あとがき



 今まで数多くの作品を重ねてきましたが、長編はもう5作目になるんですね。これだけ書いてきても、まだまだ自分が未熟に思えるとは、小説というものは大変奥が深いです。

 それなりに小説を読み漁ってきた僕ですが、まだまだフォロワーさん達と肩を並べられるような作品が書けている気があまりしません。これからもひたすら勉強あるのみです。


 さて、今回も長々と僕の独白を聞いてもらいます。まず、一つの作品を作り上げるという行為には、想像を絶する困難を伴います。特に難しいのが物語の創造です。

 僕も作品を生み出すからには、最高級の理想を求めます。長編作品を書く際には、文字数や話の長さはもちろん、細かいファンタジー設定やラブコメ的イベントなども混ぜ、所々の伏線配置やスムーズな回収もしっかり行い、笑いあり涙ありの超大作を考えなければいけません。そのためには、とてつもない労力を必要とします。


 途中で物語の進め方に戸惑ったり、やる気をなくしてエタったり(※『エタる』とは、物語が途中で書けなくなり、中途半端な時点で未完のまま終わってしまうことです)、様々な危機を孕んでいます。

 そうならないために、僕は本作では物語を考える時間に半年程費やしました。前作の「世界で一番大きなごめんね」の完結の目処が立った頃から、既に「幸せの旅路」のプロットを進めていました。それくらい費やさないと、まともな作品は作れません。数週間や数ヶ月ぽっちでは生み出せないのです。


 天才なら可能かもしれませんがね……。


 しかし、作業は非常に難航しました。全くアイデアが浮かばず、無駄に使い潰してしまった時間の方が多かったと思います。何作も作品を完結させる度に、想像力が衰えてしまっているような気がします。僕ももう歳ですかね?(笑)

 それでも、フォロワーさんの助けを借りながら頑張って考えました。ここまで作品作りに力を注ぎ込んだのは初めてかもしれません。みなさんの想像を絶する努力を重ねてきましたから。


 つまり、いい作品を書きたいのであれば、それなりの努力をすればいいという単純な話です。先程も言いましたが、僕は途中で作品がエタることがないように、物語を最初から最後まで全て細やかに決め、完璧な状態にしてから公開するという方法を行いました。


 僕のTwitterやpixivでの仲のいい小説仲間さんは、最初と中盤と最後だけを考え、後は想像力でどうにかするというやり方をする人が多いみたいです。

 しかし、僕はそれではエタってしまう未来しか見えないので、場面と場面を繋ぐ途中の展開も含め、最初から最後まで事細かく決めています。連載している間に「次、どうしよう……」とならないようにするためです。


 半年という自分の中では少ないものの、地道に思考を働かせ、少しでも多くの方に楽しんでもらえるような物語を考えました。日常生活の中でふと思い付いたアイデアをすかさずメモして、それらをうまく組み合わせ、最大限の推考を重ねて生み出したのが、この「幸せの旅路」です。




 本作のテーマは「命の大切さを理解してもらう」というものがあります。自殺という重苦しい場面から始まり、物語を通して数多くの尊い命が散っていき、最後には「たった一人の大切な人の命か、その他大勢の命か」という選択を迫られます。

 命がどれほど大切なものかということを、じっくり考えさせられる場面が多々あったと思います。


 清史は両親と仲違いが生じ、自分の人生の中で生きる理由を見出だせず、自殺に到ってしまいました。

 そこで偶然にも「シマガミの呪いによって、もうすぐ死ぬ運命」を抱えた千保と出会い、彼女に救われます。『世界一の幸せ』を手に入れるという理由をつくり、宝玉を探す旅や千保への恋を通し、人生の素晴らしさを理解し、彼女のために生きることを決意します。

 最後に迫られた命の選択を乗り越え、ライフ諸島を海の奥底に沈めたという結末を招きながらも、千保と共に生きていきます。


 本作を読んだみなさんにも、ぜひ考えてもらいたいです。命がどれほど大切なものなのか。もし清史の立場に立ったら、千保と島のどちらを選ぶのか。幸せとは一体何なのか。

 答えを見つけ出せずとも、考えるだけでも大切だと思います。命というのは死ぬまで自身に寄り添ってくるものですから。




 本作も楽しんでいただけたでしょうか。あとがきを書いている今でも、とても不安に感じています。これだけ作品を重ねてくると、評価の数や人気になることに囚われ、純粋に作品作りを楽しむことを忘れてしまいます。それでは面白い作品を書くことなどできないのに。


 落ち込む度に励ましてくださるみなさんに、大変感謝しております。これからも大いに迷い、悩み、苦しむことがたくさんあると思います。早速次回作のアイデアで困ってます(笑)。とにかく本作よりもいいものが書けるように、自分にできる努力を続けて参ります。楽しみにしていてくださいね。


 最後まで読んでくださりありがとうございました。これからもみなさんの心に残るような名作を生み出せるよう、精一杯頑張ります。ぜひ次回作にご期待ください。どうかこれからもKMTの作品を、ご愛読よろしくお願い致します。




KMT


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