第7話

「もう食ったのか?お前ら…」


 ステーキとサラダを盛り付けリビングに戻ると鍋が空になっていて物足りなそうに項垂れている一同。アルカは皿まで舐めている。

 苦笑しながらステーキを前に出してやる

と4人の目が見開き瞬く間にステーキが消えた。

 口一杯に肉を頬張り涙を流しながら悶ている。


「う、美味すぎる。さっきのスープといいこの香り、肉汁の甘さ、俺の今まで食っていた肉は何だったんだ」


 ルガーは項垂れながら絶賛してくれる。アルカはまた皿をなめ回し、クリスはそれを羨ましそうにヨダレを垂らしながら眺め、ルッツはただ宙を仰いでいる。


 その様子を見て「お代わりいるか?」とたずねると一斉に


「お代わり!!」


 目を輝かせ全員が皿をつき出す。俺は「あいよ」と一言、 

 取り敢えず焼けたホットサンドを出し肉の調理に入る。リビングからは賞賛の声が鳴り響き口にあった様だと安堵しつつ更にホットサンドを仕込む


 肉を焼き上げホットサンドも追加で出す

暫くその工程を繰り返しキングボアの3分の1を4人で食べてしまった。若い胃袋が羨ましいな。あっ俺も今は若い身体だな。


「もう満足か?」


「あ、あぁ本当にうまかった。有難う」


 ルガーは頭を下げて礼を述べる。ルッツ、クリスは椅子にもたれかかり手をひらひらさせている。アルカは床に寝そべりお腹を抱え笑顔で「おいしかった」と満足気である。


「そっかそっか。」


 食後のコーヒーを入れながらタイガは知らずに頬が緩んでいた。

 今までメシつくっても一人だったからな旨そうに食ってくれるのは気持ちのいいもんだな。そして4人の前にコーヒーを出す。


「砂糖はいるか?」


 砂糖の入った瓶を全員の前に置く。


「さ、砂糖?」


 全員が固まる。アルカは「いる〜」と手を伸ばすが後からクリスに羽交い締めにされもがいている。

 ルガーが大きくため息をつき呆れたようにして口を開く。


「なぁタイガ…この世界では砂糖は庶民の口に入ることはまず無い。なぜなら高級品だからだ。」


「高級品?…砂糖が?」


 青くなっているルッツ、鼻息を荒げて砂糖の瓶に迫るアルカとそれを止めるクリス


 俺は腕を組み、砂糖が高級品という事は…


「もしかして塩や胡椒なんかも高級品?」


「塩は普及しているが胡椒なんかは砂糖と一緒で貴族位しか利用はしないな…ん…もしやさっきの料理、胡椒使ってたか?」


 どんどんルガーの顔から血の気が引いて口角がけいれんしているのがわかる。


「お、おいタイガ!お前異世界人だからって常識がなさすぎる!胡椒なんてもの駆け出しの俺らに食わすな!」


「常識なんて知らん!飯は旨く食わなけりゃ命を無駄にする事と同義!そんなん認めん!」


 うでを組み一括!


「しかし俺らは助けられた身だしな…申し訳なくて…」


 俺はコーヒーに砂糖を2杯ずつ各カップに入れて「気にすんな」と笑う。


「じゃあ、わかる範囲でこの世界の常識教えてくれ。それでチャラにしよう。取り敢えず覚める前に飲んでくれ」


「お代わり〜」


 そんな話をしていると拘束から逃れたアルカが飲み干したカップを差し出してきた


 クリスは「あちゃ〜」と頭をおさえ目を輝かせているアルカを見たルガー、ルッツは吹き出す大きく笑った。


 






 


 






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