あれ?お姫様って何すればいいんだっけ?

@nikokotti

1どちら様、ですか?

うぅ、くる、しぃ。なん、なの?なんかお腹のあたりに穴が、あいたような感覚。

「あっ...」

「お前さえ、お前さえ!いなければ!」

何かを殴るような音と誰かに罵倒される声が私の耳に届く。

「私の娘が特待生になれたのに!」

あぁ、そういうこと。私を殺して、自分の娘を特待生として県立宮山高等学校に転入させる気なんだ。

「っ」

暗く濁っていく視界とともに私だと思われるうめき声が響く。もう、なにも見えないというのに、死ぬんだろうな、ということだけが心に浮かぶ。

「死ねっ!都山莉子!天才のお前を殺して、私の娘を代わりに天才にするの!」

はぁ。そんな、こ、とした、って報われないのに。

意識が遠のく。もともと少しばかり見えていた視界も黒く黒くなっていく。


さよなら。



「はっ。って、え?」

窓から見える景色は明らかに日本ではない。

綺麗に縁どられた出窓に、可愛らしいくまのぬいぐるみ。

全然知らない景色が広がっている。それに、さっきまで寝ていたベットの高級感というかおしゃれっていうか。私の部屋にこんな女子力の高いものは、置いてない、はず?

「夢?なのかな?」

というか声、高くない?

「ん?」

鏡がある。出窓と同じように丁寧な、木彫りの、鏡。

おそるおそる近づく。

え?

「へぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?な、にこれぇぇぇぇぇ!?」

めっちゃ可愛い子が目の前にいる?脚ほっそ、かおちっちゃ!目くりくりしてる!しかも私だったら絶対持っていないワンピースのようなパジャマ。えっと、こういうのなんて言うんだっけ?

「やっぱ夢なんじゃ。」

うん。やっぱ、夢としか考えられない。しかも

「あの時、私死んだ…ぅぁわぁぁ」

「いったぁ」

長いスカートのすそを踏んだみたいで転んだ。ふつうに。

「え?」

痛い?そんな感情って夢でもあるの?夢でも、神経通ってるの?

「コンコン」

ん?

「ラミティエ?」

ドアの外から声がする。

「ラミティエなの?目覚めたの?」

え?どちら様!?

ちょっと、こういう時、どうしたらいいの!?

っちょ、っとまってよ、ラミティエってどちら様ですか!?

と、とりあえずドア、開けよう、かな?

ガチャ。私が開ける前に目の前の扉は開いた。これで、外にいた女性とは対面状態になった。

『この人は敵かわからないから、ちゃんと見破らなくちゃ』

そう思い、私はその人を見つめる。美人、だ。

ぐぅぅぅ

「!」

お腹が鳴ってしまったようで真っ赤になって照れる私を見て、

「そうよね!六年ぶりに目覚めたんだもんね!やっぱりお腹すいてるもんね!」

と、手を合わせて言う。ん?いやいや、ご飯より六年ぶりってところが気になるんだけど…。

そしてはにかんだようなほほえみで言う。

「ふふ。じゃあご飯にする?」




えっと、さっき私の部屋(だと思う)に入ってきた女性は私のお母さん。そして、いま食卓を一緒に囲んでいる男の人はお父さんらしい。

それで、私は。異世界…のラミティエって名前の女の子。らしい。

お腹もすいたけど、私は「6年間」ってことが気になるな~。

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