いけすかない性格ながら、強力な能力を持つ主人公が、とある人物との出会いをきっかけにした心境の変化を描く。
アクションや主人公の個性的な言動も見どころだが、各エピソードの登場人物たちが、自らの過ちや行動の結果によって受けるショートホラーのような側面もあり、読む人を飽きさせない。
特に序盤の妖怪たちの陰にそっと現れるより不気味な影としての主人公の存在感が印象的。それに加えて、のちの展開や変化を含めると二度おいしい。
全体的な物語の雰囲気や要所要所の緊張感、不気味な場面も魅力の底上げに一役買っている。
読者に驚きと興奮を与える一作です。
不思議な力で自らの妖を使役して、怪異を撒き散らす妖を、霊術を使い絵に縛るという、青龍寺環。彼のその背後を守る、白銀のキツネ。
妖が生まれるシーン。又、妖が狩られるシーン。など、リアルで、迫力を伴った描写で物語を牽引していく。
なぜ妖がこの世に巣食うのか? 妖は本来人の行いや、人の心の闇からの悪想念によって生まれ変わり、人々に報復するのかが、こちらの本書から伝わってくる。
一見して、妖怪バトルファンタジーに窺えるが、彼を取り巻く人間ドラマにも注目したい。心に闇を持つ、ひねくれ者で有る主人公。彼を取り巻く家族達。更には、当事者である憑かれし人々と、人に取り憑く様々な妖達。
やがて出会う、柚莉という謎の少年……。
物語が進むうちに、柚莉の真の力の謎が明かされて行くが……。
現代の怪異を狩る、ホラーファンタジー。
物語の結末にきっとアナタも、その理(ことわり)の存在に気付くだろう?
オカルトものの定番である霊術で人を救う……という型を破ったこの作品。
主人公の青龍寺環はその特殊な生い立ちから性格が拗れています。なので基本、人を救わない。力はあるけど倫理観からの救いは与えない。
そんな主人公の在り方を描いた作品ですが……これがとても魅力的に描かれています。ご都合主義のものと違い多くの方が世界観に没入しやすいと思われます。
より人間のリアルさを織り交ぜ、読みやすい文章により先へ先へと導かれる……それは作者さんの技量の為せる技でもあります。
取り敢えず完結はしていますが、続編がとても気になる現代オカルトファンタジー……一読の価値ありです!
強い力を持ちながら、その力ゆえに退屈していた主人公・環。
鬱屈した毎日の中で彼が見つけた「楽しいこと」は妖怪の蒐集だった。
だが、そんな生活の中でのとある人物との邂逅をきっかけに、徐々に彼の中で変化が訪れる……。
妖に翻弄される被害者(自業自得だったりもする)が紡ぐ人間の因縁をはじめ、環の使役する「式」のバトルアクションと、土地神や妖怪といった異形のものたちとの交流と、見どころも多い。
登場する人物も、ひねくれ者の主人公の他、お人好しの弥勒院や主人公を見守る家族たち、暗い側面を持つ青龍寺本家と、個性的である。
だが、やはり一番重要となってくるのは主人公の気持ちを変えることになる「とある人物」であろう。
主人公が出会いを通して自分の気持ちに気づき、不器用ながら向き合おうとする様を見ていると、彼の家族同様見守りたい気持ちになってしまう。
大学生編ということで、新章での続きも楽しみになる作品だ。
優秀な能力を持ちながらも、妖怪を蒐集することにしか情熱を抱くことのできない環。彼は非情な手段で妖怪のコレクションを集める日々を送っていたが、強力な霊力を持ちながらも守られる存在でしかない柚莉と出会う。彼の力の謎をどうにか解き明かそうとするうちに、やがて周囲の人々と交流することになるのだが……。
環と彼の使役する狐を始め、霊能力を駆使したアクション描写、成すすべもなく闇に囚われていく被害者たちなど、作者の筆力が光る。ホラーを読みたい読者でも、バトルを楽しみたい読者でも楽しめるだろう。キャラクターの関係性も充実してきており、ひねくれた環、純真な柚莉、それぞれの兄弟たちなど、徐々に変わる人間関係も面白い。