第31話、粗忽な幽霊14
「あれ?人間がいっぱい居るわ」
水面から顔を出した女性はきょろきょろと見渡した
「キャーーーー気持ち悪い生き物がいるわ!!!!」
女性は大きな声を出して太郎丸を指さした
「いやー!いやー!キショイ!キモイ!怖い!!!!!」
流石に太郎丸も女性に露骨にここまで言われたらショックであったが
しかし相手は若くて綺麗な女性
太郎丸もぐっと我慢してニコッと笑顔でその女性に近づいていった
そして、さぞかし自分がイケメンな男である風な口調で話しかけた
「お嬢さん、僕の姿は仮の姿で本当は大金持ちのイケメンで紳士なおぼっちゃまな人間です。そこの性悪なニワトリにヤキモチを焼かれて、この河童の姿に変えられたのです。この魔法を解くには美しいお嬢さんの愛が必要なのです。」
そのセリフにトコちゃんはプッツンきた
「お前!、性懲りもなく同じ芝居ばかりしやがって!、
今度こそは丸焼きにしてやるぞ!」
スケベ心のなせる技か、
トコちゃんの激怒をスルーして太郎丸はその美女の全身が見たくてたまらなかった
トコちゃんを無視して話しを続けた
「さあ、早くその池からお上がりなさい、温かい物を僕の下僕に用意させます、
お互い運命の出会いを祝いましょう。」
女性もこのまま水の中に居ては埒があかないと考えて
警戒しながらその美女は岸に上がってきた
(想像した通りの良い女やんけ)
太郎丸は鼻の下を伸ばしながら見ていた
(艶艶の肌、細見の身体、長い髪で隠されているがオッパイも大きい)
美女は岸に上がり座りこんだ
(そして、あれ?あれ?あれ?)
下半身は魚であった
人間達は驚いた
「本物の人魚じゃ!やっと見つけただ!!、永遠の命の元だっぺ!」
太郎丸は相手が人間であろうが人魚であろうがかまわない、なにせ美女には変わらないから
「ちょっと僕の下僕達に注意してきますのでご安心して下さい」
太郎丸は荒縄で縛りつけた人間達に近づいていき低い声で恫喝した
「お前ら人間共、あの美女を食おうとしたら、その前にお前らはワイが息の根止めたるからな、覚悟しとけよ」
用事を済ませてまた美女の方に行こうとした太郎丸
なんとトコちゃんと美女はにこやかに話していた
太郎丸は機嫌が悪くなった
(その美女はワイが最初に目をつけたんやで!)
「そのニワトリは性悪でバカだからそんなのとは話してはいけません、
バカが移りますよ」
トコちゃんはあきれ返って太郎丸に言った
「バカはテメーだよ、この女性はおいらと同じく神様だよ、テメーも水のバケモンだろ、なんで自分の上司が分かんねぇんだよ!このバカヤロー!」
太郎丸は何を言われているのか分からなかった
「この女性はな、水の神様ククリヒメ様だよ、テメーのくだらない術に巻き込まれて来たんだよ」
太郎丸は元々陰陽師に土木作業に使われる為に紙に命を吹き込まれた単なる紙切れ
分かるはずもなかった。そしてなにより太郎丸はバカだから記憶力はないのである
「トコヨノナガナキトリ様、久しぶりにお会いして良かったですわ、でももう私は帰らなければいけません、私の上司水神様に叱られますので」
人魚は再び水の中に帰って行った
「おいらも、もう飽きたから帰るかな、そこの幽体3人おいらに付いてきな
おいらがあの世の入り口を知ってるからよ」
権米も為やんもサチもあの世に帰れることを喜んだ
しかし、そのあとこの3人の勝手な行動がバレて大目玉を食らった
そして一年に一回だけ
お盆時期にあの世のモノがこの世に帰れる光の道が出来ることになった
残された太郎丸は一人
どこにも帰るとこはない
腹いせに縄に括りつけた人間共に水鉄砲を浴びせて遊びだした
これで終わりです。
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