君に愛しているとさえ言えない僕はとてもみじめ

つちやすばる

とりあえずいっしょにいる


目次


とりあえずいっしょにいる

知らないひとリストその①(そのうちにその②)

ほんとうにだめな感じ

『アイスエイジ エピソードツー』

まえはそうだったけど

嫉妬心を漫画から学ぶ・乙女心を漫画から学ぶ

あいつきらいなんだよね

敗北心を植え付けられる

助けてほしいならそれらしく振舞ってよ

朝の鏡昼の鏡夜の鏡

「結局のところ」まで

勇気やる気元気ってなんの広告ですか

毎日が生活

おまえって何がしたいわけ

君に愛してるとさえ言えない僕はとてもみじめ

だよね



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 きのう聞いた話ではこういうことだった。


 僕が「付き合っている」と認識していた彼女はじつはその彼女の認識では「付き合ってはいない」ということになっており、そのために彼女は自由にあたらしく恋人をつくった。 

 そう、「つくった」というのがまさに近しい表現で、smarter⁂chatというデートアプリを使って知り合った彼とは結婚を前提にしたお付き合いを始めているそうなのだ。ハワイで挙式を上げてささやかな披露宴を執り行う計画まで着々と進行中で、僕には一体何が起きているのかまったくわからない多重世界が進行中だったのだ。


「だって、結婚するつもりないんでしょ」と、彼女は死の宣告をする裁判官みたいに決まりきった台詞を繰り返すだけだった。「べつにうちらってそういうのじゃないって、お互いわかってたじゃん。」

 彼女のもこもこのピンクの寝巻に染み付いた柔軟剤の香りとこの議論のギャップにくらくらとしながら、僕はなんとか自分の自制心を作動させて、この不毛な大地に花を咲かせようと、とっさにこのセリフを口にした。「俺だって、そのつもりはあったよ、いつか結婚して…」

 彼女は驚くほどのすばやさで言葉を返した。

「いつかっていつ?」


 世の男性たちよ。もうここまででおわかりですね。そう、その「いつか」は永久に訪れない。それに気がつかないでいるうちに、目の前に存在する大切なものを見失い、失うだけでなく、たいていは二度ときみのところには訪れない。「大切なものは目に見えない」。それを僕たちは手首のタトウにして、トイレ休憩のたびに眺めるべきだ。絶対にそうすべきなのだ。人生ですべきことなどただひとつなのだ。そう、それは人を愛することですね? でも、「彼女を愛してる」という人間が彼女を愛するかといえばその確証はない。「君をプリンセスにするよ」という人間がほんとにそうするとは限らない。しかし僕にはもうそんな世界の不都合な真実など、どうでもいいのです。だらだらだらだらいっしょにいたところで、いっしょに生きるとかずっといっしょだ、という気持ちなんて消失してゆく。人はプリンセスを選ぶ。たとえなれないとわかっていたとしても。

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君に愛しているとさえ言えない僕はとてもみじめ つちやすばる @subarut

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