物語を作ろう。始

渋谷かな

第1話 始

侍とは刀と鎧を装備して正々堂々と戦う者。

忍者とは諜報や暗殺などの隠密活動を主とする者。

もし侍と忍者が1つになったら最強の戦士になるだろう。


 渋谷。スクランブル交差点。多くの人が行きかう。多い時は一度の青信号で3000人が渡る交差点。なのに日本人の美徳だろうか、行きかう人同士はぶつからないでかわしていく。

「痛っ!?」

 しかし中には無理やり他人にぶつかり自己のストレスを発散しようとする者もいる。体格の良いヤンキーかヤクザの様な男。

「すいません。」

 弱そうな今時の普通の悪ブレない青年。

「すいませんでは済まないんだよ!」

「ギャア!」

 次の瞬間、ヤンキーがナイフで青年を刺し殺す。

「ムカついたら相手を殺していい! なんて最高な世の中なんだ! ワッハッハー!」

 殺人国家日本。もし刀狩りが行われていなかったら危ない人間は、もっと危ない人間になっていただろう。

「・・・・・・。」

 その光景に慣れ過ぎた通行人の老若男女の人間たちは悲鳴をあげることなく、関わらないで自己の安全だけを確保するように足早にその場を立ち去るだけ、決して他人を助けようとはしない。

「強ければ人を殺そうが許される! お金も女も思いのままだ! ワッハッハー!」

 こういう常識がない殺人鬼が多々歩いているのが日本である。アメリカの銃の乱射事件と同じ惨状。

「ブシャ!?」

 次の瞬間、ヤンキーが何者かに斬られた。

「ギャアアアアアアー!?」

 真っ二つに体が離れていき血を噴き出している。

「何が起きたの?」

 平然と見物している人々も早すぎて姿は誰にも見えなかった。

「確かにおまえは強くなかった。」

 腰に刀を差している一人の少年が普通に歩いて去って行く。


 侍忍者、希と望。


 東京都渋谷区。渋谷高校。体育館の裏。

「オラオラ!」

 高校の不良ヤンキーたちが一人の少年を一方的に殴りいじめている。

「ビビってんのか? やり返せる者ならやり返してみろよ!」

「ワッハッハー!」

 1人に対し大人数で反撃できない、されないようにして、いじめ続けるヤンキーたち。

「・・・・・・。」

 少年の名前は夢人望。彼は抵抗もしないが何も言わない。

「こいつ、気に入らねえな。生意気なんだよ!」

「やっちまえ!」

「さすがに殺すと退学になるから、半死で止めといてやるぜ! オラオラ!」

 いじめや暴力を悪意を持ってするようになると人間の心は既にない。こんな十代の若者は将来ロクな大人にはならない。

「・・・・・・。」

 望は一方的に殴られ蹴られる。

「やめなさいー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 そこに一人の少女があり得ないスピードで怒りながら駆けてくる。

「ゲッ!? 希だ!?」

 ヤンキーたちは慌てふためく。

「逃げろ!? 殺されるぞ!? ギャアアアアアアー!?」

 そして多勢に無勢のヤンキーたちは一目散に逃げだした。

「まったくあいつらめ。また半殺しにしてやる。」

 少女の名前は夢人希。なぜヤンキーたちが逃げ出したのか? それは以前に彼女が一人でヤンキーたちを全員半殺しにして病院送りにしたからである。

「希がやるから、兄弟っていうだけで俺が仕返しされるんだけど。」

 それが望が集団リンチを受けていた理由であった。希と望は兄弟であった。

「あいつらが先に私にケンカを売ってきたのよ! 私は悪くない! やられたら、やり返す権利が与えられるのよ!」

 希の考え方である。

「望もなんでやられっぱなしなのよ? あんな連中、一瞬で倒せるでしょ?」

「いじめや暴力を振るうとあいつらと一緒になってしまう。嫌だね。人の心を無くして悪魔になりたくはない。」

 望はプライドが高かった。

「人魔(ヒトマ)ね。私も嫌だわ。」

 人間の心を無くし暴力やいじめを行える者。姿は人間ではあるが心は人間ではなくなっている。


 渋谷高校。授業中の教室。

 キーンコーンカーンコーン!

 終業のベルが鳴る。

「じゃあ、授業を終わります。あ、夢人希と望は私の研究室に来てくださいね。」

 教師の服部十郎に呼び出しを食らう希と望。

「はい。」

 教師から呼び出しを受けて目の色が変わる二人。

「あんたのせいよ! 先生にヤンキーとの抗争がバレたのよ! どうしてくれるのよ!」

「自業自得だろ。こっちの方が迷惑だ。」

 まるで他の生徒の目を誤魔化すかのように大袈裟に兄弟ケンカする夢人兄弟。



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