独り言と言う名の、穏やかな慟哭

『彼女』は、死んでしまった『知可子さん』について語り尽くします。
『少年』の隣で。声が枯れるまで。
それはもう、穏やかな慟哭のようにも思えて。

彼女は、淡々と二人の人生をなぞっていきながら、そのときの思いを嬉しそうに告げます。死にゆく彼女に対するあらゆる感情がリアルで。胸が切なくなりました。

知可子さんは、なにも残さずきれいさっぱり消えてしまったのかな。
私にはどうしてもそうは思えず、文章の端々にその存在を探してしまいました。
読後、とてつもない量の妄想が降ってきました。
「これは、こういう意味なんじゃあないか」
「あれは、こうなったのではないか」
こういう想像を掻き立てる余白の置き方が素晴らしいです。

シーン切り取りタイプの短編と言えば、どの部分を切り取るかと言うところにフォーカスを当てることが多いと思いますが、この作品はどうやって切り取るかに重きを置いているように思いました。それこそ、はさみなど使わず、素手で切り取ったような。
彼女も知可子さんも美大生でしたから、そう言うこともやりかねないなと思いました。