは早くも俺の扱い方をマスターしている。悔しいがこれが男のさがなんだ。

 

 

 明くる日、俺とレオナは街を離れ、田畑が広がる農村へとやって来た。

 レオナが信頼出来る筋から仕入れたと、自慢げに繰り返していた情報によると、この村に人の心を操る占い師が暮らしているらしい。


「なあ、今回狙う占い師ってのもやっぱり賞金首なのか?」


 あぜ道を歩きながら俺はレオナに訊ねた。


「んー賞金首は賞金首なんだけど、あの女は国から指名手配されてる訳じゃないのよね。資産家の男が、あの女に騙されたとか何とか騒いで懸賞金をかけたのよ」


「それって俺たちで捕まえて大丈夫なのか? どっかのギルドが請け負ってるんじゃないのか?」


「今回は別に特定のギルドに依頼した訳じゃないみたいだけど・・・・・・確かにギルド連合の奴らはいい気持ちはしないでしょうね」


「おいおい大丈夫か? 俺たちのギルドを立ち上げる前から目をつけられちまって」


「目をつけられるってのは良く言えば注目されるってことよ。名前を売るチャンスだと思いなさいよ。それに、連合だって一枚岩じゃないわ。私たちの今後の立ち回りでどうとでも転がせるわよ」


「そんなもんかねぇ」


「そうよ!」


 自信満々で答えたレオナが足を止める。

 その視線の先には立派な館が構えていた。

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異世界行ったら他人の能力を収集、分配出来るチカラを手に入れたのでギルドマスターとして君臨しようと思う 狒狒 @umeda06

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