物語を作ろう! 二

渋谷かな

第1話 二

服部十郎の研究室。

「ジンカンが動き出した。」

「ジンカンが!?」

 服部の言葉に驚く夢人希と望の兄弟。

「そうだ。人の心を無くした者ジンカン。奴が動き出した。」

 悪のボス、ジンカンは昔は人間であった。

「私たちの親の仇だ! 絶対に許さない!」

 希と望の親はジンカンに殺された。

「家なき子となった孤児のおまえたちを日本国家の秘密組織ハベルシノビが保護し、侍忍者になるべく訓練した。」

 二人は孤児でハベルシノビに拾われ戦士として育てられた。

「今となっては、おまえたちを戦いに巻き込んでしまったのかと後悔する時がある。平和な世なら幸せに暮らせたのかもしれない。」

 服部は二人を戦士に育てたことを少し後悔していた。

「大丈夫ですよ! 私と望は強い! なんてったって、二人で希望ですから!」

「孤児だった俺たちを拾って育ててくれて感謝しています。希とも血のつながりはありませんが、ハベルシノビで育った仲間はみんな兄弟です。失くした家族を作ってくださりありがとうございます。」

 ジンカンに親を殺された孤児たちはハベルシノビで兄弟同様として育てられてきたことに感謝している。希と望も赤の他人でハベルシノビで兄弟として育ってきた。

「そうか。そうだな。そう言ってもらえると気が楽になる。」

 二人の言葉に心が軽くなる服部。

「でもジンカンは何がしたいんだろう?」

「世界征服? 人間皆殺し?」

 ジンカンの求めうものはいったい何なのかは分からない。

「申し訳ないが、二人に任務だ。そろそろヤンキーたちの中に人間の心を無くし、人魔に変化する者が現れるだろう。それを滅して欲しい。」

「はい。分かりました。任務なら思う存分、斬り刻めるわ! アハッ!」

「この悪魔め。」

 希は好戦的で、望は控えめだった。

「望、なんか言った?」

「なんも言ってねえよ。」

 二人は仲良し兄弟であった。

「いざ! 決戦の地へ!」

「ただの学校だ。」

「うるさい! 弟の分際で!」

 希と望はヤンキーたちの元へ向かう。


 ヤンキーたちがいる学校の体育館の裏。

「ウワアアアアアー!?」

 突然、ヤンキーの一人が苦しみだす。

「おい!? どうした!?」

「ギャオオオオオオー!」

 ヤンキーの姿が内部破裂するかのように膨らみ化け物に変わっていく。

「化け物だ!?」

「なんだ!? こいつは!?」

 ヤンキーたちが初めて見る化け物に驚愕する。

「人魔。」

 そこに希と望が現れる。

「ヒトマ? なんだぞれは?」

「人間の心を無くした者。」

「希、国家の秘密情報をペラペラしゃべるな。」

 口の軽い希を望が注意する。

「平気よ。だって、こいつら、みんな死んじゃうんだから。」

「ウギャアアアアアー!? 助けてくれ!?」

 他のヤンキーたちも苦しみだした。

「人魔が共鳴しているのか!?」

「そういうこと。こいつらも苦しいんだよ。若くして人の心を無くして生きていくのが。」

「ガオー!」

 ヤンキーたちが全員人魔に変化してしまった。

「私が楽にしてやろう!」

「希? おまえ何だかワクワクしてないか?」

「ワクワク? してないよ。アハッ!」

 言葉とは裏腹に希の表情は笑顔で喜んでいた。

「いでよ! 夢の妖精の鎧! フェアリー!」

 どこからか鎧が現れ希に装着していく。

「侍忍者フェアリー! 華麗に参上!」

 希は侍姿に変身した。

「成敗してあげる! キャッハッハ!」

「おまえは狂気か。」

 戦闘にワクワクしている希に呆れる望。

「ガオー!」

 迫りくる人魔たち。

「無理するなよ。希。」

「大丈夫。望。あなたがいてくれるから。」

 希と望は互いに信頼し合っている。

「あなたたちはもう死んでいる。」

 刀を鞘から抜き握りしめる希。

「いくよー!」

 その場から希の姿が消える。まるで忍者のように。

「でやあー!」

 そして一体の人魔に斬りかかる。

「ギャオー!」

 人魔を斬り倒した。

「次! 次!」

 希は次々と人魔を斬り続ける。

(さすが希だ。侍忍者の特性をよく理解している。侍の剣術と忍者のスピードを生かした攻撃だ。)

 望は希の活躍する姿を安心して見ている。フェアリーの鎧は背中に羽があり空を飛ぶことが出来る。機動性に優れた鎧である。

「ラスト!」

 他の人魔を全て倒し、最後の人魔に斬りかかる希。

「グニャ。」

 しかし人魔は斬れなかった。

「なっ!? 斬れない!? こいつはただの人魔じゃない!?」

「変異種だ! 希!」

 人魔の変異種。ヤンキーやヤクザのように人の心を無くした者。それが化け物に変わったのが人魔という化け物。人魔はただの雑魚である。しかし人魔で悪いことをし続ければ変異し特殊な能力をもつ人魔に進化する。

「その人魔はスライムだ。」

「ええー!? スライム!? 全然可愛くない!?」

 望のスライムのイメージは可愛いものだった。

「スラスラ!」

 スライムがゼリー状の体の一部を投げつけて攻撃してくる。

「ギャア!?」

 俊足でかわす希。

「やったな!? 覚悟するがいい! 私に斬れないものはない! キャッハッハー!」

 スライムに気合を入れて斬りかかる希。

「秘剣! 夢妖斬!」

 夢の妖精フェアリーが斬りかかる望の必殺技は人魔の心を幸せにして解き放つ技である。


 ヤンキーが人でなくなった瞬間。

「痛い!? ぶたないで!? やめてよ!? お父さん!?」

 理不尽にヤンキーくんは家庭でお父さんに暴力を振るわれていた。痛みも知っているが一方的に弱い者を殴り喜んでいる父親の姿も知っている。

「どうしてお母さんは助けてくれないの!?」

 そして傍観者の母親も自分が旦那に殴られたくないので、殴られている息子を助けなかった。

「オラオラ! 俺はヤンキーだぞ! いじめでも校内暴力でも何でも悪いことをやってやる!」

 こうしてヤンキーは出来上がるのであった。


 再び現実へ。

「あなたも辛かったのね。」

「そうなんです。」

 人ではない人魔になってしまったヤンキーの生い立ちに同情する希。

「でも、自分が嫌だったことを、自分より弱い者や抵抗しない者にやってはダメでしょ。」 

「はい。すいませんでした。」

 反省を口にするヤンキー。

「今度生まれ変わったら人としてちゃんと生きてね。」

「ありがとうございます。」

 分かりあえた希とヤンキー。

「成敗!」

 きれいに人魔を切り裂き消滅させる。

「ふ~う。私にかかればイチコロよ。どんな人魔も一撃必殺! ジンカンだって私がぶった切ってやる! キャハ!」

 ついにここまで来た。エヘッ、アハッ、そしてキャハ。笑いの三段オチ。キャハが一番のワクワクした狂気の笑い方。

「危ない!」

 その時、どこからか希に向けて手裏剣が飛んでくるのを望が察知して叫ぶ。

「キャア!?」

 調子に乗って騒いでいた希は望の声で手裏剣に気づき間一髪のところでかわす。

「かわしたか?」

 そこに男が姿を現す。

 つづく。

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