日本は火葬だから骨しか残りません。
「ぼくとあの人」は骨に独自の観点をもつ僕と、僕に選ばれた(ネタバレ防止の為、言い回しが変です)お姉さんの着飾ってほしい願望などが顕著にでています。独特な雰囲気を醸し出しながらもほのぼのとした空気をかんじます。
「僕と彼女」は主人公さえ予想だにしない展開へ物語は進みます。なぜお姉さんを選んだのか、そのときに明かされる「一方通行」、彼女に向けて放った言葉、いろんな感情が一気にきます。
「骨を捧げたい」って、別の言い方にできると思うんです。きっと読む人によって解釈が分かれるでしょう。
みなさんは、主人公をどんな人だと思うのでしょう?
死んだら焼かれようが、腐ろうが過程はどうあれ、骨となる。そこにはもはや、本人の意思は残っておらず、カルシウムとリンを主成分とした何も語らぬただの無機物なのだ。
けれど、生きている人間は、その無機物に確かに何かを感じている。古代から装飾品やシンボルとして用いられており、我々の宗教観にも影響を与えているのは間違いない。だからこそ、身近な人の遺骨などは特別であるし、怪しい魅力がそこにはある。
本作は、その魅力に取りつかれた人たちが織りなす物語であり、序盤の緩やかな語りが、徐々に駆け抜けるような疾走感とともに狂気じみてくる様は、本当に見事な構成である。そして、読了感に浸りつつ読み返すと、本文に隠された伏線回収の技術に舌をまくことでしょう。