Interlude of her
SNS消防隊第五署・消防課。
ピートー戦から二日。
ユミ改め川崎由美は一人、第五署の隊長であるアクタガワに呼び出されていた。
基地に着いた時にすぐに連絡を入れなかったこと。捨て身でリュウの足を引っ張ったこと。怒られるだろうなと思い当たることはいくつもある。
覚悟を決めてアクタガワのもとへ向かうと、彼は窓から差し込む光を眼鏡に反射させて待ち構えていた。
「よく来たね。そこに腰を掛けてくれ」
緊張している足をがちがちに動かしながら、言われた通り赤い革のソファへ座る。
「別に君のホウレンソウが成っていないことや、足を引っ張ったことを咎めるつもりはない。結果こそ逃したものの、HKM幹部のアジトを突き止めたことはそれ以上の功績だと私は考えている」
「……では何を?」
恐る恐る尋ねてみると、アクタガワは一度眼鏡を掛けなおし答えた。
「彼……速水流に対し、『カワサキ』ではなく『ユミ』を名乗っただろう。そして彼を人間だと見抜き、『狭間移動』を使わせた。なぜだ」
「私が、個人的に彼を知っていたからです。だから人間だとわかったし、何よりも、私のことを『ユミ』と呼んでほしかった」
「『ユミ』を名乗ったことは百歩譲って良しとしよう。だが『狭間移動』を使わせたことで、お前の正体は第四の者たちにバレ、彼の正体はこちらの者たちにバレた。これはお互いの危険を高めたことを意味する」
由美は前に座るアクタガワの目を見る。
「彼にも『狭間移動』を使ってもらわなければ、私はきっと彼に捕まったままだったでしょう。それに、第四・第五で共にこの秘密を守って行けば……」
「そう上手くは行かんのだ。人間が紛れ込んでいることは知られていないが、近いうちに本部から何かしらの罰が下されるという。ピートーを逃し、炎上でSNS消防隊の信頼を落としたことのな。……世間にバレるのは時間の問題だ」
正直、由美にとってそんな話はどうでもいいことだった。
一年以上前、『サキ』名義で音楽活動をしていた頃の話だ。勝手に同世代でお互いリスナーの少ない仲間と思っていた人物『リュウ』。
アコースティックギターを片手に歌う彼の声はどうしてリスナーが増えないのか不思議だった。
そんな素敵で何度も聞いて来た声を聞き間違えるはずがないのだ。
SNS消防隊 Sustainable Network Support Firefighters 雨瀬くらげ @SnowrainWorld
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