俺の青春時代は有意義な時間
玉城裕次郎
第1話 俺の欲しいもの
暖かな気温と共に華麗に舞う桜の花びら。
今日は俺が入学する風見高校の入学式。
学力、就職、進学率ともに平均。これと言って特別際立っていることはない。
ハッキリ言って普通の高校である。
そんな風見高校に入学した俺は理由が二つある。
一つは家から近いから。遠いのはやっぱいやじゃん?しんどいじゃん?
もう一つは知り合いの先輩からある言葉を言われたから。
その先輩は、現在の風見高校三年一組に在学している霧島 零(きりしま れい)先輩。
霧島先輩の話によると、先輩は務めていると言っていたが・・・
「・・・騙された」
「え?何急に?どうしたの大地?」
現在、体育館に集められ演台に立って話をしているのは在校生代表生徒会長。
その会長の姿を見て、俺は思わずつぶやいてしまった。
「瞬。俺がこの学校に入学した理由は放したよな?
「うん。確か家が近いのと、知り合いの生徒会長さんから勧誘されたから
この学校選んだんでしょ?」
「そうだ。だが今気付いたんだが・・・今話している生徒会長。
・・・俺はあんな眼鏡君なんぞ知らん。」
「・・・・・・え?」
「それに俺の知ってる先輩は女だ。」
「・・・・・・大地・・・学校間違えちゃったの?」
「いや、それは絶対ない。メールで先輩に風校に入学する事になったと伝えたらめっちゃ喜ばれたし。・・・はぁ~」
思わず肩を落としタメ息が出てしまった。
だって今まで喧嘩ばかりでつまんないって思ってた時に、先輩が興味が出るような事を言うんだぜ?
正直に言うとそこそこ楽しみにしてたのよ俺?それなのに来てみたら先輩じゃなくて眼鏡君が会長だし。
まぁ、あの眼鏡君も先輩なのは変わらないんだけど。
「大地。取り敢えず会長の事は置いといて僕達も教室に行こうよ。そして入学式終わった後に先輩に聞いてみようよ。」
俺がショックを受けている間に、教室移動へとなっていたようだ。確かに瞬が言う通りさっさと終わらせて
先輩に連絡しよう。
「そうだな。うしっ、教室に行くか。」
そんなこんなで、瞬と同じ一年二組の教室に移動した俺たちは、担任教師の指令の元、簡単な自己紹介を終えた。
さすがに周りを見渡せば、知らない顔ぶればかりでみんな警戒心を隠し切れないでいた。
まさに借りてきた猫の姿状態である。
まぁ、高校生活初日だから不安が勝っているんだろう。ちなみに瞬は全く緊張も不安も無く普通でした。
担任から入学式の終わりを告げられ、帰る準備を始めるクラスメイト。
俺と瞬も席から立ち帰ろうとしたところで、一人の生徒から呼びかけがかかる。
「ちょっと聞いてくれみんな。これから一年間一緒のクラスとして更なる交流を深めるため、
みんなでカラオケでも行かないか?」
彼の名前は青山悠一(あおやま ゆういち)
茶髪で高身長、加えて整った顔立ちから優しさが溢れているように思える。
なんか胡散臭い気がしてならないが。イケメンの僻みなんかじゃないからね。
青山の提案の後周りからはノリノリで行く気の者が八割。反対の意を示すのが二割。ちなみに俺も反対。
「おい、青山。別に強制ではないんだろ?悪いが俺はこの後すぐに用事があるから無理だ。」
「僕もちょっと用事あるから不参加でよろしくね。」
「そうかい?ならその用事が終わった後でも合流してくれないかい?出来たらみんなで参加した方が楽しいだろ?」
うーん・・・こいつ中々しつこい。初日で昼過ぎに終わって時間を持て余しているからと言って、みんながみんな暇してる訳じゃないんだよ。俺は早く先輩に連絡取りたいんだんだよ。
「おいおい、橘 大地(たちばな だいち)君だっけ?
俺は田口 涼太(たぐち りょうた)だけど、せっかくみんな仲良くできるように青山君が誘ってくれてるんだからさ
ちゃちゃっと用事終わらせてこっち来てよ。」
田口は俺の首に肩を回しながら、薄気味悪い笑みを見せる。
・・・この笑い方知ってるわ。それにこいつ片腕に力加えて思いっきり圧力かけてきやがる。黒確定だな。
「おい田口っつったか?それは無理な提案だ。俺の用事は長引く。ついでにお前の半ば強制を匂わせるお前の行動と発言に腹が立った。なので俺は帰りますさようなら。瞬、帰ろうぜ。」
そう言って俺は田口から距離を取り、瞬と共に教室を出た。
なんか後ろから、田口と青山が聞こえたが無視した。
「大地、先輩と連絡とれた?」
「メールの返事が『もう少し待ってて』だけで、電話全くでないな。まぁ、今日はさっきの青山といい田口といい疲れたから帰るわ。」
「田口君は分かるけど、青山君も?彼は単純に来て欲しかっただっけに見えたけど。」
「あいつは何か胡散臭い感じがしてな。良い人ぶっているようで怪しい。」
「まぁ、大地が言うんなら間違ってないと思うよ。昔っから観察眼はすごいもんね。
その目のおかげで格上の相手との喧嘩は弱点やら癖を教えてくれるから助かったよ。」
「あくまで情報だからな。実際戦って勝ったのはお前だ。それにお前には俺も何度も助けてもらっているから
お互い様だ。」
「うん。ありがと。話がそれちゃったけど何もないなら帰ろうか。」
「おう。って瞬はいいのか?用事あるんじゃなかったのか?」
「何もないよ。大地が行かないなら行っても楽しくないしね。」
「そうか、なら帰るか。あ、ならラーメンでも食いに行こうぜ。」
こうして俺と瞬でラーメンを食って帰宅した。
入学式から一ヵ月立ち、今日も瞬と共に学校に向かう。
あれから先輩からは新たに連絡はなく。さすがの俺も予想してしまった。マジで騙されたと。
マジかよ先輩。上げて落とすとはまさにこの事じゃないのー?・・・もー・・・
モチベーション上がらないよー。
それに、この一ヵ月いろいろあった。
まず青山がクラス代表委員となった。まとめ役である。イケメンで優しいと定評がある青山は
クラスの大半から推薦された。おめでとう。でもしつこく休日まで集団行動しようと誘ってくるのは勘弁してほしい。
次に田口が青山のサポート役としてクラス代表副委員となった。
だが、サポート役と言うより従はないやつ奴には、俺にしたように圧力をかけていた。
田口の行動により、恐怖心を植え付けられた生徒は反論せずにしたがっている。
しかし俺や瞬、一部の生徒はそんなの関係なしに従わないため田口の睨む行動が日常茶飯事である。
そして瞬の情報だと田口が校内と他校の不良と関りがあるらしく、良からぬ行動をとっているらしい。
上がったのは主に暴力、カツアゲと一年のトップとなろうとしているらしい。あほらしい。
でも、近いうちに必ずこっちに何かしらのアクションをしてくると予想できる。
めんどくさいこと極まりない。
「はぁーーーぁ」
「どしたの大地?朝から便秘に悩まされている主婦みたいな声出して」
「瞬。お前のそのたとえはいまいち分かりにくいぞ。いやな、瞬の情報によるとボチボチ田口がこっちに何かしら接触してきそうで怖いなーっと思ってな」
「あー田口君ね。確かにそろそろ来そうだよね。毎日毎日睨みつけて来るからいい加減目障りでしょうがないよ。
早いとこ返り討ちにして黙らしたいね」
「ちょっと伊藤瞬君?黒い部分出てるわよ?」
瞬は幼い顔立ちで身長は低め。その容姿からは保護欲に惹かれ優しいことからたいそう女子に人気である。
しかし、瞬は顔に似合わず血の気が多い。幼い頃から瞬は喧嘩っ早くいつも俺が止めに入る事が多かった。
俺は瞬にお願いして、相手が手を出すまで先に手を出さないことを約束させた。先制攻撃禁止。
「ごめんごめん、でも大丈夫。瞬との約束は守るよ。まぁ、変に煽ったりしないから安心してよ」
「頼むぜ瞬。よし、今日も平和な一日を願って学校行きますか」
「うん。フラグじゃないことも願ってるよ」
放課後になり、先生以外残されたクラスメイト。結論から言うと朝の発言は立派なフラグとして成立しました。
本日最後の授業も終わり、担任教師の退室と共に俺達も帰り始めようとした所、田口の呼び声により静止した。
「はぁーーい、注目ーー。ちょっとお話があるからみんな帰らないでねー」
そう言って田口の手下っぽい不良二人は入ってくると同時にドアを塞いだ。
「みんなが協力してくれたらすぐに終わるから安心してねー。」
相変わらず薄気味悪い笑みのまま言い放つ。
「俺さぁ、中学から一番だったのよ。あ、一番っつっても学力とかじゃないよ。頭は悪いんだぁ俺」
「一番だったのは喧嘩。おかげでデカい顔できたよ。気に入らない、言うこと聞かない奴は殴れば一発だったもんね」
「そこで、一ヵ月立ったけどそろそろ俺もまたデカい顔をしたいわけよ。楽しく青春時代送りたいわけよ」
「だからさ、クラスのみんな。俺の部下になってくれない?悪いようにはしないからさ」
ストレートにきたなー。周りを見るとすでに、田口の威圧に落ちてる大半の生徒。
ちらほらと少人数は屈してないようだな。仕方ない、確認するか。
「なぁ田口。質問良いか?」
「ん?いいよ橘君」
「じゃあ、お前の部下になった所でメリットデメリットを教えろ」
「部下になってくれたらみんなを守ってあげよう。それに男子、青山君を使って女の子を紹介してあげるよ」
「なるほど、それがメリットな。ならデメリットは?」
「そうだなー、まぁ俺に従えば基本的には自由だよ。」
従うね・・・
「・・・わかった。あと青山お前に質問だ。お前はいいのか?これが教師共にバレたらクラス代表のお前が責任を負うことになるぞ?」
「・・・それは・・そうなんだけど・・」
「大丈夫大丈夫。青山はバレないよ・・・絶対に」
あ、次に田口が口にすることが分かったわ。王道過ぎて読めるわ。
「この事をバラそうとする奴は俺が制裁を下すから。あ、万が一ばらした奴もね。」
「まぁ、この教師は放任主義、自己保身の教師ばかりが多いと、
この一ヵ月で分かったからバレてもそこまで大きな問題にはならないだろう。」
ほーん、それなりに調べてるのね感心だわ。こりゃ、ばらしても田口には大したダメージを与えられず、
制裁という名の暴力が始まるな。
「なるほどな、しっかり調べてるのな。こりゃ逃げ道はないわけだ。」
「そうそうだから橘君。君もいい加減反抗的な態度をとらないで僕に従いなよ。な?」
俺と瞬は、アイコンタクトをして、鞄に荷物を詰める。
「・・・なぁ田口?今日はもう帰らないか?みんなも心の整理が必要だろ?俺もお前の衝撃告白にドキドキが
止まらねんだよ。ドキドキしすぎて吐き気がしてるわ」
「・・・そうだね。おいお前ら、度を開けてみんなを帰らせてやれ」
田口の声の元、ドアを塞いでいた手下は出入り口を開放する。
みんなが教室を出る中、青山は少し苦しそうに俯き、田口と不良二人は俺の顔を見ながら何か話していた。
様子を見る限り、青山は今の現状を納得していない様子。だが、力が無いにしろ何もしないのは論外。
田口の言う通り、自分で好きなように環境を変えるのは間違いではない。だが・・・
みんながみんな、田口の行動を許容できるわけではない。
・・・うっとうしいな・・・・・そろそろ・・・・
『潰すか』
次の日の放課後、田口の呼び声によって同じように教室に残された。何故か俺と、瞬だけ。
「ごめんね~橘君、伊藤君。また残ってもらっちゃってさぁ。」
「御託はいい。さっさと話せ田口。こうも連日帰りに足止めされてこちとらイライラが溜まってんだよ」
俺が威圧を加えて田口に返すと、田口の手下二人が反応して前に出る。それをすぐさま田口が視線を送り静止させた。
「おー怖い怖い。じゃあ要件をいうね。これはラストチャンスだお前ら二人俺の部下になれ。今なら特別に今までの態度に免じて幹部あたりにしてやる。悪い話じゃないだろ?」
「幹部の扱いは特別待遇。俺の邪魔さえしなければ何もしないし、お前が望めば出来る限り叶えてやろう。金も女もな。
どうだ?」
「・・・・・・」
「いい加減、このやり取りも飽きたろ?最高な条件を出してんだ。いい加減ここで手を打てよ。な?
・・・今ここで答えろ、、橘。伊藤。」
有無を言わせない態度で意を示す田口。別にそこまでしなくてもいいのに。
俺も瞬も変わらないよ。
「田口・・・答えはNOだ。もう答えを出したんだから俺と瞬にかかわるな以上。帰るぞ瞬。」
俺の言葉を合図に手下二人が動き出し、後ろから俺と瞬は蹴られて机を倒しながら倒れる。普通に痛いわ。
横でチラッと瞬を見ると微妙に口角が上がり喜んでいるように見えた・・・Mかよ。
「交渉決裂だね~。じゃあ、そういうことで・・・おい、こいつらを溜まり場まで連れていけ。
青山、お前は電話であいつら全員呼べ。来ない奴は制裁と伝えればほとんど来る。」
そんな流れであっという間に俺と瞬はある溜まり場に連行される。
周りを見れば、田口達に加えて他の不良数名、それに・・・同じクラスの男子?
ほーん・・・なるほど。
「じゃあみんなに集まってもらった事だし始めよっか。お前ら、同じクラスだからって加減するなよ。
頑張ったらご褒美あげるから。」
田口の言葉を聞き、クラスの奴は田口同様不敵な笑みを見せる。
その顔はダメだろ。・・・アウトだ
確かに多勢に無勢。相手はざっと数えると二十以上。こちらは二人。
簡単にリンチの絵図が想像できるもんな・・・問題ないけど。
そんなことよりさっきから離れた所の視線が気になるな・・・
俺が視線に意識を向けていると急に拳が俺の顔面に入ってきた。
俺は数歩後ろに下がり耐える。瞬を見ると同じように殴られていた。もうちょっと耐えてねー。
それから十分ほど殴られ続けた俺達。
こんだけな殴られたらいいだろ。普通に痛いし。
俺は小声で瞬にアイコンタクトを送る。俺の意図を理解した瞬は満面の笑みになる。余程我慢の限界だったんだろう。
俺は服に付いた砂を払いながら立ち上がる。
「おいお前ら。これだけ殴られたから正当防衛は成立する。よってお前らを半殺し以上にしても俺らは罪はない。
覚悟しろよ。一人も逃がさねえからな・・・くそ共が!」
俺の言葉を合図に瞬が走り出す。
勢いを右手に乗せた瞬は、一人のクラスメイトに狙いを定め渾身の右ストレートを放つ。
瞬の拳によって吹っ飛ばされた男は鼻を抑え蹲る。小さくすすり泣く男。その鳴き声は戦意喪失を表す。
周りの者が驚愕する中、瞬のとった行動は追い打ちだった。
瞬は蹲まっている男を無理やり立たせ、右拳を相手の顔へと何度も放っている。
周りの者は、瞬の満面の笑みに恐怖を覚えてしまい動けなくなっていた。
「たった二人になにビビってやがるお前ら!さっさとやれや雑魚共が」
「雑魚はお前だろ田口?」
「あ?っ!!!」
俺は田口の顔面をビンタする。
「数が多ければ勝てると、安直の考えで行動してたのはおまえだろ?
こんな喧嘩慣れもしてない素人を集めたとこで意味はないんだよ。」
また田口にビンタする。
「それにこの統率力の無さ。見てみろよ。瞬にビビって結構な人数は逃げたぞ。」
さらにビンタする。
「ハリボテの王様さん」
俺は前蹴りで吹っ飛ばす。
数歩下がった田口、俺のビンタによって流れている鼻血を気にせず鬼の形相で俺を睨む。ふむ、予定どうり。
「黙れやゴラァァァァ!!」
田口は大振りの拳を振り回すが俺はたやすく躱す。
「田口、俺は別にお前を全否定するつもりはない。自分から進んで理想を作る、自分の力で手に入れようとする。
俺はお前の行動力に感服する・・・だけどな田口。」
田口の大振りを下へと躱し、田口の顎に掌底を入れてひるませる。
「許容を強要することは間違っているんだよ。」
俺は左ストレートを顔面に入れて田口の意識を刈り取った。
「ふう。・・・いつまでも盗み見してんじゃねえよ」
足元の石を拾い、少し離れた木に向かって投げ込む。
すると枝から勢いよく一人の女性が落ちてきた・・・やっぱりあんたかよ。
「やっと会えましたねー。聞きたいことが山ほどあるんですけど・・・先輩」
目の前の女性は、霧島 雫(きりしま しずく)
俺の知り合いで俺をこの学校に誘ってきた先輩だ。
「いやー久しぶりだね大地。まさか私の存在に気付くとは・・褒めて遣わす!!・・・そして合格」
ん?・・・合格?
「取り敢えず明日理事長室に来て来て。全部話すからさ。後の処理はこっちに任せて帰った帰った。」
そう言って先輩は俺の背中を押して帰りを促す。先輩の後ろから数名の生徒が確認でき、全員が『裏』と書かれた腕章を
着けているのが確認できた。
先輩の言う通り帰ることにした俺は、返り血を顔に浴び満足げに座っていた瞬と帰宅した。
次の日、早めに家を出た俺は理事長室に向かった。
ノックをし、返事と共に中に入る。中には足を組み長椅子に座っていた先輩がいてたので対面に座る。
入学して約一ヵ月、ようやくちゃんと会うことが出来た先輩に俺は少なからず緊張を覚えるとともに話を聞く。
「改めて入学おめでとう大地。ホントは早く会いたかったんだけどこっちの都合で会えなくてごめんね。」
「今こうやってちゃんと会えたので大丈夫です。では先輩いくつか質問です。
まず、先輩は何者なんですか?」
「私は裏生徒役員だよ。表立って公表はしてないけど学校内の不安要素を取り除くのが仕事。
まぁ、知られていない風紀委員みたいなもんだよ。
あ、ちなみに田口君は前からマークしてて昨日の行動が決定打になったよ。今は他にも余罪がないか事情聴取中。
他にも脅されていたとはいえ、暴行を振った生徒も一緒ね。」
「なるほど・・・ちなみに俺と瞬もなにか罰せられます?」
「いや、君たちは正当防衛として通っているよ。作戦どうりでよかったね。でも伊藤君はギリギリだよ。
返り血浴びまくってて、すっごく笑ってるんだもん。しかも伊藤君が相手した相手は重症だし。」
「それに関してはすいません。あいつはバトルジャッキーなのでやりすぎてしまうんです。注意しときます。」
「先輩最後の質問です、昨日俺に合格と言いましたね。その言葉の真意を教えてください。」
先輩は真剣な眼差しをこちらに向ける・・・
今更ながら先輩の容姿を説明しよう。黒髪ロングでポニーテール。身長は俺より低いものの平均女性より高いであろう。
顔は整いおっとりした表情が良く見られ、周りに癒しの雰囲気を作り出している。
体のラインは出ている所はしっかり出ており、細い腰回り。全体的にみると落ち着いたお姉さんって感じだ。
つまり何が言いたいというと、、
急な真剣な眼差しの表情にギャップを感じて――見惚れてしまった。
「私達は生徒会。だが、一般的な生徒会と違って表立って行動はしない。裏で支え、陰で行動する生徒会。
そう、私達は『裏生徒会』だ。」
「私達の仕事は簡単に言えばもう一つの風紀委員だよ。」
「風紀委員?」
「そう。まぁ実力行使で田口君のような不穏分子を排除する仕事。そして冷静を忘れない事。
昨日の大地の行動を見る限り実力は申し分ないし、自制もしっかりできている。どうかな?入らない?
ってかぶっちゃけここに入ってもらうためにこの学校に誘ったんだけどね。」
俺は少し考える。先輩は裏生徒会に入れるためにこの学校に俺を誘った。
つまりそれは・・・
「先輩、この裏生徒会は・・・俺の望んでいるものはありますか?・・・」
この学校に俺を勧誘するとき先輩は俺に言った。
『こっちの学校に来ない?大地の欲しいもの、きっと見つかるよ。』
その言葉をきっかけに、この学校へ入学した。
昔っからの付き合いがある先輩の言葉ってだけで何の保証もない。
でも俺はその言葉にすがりたかった。それほど存在して欲しかった・・・あって欲しかった。
「ここには・・・『熱中』できるものはありますか?」
幼い頃から夢中になれることはなく、瞬と知り合い喧嘩ばかりの日常。
初めの頃は、刺激が良かった。負ける事は多々あり、僅差で勝てたことは喜んだ。
しかしその感情も回数が増える事に薄れていった。そして今では、『面倒』になっていた。
俺は退屈していた。そんな時先輩が誘ってくれたんだ。
「あはははは・・・大地君、、あるよ。裏生徒会は忙しいんだよ。悪い生徒はたくさんいる、仕事はたくさんある。
『退屈』なんて暇はないよ。だからきっと『熱中』できるよ。」
自然に口角が上がる。あぁ、久しぶりの感情だ。でも期待してしまう。
あるかもしれない可能性ってだけで俺は・・・
「わかりました霧島先輩。俺は裏生徒会に入ります。・・・そして俺は『熱中』するものを必ず見つけます。」
霧島先輩の目を真っすぐ捉えて言葉を発する。
俺は鏡を見なくても自分の表情を想像できる。子が親から欲しがっていた玩具をもらって喜んでる様子だ。
つまりあれだ、子供のように瞳を輝かせている。
その表情を微笑ましく見た霧島先輩は優しい口調で
「うん、改めて裏生徒会にようこそ大地。これからよろしくね。」
霧島先輩の優しい表情に見とれて固まってしまった俺を見て、先輩はクスッと笑い
俺の手を優しく引っ張り歩みだした。
俺は頬に熱を帯びたまま、そしてこれからの高校生活に期待を持ちつつ先輩の後に続いた。
完結
俺の青春時代は有意義な時間 玉城裕次郎 @tamadora
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