二人の視点で綴る人間模様と、その先にある・・・

ユーリとリリアを読んで。
人々が地底で生活する世界。そこで育った2人の少女。名前はアシェリーとリリア。2人は自分たちの生活に疑問を持ち、長が禁書とする書物を読み始める。それは嘗て人々が青空の下で暮らしていた事実と、人々を地底に押し込めた彼の存在が記されていた。やがて2人は地上で生きる事を考え始める。その思いは徐々に大きく、はっきりした物になっていく。そして誓う、人々が必ず地上で暮らせる様にと。
 場所は変わり、長閑な村。そこには修行者が本を読むために訪れる館がある。その館に一人の少年が居た。彼の名はユーリ。その少年の前に現れた美しくもミステリアスな修行者の少女。彼女は自身をクアドラと名乗った。ユーリと彼女の出会いが隔てられた二つの世界を繋げていく。それぞれに信念と正義があるが故に、ユーリとリリアにのしかかる重圧と葛藤。互いが持つ捩れる感情と揺れる想い、互いの気持ちが交錯した中で出した答えは・・・・

魔導士と人間。人は何故、異端を忌み嫌い、憎しみ、粛清してしまうのか。その狂気にも似た憎悪こそが、彼の存在を作り出すのか。その存在を消す為に、人は何処まで非情になれるのか。
魔法や格闘より、人間ドラマを純粋に楽しめる作品になっていると思います。作品内だけでなく、現実世界でも有り得る人間の葛藤と見え隠れする人間模様は、読んでいてとても良かったです。
もしも私が主人公の立場なら、その決断が出来ただろうか?もっと最善の策はあっただろうかと、自問自答しながら読んでも楽しい作品になっていると思います。一部謎解き要素やファンタジー要素もありますが、やはりヒューマンドラマがお好みの方にお勧めしたい作品です。

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