第32話、一つ目の座敷童

むかし、むかしのことじゃ


ある男が夜中に喘息発作を起こした

ひどく呼吸が息苦しい


ひゅー、ひゆー、ひゆー、ひゆー 

ひゅー、ひゆー、ひゆー、ひゆー

 

口から洩れる呼吸音がおかしい

あまりにも苦しいから

「なあ、おっかぁよ、うちに気管支拡張剤はなかったっぺかな?」と

おっかぁに聞いてみた

「さあ?あったっけかな、あんた、おら探してみるだよ」

おっかぁは

2階に上がり探しにいってきた


小一時間してもおっかぁは帰って来なかった

不信に思った男は2階に上がって行った

そこには、おっかぁが放心した状態で薬箱の前で座っていた

そしてその横には小さな一人の童が横にちょこんと座っていた


「あれ?どこの童じゃ、なんでおらの家におるんじゃ?」

その童はおかっぱ頭で小さな顔と目と鼻と口と愛らしい手足

小動物のような感じで、とても可愛く見えた

「これ童よ、おめえはどこから来たのじゃ、なんでおらの家にいるんじゃ?」

男はその童を抱いてみたくなった

そして抱きあげてもその童は嫌がる様子もなく素直の男に身を任せた

「本当にめんこい顔をした童じゃな」

男は顔を近づけて童の顔をまじまじと見た

小さなつぶらな瞳

その愛らしい黒目の大きい目が男と視線を合わせた途端に

童の目がどんどん大きくなっていった

そしてとうとう一つ目になった

男はびっくりしたが

直感でこの一つ目の童は

おらの家を守ってくれてる座敷童じゃなかかと

思うようになった

「まあ一つ目でもええが、この童はおらの家の守り神じゃて」


一つ目の座敷童はその後の男の家に住むようになり

男の家に福をもたらすようになったとさ


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瑞希童話 瑞希 涼 @ryoutinn

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