第28話 人生のノリ
岸和田の研修は最終段階に入って、おじさんに「これからの農業は成り立たない」と言われ、副業を本業にしたほうがいいとアドバイスされた。それも聞いて、何のための研修だったのかと頭に血が上った。
また、研修が終わり、私は体に負荷をかけすぎていたことがストレスになっていたのか、また、甲田療法を止めて、シーフードを食べたことが原因だったのか、再び躁転化してしまった。
今度は、自宅謹慎になった。二度目の躁という事で、薬が増量されて体が辛くなった。躁が治まって、体を鍛えようと思い市民体育館に意を決して行くのだが、まわりの人がトレーニングしているのを、ボケっと見ているだけなのである。また、薬の副作用なのかインポテンスになった。
先輩には、「それは、ダメだ。男根は、男の自信だぞ」と言われるのだが、「いや、だから多分、薬で勃起しないんですよ」、「いや、それでもアカン」と言われるのだが、どうしようもないものは、どうしようもない。医師に相談すると、あきらめることはありませんと言われ、EDの薬が処方されたが、全然効かなかった。
この自宅謹慎から20年、アメリカでリーマン・ショックが起こり、東日本大震災が起こり、また、アメリカがキューバと国交を樹立し、アベノミクスがあり、北朝鮮が核保有国になったなどあった。
私は、郵便局の盆暮と年賀状のバイトと国税局の確定申告のコールセンターの仕事をやった以外は、SNSのMIXIをやって、YouTubeを見ていただけだ。上記のニュースは印象に残ったが、それ以外は、何が起こってもあまり関心がなかった。ただただ、SNSで私の病気を理解してくれるガールフレンドができるのを待っていた。
しかし、驚いたのは、相模原障害者施設殺傷事件。神奈川県立の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」にて発生した大量殺人事件である。犯人の植松聖は死刑が確定している。精神障害よる事件だったのか、そうではなかったのかが問われる事件だが…。しかし、一体、植松の担当医師は何をやっていたんだと言いたい。責任逃れもいいところだ。
そんな中、私にラスベガスに住む日本人女性から、Facebook経由で、ラスベガスでアンガス主催のブルース・ジャムセッションでギターを、弾いていたかどうかを問うメールがあった。YESと答えると、向こうでジャムセッションを主宰していたギタリストのアンガスの元嫁からもメールが届いた。彼女は、シャイな人でステージのはしで恥ずかしそうにタンバリンを弾いていたのだが、カバー写真を見ると驚くことにドラマーになっていた。それもものすごく真剣なまなざしで叩いているではないか。
メールでやり取りしているうちに、私が渡米する前、パラディドルというドラムの基本奏法を練習しているときに、脳が活性化されたような気がした事を思い出した。そして、再び練習を始めるようになった。練習を始めて、脳が活性化されたと感じると同時に、自己流の練習法も始めて、色んなことを考えて笑っていたのだが、私はシンクタンクを辞める前にドラマーを目指していたことを思い出した。そして、ヤマハのレッスンを一年間受けたが、右手首が痛くなった。休会を申し込むとできないと言われた。一旦やめて、再度入会金を払ってくれと言われたので、即辞めた。
ちょうど、そのころ、ジャーニーのギタリスト、ニール・ショーンが弾くルチオ・ダルラのカルーゾのブルース・フィーリングあふれるカバーを聞いた。そして、ギターを再び始めた。しかし、記憶力が低下しており、ミストーンを出してばかり。そして、やはり、ギターの音よりドラムの音に魅かれる。しかし、何度も書くが腰の問題。まるで不具合からくるストレスを、ドラムに叩き込んでいるような状態。
唐突だが、先の章で、「生きる意味などなくてもいい」と書いたが、シンガー・ソングライターの山下達郎に「民」を意味する
しかし、生き続けることの意味は、何だって言われても、山下自身が曲の最後の歌詞で"Let's make a love again and again"と言っているんだから、彼の答えは出ている。子供を作ることだ。ちなみに私は、薬によって精子に催奇性があるため子供は無理だ。私の生き続ける事の意味は、闘病だ。完治が無い病だから打ち克つことはできない。上手に付き合うだが、こんなファックな病気と付き合いたくなんかないぞ!
私は、双極性障害が本格化してから、基本的にブラブラしていた。ただ、障害者年金にばかりに頼っていて、何かしないと人生のノリが失われる。最近になって簡単な事務を始めた。そして、やはり音楽だと言いたいところだが、最近は文章を書く方が性に合っている。
FIN
本作品を綴るにあたって、その場を提供して下さっているカクヨム様に心よりお礼を申しあげます。
2023年1月
サバトラひろ
限界突破 加福 博 @Donnieforeverlasvegas
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