VOLUME-UP

XALEX

第1話 記憶の破片

電話のベルが2回コールで切れて又鳴った。

やがて3回目でアンサリングマシーンに切り替わり、明らかにSteveだと確信した

LisaからはCell Phoneにメッセージが入り、今夜のクラブの誘いだった

SteveにしたってLisaにしたって、私の気分次第でYep or Nopeの決断を下す

出かけたければ受話器は逃さずPicするし、そうでなければMaybeって都合よく無視するかの

どちらかだ。実際、最近の男との関係性も少しはGetting Overだけど、ハプニングでもない限り

お互いこのままズルズル妥協しながら維持する


週末のFRIDAY NIGHT


私は慌ててバスルームに駆け込みシャワーを浴びた

点滅してるCell Phoneを覗き込み、Hmmまだ間に合う。たかが10分よね。Right? そう自分に言い聞かし、とにかくバスローブを羽織りLisaにCall Backした


Kittie:「Hey Lisa, Whats up?」


Lisa:「Black cat なんで電話に出ないのよ?U should pic up the phone. いい事。今夜のお誘いの電話なんだからすぐにPicしてよ。Right? もうKittieったら気がおけないんだから。

今日さ、青山のいつものクラブでGSのHIPなメンバー達が勢揃いするのよ。こんな機会はそんなにあるもんじゃないわ。知ってる?Jeffって彼、Kittieにずっと紹介したくてさ〜なぜかわかんないんだけど、Uの好みだよ。彼ね。アメリカ人のくせにスラングなんてものはお上品だし、彼、絶好調の瞳してるよ。」


Kittie:「Hun?」


Lisa:「だからそういう事だってば」


Kittie:「What?」


Lisaは時々意味不明で理解出来ない言葉を発する。 それが彼女のFUNKYな性格で裏切れない。


Lisa:「とにかくさ、1時間後にはKittieのマンションの前までPic Upにいくからさ。それまではしっかり念入りにメークするなりしてて!青山通りに差し掛かったらI'll call U ね! 窓から私の黒塗りのジャガーが見えたらクラクション鳴らすから降りて来て!K?」


Kittie:「だけどLisa, よりによってどうしてそんなFuckingな高級車買ったの?」


Lisa:「買ったんじゃないよ。私のパパの車だから仕方ないじゃん。パパは大手外資系企業の重役だからさ。こんな車にしか乗らないんだよ。」


Kittie:「こんな車ってhun? 普通ジャガーなんてイタリアンマダムが年下男とのLove affairに使うような車でしょ。私なら黒いRange Roverか四角いG 500とかだよね。まあいいか。押し付けがましい私のセンスなんかより、スノビッシュにジャガーに乗れるんだからね。」


Lisa;「そうよ。Okay? Wow 急がなきゃ。今夜は何着て行こうかな? 夜から雨が降り出しちゃうかも知れないから、そんなにお洒落したくないわ。だけど、だからSilk素材?」


Hmmm 私はふと考えた。

雨だからこそヤッピーな顔してSilk素材の服を着る程コンサバでもないわ。


Lisa:「だけどさ、そのKittieが話してた昔の彼も来るかも知れないよ。彼もGSだったんでしょ?


Kittie:「Yeah, もう彼の事はどうでもいいよ。しかも彼NYに戻っちゃったし...」


受話器を持つ手が震え出した。

確かに遠い昔の出来事ではあるが、私は彼の事が忘れられない。

手の浮き出る血管や... PCを急がせるスクリーンや... その男との最後の場面をシュミレーションしていた。決して忘れる事が出来ない男。大人になればなる程どうしてだろうか?

体の細胞がどんどん進化していくのにね。離れてしまってからの方がその男を愛してる。

そんな単純な事に気付くなんてね。



Lisa:「Hey Kittie, 聞いてるの?Helloooooo」


Kittie:「Yeah 聞いてるよ」


私はそう答えながら、それでもその男のクライマックスに私の髪を掴んで引っ張る癖やNYの彼の部屋から見渡せるイーストリバーの景色やベッドルームに飾られた二人の写真や、そんな事が走馬灯のようにして脳裏の裏側を這いずり回す。


思いついたかのようにベッドルームのサイドテーブルに飾られっぱなしになっているその、昔の男の写真に目を向けた。彼はハニカミながら少し微笑んでいる。

彼独特のその唇を口角を少しだけ上げて、その得意げな微笑み。私はそんな彼が好きだった。

だからこの二人の写真をいまだにベッドルームのサイドテーブルに飾っている。


Lisaはずっとさっきから延々と話してる。


Lisa:「Hey Kittie, Ar U Kkkk? Are you Okay?」


Kittie: 「Yep! TTUL」


Lisa:「BY EAS!」


私達は幸せだった。NYの彼の部屋で3年の年月を過ごし、ある雨の降る夜全ては滅亡してしまった。止め度ない口論の挙句、ほんの些細な事からファイティングになり、部屋中に飾られていたアートというアートが一瞬にして音を立てて全てが粉々になり、破壊されて行った。

私は裸足でバスローブ姿のまま駆け出し、ずっとロビーで震えながら泣き崩れていた。

そして彼のいない朝を迎えた。私は今もあの日のまま此処にいる。

その破片も私の足首にきざまれた傷跡の奇跡



彼は私の全てだった


だけど、私達の3年は確実に終止符の封印を告げた


何度も時計に目をやりながらスキニーデニムを履いた。

陽灼けしている事でメークの時間も省けるし、それ以前に素足のSEXYさは簡単に醸し出せる。

だから陽灼けしてる肌が好き。さっきLisaが私に紹介したいと言っていたJeffのイメージを思い浮かべてみた。名前の響きからしてJeffってきっとヘアースタイルは流れるような長めの前髪で、少しルーズな歩き方をするような男かも知れない。そんな未知な男の事を思った。


その時、Steveからのベルが響き渡る中、私は最後のリップグロスを手にしていた。

そして今夜奪われるであろう予感の心の扉に、ベージュのグロスを卑猥なまでに何度も塗りたくっていた。約束の時間より15分遅れでLisaがクラクションを鳴らした。


Lisa: 「Hey Black Cat, 今 Uのマンションの下にいるよ。黒塗りのジャガーが見えたら降りてきて。K? だけどSocks! 雨が降り出したよ。Oh Man...」


Kittie:「マジに?Socks! せっかくのドレスアップが台無しじゃない? ごめん、後5分待って」


私は最後のグロスを更に念入りにそして強すぎるパフュームを振りかけた。

そしてLisaの黒塗りのジャガーに乗り込んだ。


時間がなかったので、バッグに慌てて仕舞い込んだブレスやリングを片っ端から付けていった。

そしてStrawberry Kiwiのバブルガムを取り出した。

慌ててなんでもバッグに仕舞い込んだせいか、アイシャドウとリップがグチャグチャに混じり合い、万華鏡の世界のように見えたんだ。私は更に2枚目のバブルガムを取り出して、その包み紙で拭いた。


青山通りはみるみるうちに雨でグレーに変わった


Lisa:「Fucking Socks!マジにおニューの服が雨の湿気を含み、Nastyな匂いに変わったらどうする?今夜の男達とのパーティーが台無しよ。でしょ?Kittie...マジに私この雨に幻滅だわ。」


Kittie:「私だってこのおニューのデニムの裾が濡れただけで不機嫌になるもんね。Oh Manって感じ。高過ぎるこのヒールも雨のせいで Fell Downしたらどうなるのよ。全てがこの雨のせいで男とのお楽しみの夜が台無しよ。」


Lisaはいきなり窓を全開にして、降り出した雨の中 ”Fuck the rain" なんて叫び出した。

その行為があまりにも可愛くておかしくて、移り変わる景色の中私達は何がなんでも気が狂ったようにシャウトしていたんだ。


こういう時はF-WORDも使ってもいいもんだ。なんていきなり正当化して誤魔化してしまう。


Lisaは幼少時代からイタリアで育ち、帰国子女としての彼女は完璧にイタリアンだった。

だから彼女には全く日本人らしき所がない。

彼女の瞳の温度の育て方ですら全くイタリアンだし、日本語だって英語だって男のチョイスや扱い具合でさえイタリア人混じりのどちらかと言うと彼女特有のユーモアが感じられる。

私はと言えばフランスで生まれて、20代をリオン、パリで過ごし、その以後NYに渡り全く自分が何人で何語を話していいのかがわからない。だからこんな私達はよく似ている。

フランス語なまりのアメリカン英語を話す。


丁度クラブに着く前には雨も上がった


私達は車を降りる前に何度もコンパクトを覗き込み、更にリップグロスをはみ出す程に念入りに付けパフュームだって欠かさずToe Lingの隙間からTattoosの間にまでも身体中に吹きかけて耳たぶは勿論、ベリーボトムのピアッシングの凹にまでも念入りに。


テンションが急激にハイになり、重い洞窟の中へと引きずり込まれそう。

その洞窟は幾分ウエットでドライさはない。

その時KISSした後の最初の言葉が重要だと思ってたし、ベッドインする前の二人はこの上なく世界中で一番最高でまた非劇的な行為だとも思っていた。


昔の男 私はいつだってそうだ

こういう時は必ず昔の男が現れて、終いには1日の全てを台無しにしてしまうのだ

その昔の男、執行なまでに強引だったその男がやって来ては快楽の極致にまでも引きずり込む


私はそんな男の事は忘れられない


Lisa:「Hey Kittie, Are U OK? Kittie大丈夫?


私はLisaの声で、イタリア語混じりのR U K? (Are You Okay?)の声でふと我に返った


Kittie:「Yeah 大丈夫問題ないよ」


一応彼女にそう返事した

全く私は大丈夫じゃない

昔の男が現れて、私をNYへと引き戻す


いつもそうだ


全くこの光景は同じで、あの時の色彩や感触や匂いや...

シルバーメタリックな空間

イーストリバーサイドの窓越しから降り続く雨を見ていた夜


彼と私と私と彼と彼と私と私と彼と彼と私と私と彼と彼と私と私とカレと.....


Lisa:「Hey Kittie...Black Cat r u okay?」


私達はB1にある真っ黒なクラブに向かった


ドアを開けた途端白い光線の中、向かってくる男とLisaはHugしながらKissしてる

そうBig Hugしてる彼女の肩越しから私はそのJeffらしき男と目があった


彼じゃない

何も感じない

違う

彼じゃない

この男は私の男にハマらない


Lisaが振り向いた途端、私に彼を紹介した


Lisa:「Hi Kittie, 彼が噂のJeffよ!彼女はKittie...Black Catってそう私は呼んでいるの。だっていつも彼女の瞳はグルグルと動くから。なんか黒猫みたいでしょ」


Jeff:「Hahahahaそんな感じだね。宜しく!Kittie...Black Cat」


彼はそう言って片目を瞑り片手を差し出した。


Kittie:「Me 2」


ダンスフロアーは真っ黒くてブラックライトで真っ白い生き物達でいっぱい


GSのいつものメンバーが次から次へと挨拶に来た

そしてグラスを傾け ”Cheers!”まるでハープを奏でるかのようにグラスの音が響く


Steveは相変わらずの主役というのか、彼が毎回パーティーをオーガナイズする


私はJeffの視線を気にしながらも、Cell Phoneを覗き込んでいた

そこには昔の男、Brianが微笑みながらワインを傾けウインクしてる

私っていつもこうなんだ

一人の男にのめり込んでしまう。そこには彼の母親になりたいという母性がある

幼少時代、ママからの愛情が不十分だったんだろうか?

そんなふうに考えてしまうんだ。



Jeff:「Hey Kittie, Cheers! Nice to meet you! ダンスフロアに行きませんか?」


私達は懐かしいUKサウンドが流れてるフロアーで自己中なダンスをした

きっとJeffは私の事、ちょっと風変わりなフランス人だと思っているだろう



SteveとLisaは相変わらずいつもの調子でふざけあいながら延々とスラングまじりで語り合ってる

外資と日系のストックの違いについてや、NYに置ける経済状況などかなりお酒が入るといつも討論してしまう彼等。


その時、私の耳元で「1杯おいかがですか?僕が君にトリートするよ」


ふと振り向くとOMG信じられない

彼はBrianに似てる

囁き方や瞳の温度はまるで昔の男と同じ




SAT MORNING


太陽の眩しさで思わず目が覚めた

裸足のままでキッチンに行き、ノルウエーのミネラルウオータを一気に飲み干した

コットン100%の着古した彼が愛用していた長くて真っ白いランニングをズルズルと着て

私はまたベッドに横たわる。


彼の飼っているBlack Catが裾を噛んでしまったおかげで、とてもFUNKYなリメイク物に生まれ変わった。そしてズルズルとした大き過ぎるメンズサイズの白いソックスを履く


だけど又ベッドに入る時はその全てを一気に脱ぎ捨てる法則の元、この男とのBED INは切ない


静電気が体をヤケつけるように火花を放ち、だからその一瞬でベッドに潜り込むんだ


私の昔の男は黒猫ととびっきりの美人が好きだった

憂鬱な雨のWEEK END


女がキッチンに向かう

黒猫が彼女にまとわりつくように歩調を合わせる

窓から差し込む光のプリズムがその光景と溶け合い、湿気を含んだモザイクの波紋を構築する


そういうとびっきりの美人と黒猫を首を傾げながら彼は眺めているのが好き


どこにも出かけたくない 出かけない 今は彼女と黒猫をただ眺めているだけ


ONE NIGHT STAND...


こういう出だしは下手したらというか、確実にONE NIGHT STANDよ


私はBrianと別れてからは、こういう愛し方しか出来なくなった

これでも自分は愛してると錯覚なんだろうか?その男を信じて許してしまう

だけど、男は違う。こんなに健気で一途な女をいとも簡単に見捨てる


一体何が欲しいの?

愛という感情に飢えてるの?


地位も名誉もあるからって何様よそれ


私、そして思ったんだ


恋愛なんて相性で決まる


いや、必然的に出会うべき人は決められているんだ


私はこの男が煎れてくれたCoffeeのカップを粉々に破壊して笑いながら部屋を出た


彼はきっと追っかけても来ないだろう


それでいい それでいいんだ


そして私は又思い出という記憶の破片の中でこそ生きる



To be continued...

XALEX


©️XALEX













































































































  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

VOLUME-UP XALEX @XALEX

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ