世界を覆う絶望に引き裂かれた少年ふたり

 吸血鬼と化してしまった少年と、その親友である難病を抱えた少年が、ふたりきりで卒業式を開くお話。
 終末もの、と言い切ってしまうと語弊があるのですけれど(滅んでいるわけでもこれから滅ぶわけでもないので)、でも大まかな世界観としてはきっとそんな感じ。人間を吸血鬼化させてしまう奇病の流行した未来。問題はそれに罹る人と罹らない人とがくっきり分かれてしまうことで、つまり人類がふたつの異なる種として分断されてしまった、そんな世界に生きるふたりの少年のお話です。
 どストレートな友情の物語でした。地獄のど真ん中に咲く、地獄の形をした友情の花。もうとにかく状況が悲惨で悲愴で、これでもかとばかりに降りかかる「ろくでもない」あれこれの中、それでも互いを大事に思うふたり。その辿り着いた先である卒業式が、冒頭からもう「空の下で僕は君を殺した。」なんて始まっている、その容赦のなさが本当にとてつもない。なんという地獄……素晴らしい……。
 ハッピーエンドなのが最高に好き、というとやっぱり誤解を招くというか、正直ハッピーな要素は何ひとつないのですけれど。状況そのものは完全なバッドエンドで、実際彼らの心がズタボロであろうことは想像に難くなく、でもタイトル通り「卒業式」をしているのがよかったです。これから世の中に向けて一歩を踏み出していく、そのための儀式でありまた餞でもある行為。実際、彼らの行動はかなり壮絶なもので、きっと自分(これを読んだ私)ならとてもじゃないけど実行できないであろうことを、それでもお互いのためにと完遂してみせる。そこから窺い知れる覚悟と友情の深さが、まるで染み入るみたいに心を揺さぶってくる作品でした。