第5話 優等生の告白

大樹と、ラジオの話で打ち解けた果実は、あれ以来、大樹と結構話す時間が多くなっていた。

「ねぇ、飛田ってさ、〔君色ノイズ〕でラジオヲタクのメッセージあったじゃん?ラジオヲタク女子、どう思う?」

わざと自分は”お昼のお月さま”ではない、と言うようなニュアンスで、大樹に話を振った。

「俺?別に何とも。どちらかと言うと…」

「…どちらかと言うと?」

「女子みんなラジオヲタクであって欲しい」

「…ぷっ」

「ん?」

「ううん。何でもない。ありがとう」


大樹は、なんの質問だったのか、分からなかったが、果実が近づいてきてくれてるようで、嬉しかった。その高揚感は、ある日弾ける。



3か月後、月曜日。

【今夜の一通目は、あ、お久しぶりですね。お昼のお月さまさんから。

〈輝さんこんばんわ。最近気になる人が出来たんです。ずっとコンプレックスだったラジオヲタクを良いじゃんって言ってくれる人が現れたんです。その人も〔君色ノイズ〕のリスナーで、輝さんにメッセージを読まれた事があると言ってました。

そのせいか、今夜の投稿は緊張しました。でも、初めての事で、○○ノイズとはっきり言えないと言うか、表現できない出来ない感情が暴れてます。

このノイズの解決策ないでしょうか?〉

うん。うん。そうなんですね。はっきり言えない、表現できない、これはまさに…”恋ノイズ”じゃないでしょうか?

恋に答えも形もありません。

お昼のお月さまさん、臆病にならずに、まだ、16歳ですし、素直にトライしてみてはいかがでしょうか?

そんなお昼のお月さまさんにはこの曲を。あいみょんで”恋をしたから”】





月曜日

「おはよう果実」

「あ、おはよう、華乃」

「ん?なんか顔つき怖いよ?」

「え?本当?」

(緊張するな!)

果実は自分に一括した。

この前、果実側だけが夜中ど真ん中。が大樹だという事に薄っすら気付き、大樹はまだ何も知らない。

けれど、あれ以来気軽に話が出来るようになった2人は、大樹が望んだような、友達としていられるようになった。


そして、3ヶ月、かかった。

果実が自分の気持ちを伝える勇気を蓄えるのに。


果実は、今夜、〔君色ノイズ〕で告白しよう、と決心していたのだ。


「はよ、遠藤!」

「!あ、おはよう」

「なんだ?かたいな!」

「ねぇ、飛田」

「ん?」

「今夜、〔君色ノイズ〕、絶対聴いてね」

「うん。当たり前じゃん!」

「…うん」





時計は午前1時を指した。

「こんばんわ。川原輝です。今夜もあなたのノイズ聴かせてください。夜が明けたら、優しいメロディーが流れていますように。

早速1通目読みたいと思います。

先週に引き続き、お昼のお月さまさんから。

輝さん、こんばんわ。

私事ですみません。先週輝さんにこれは恋ノイズだと言われ、薄っすら分かりかけていたところに、輝さんの押しがあったから、気が付く事が出来ました。実は、私の好きな人もこの〔君色ノイズ〕のリスナーで、メッセージも何度も読まれてる人なんです。その人に、今夜伝えたい事があります。

私は夜中ど真ん中。さんの事が好きです。私と付き合ってください!

もし、OKなら、番組放送中にメールください。お願いします!お昼のお月さま改め、遠藤果実〉

…はい!と言うメールでした。夜中ど真ん中。さん、ぜひメール、お待ちしてます】


(え!?遠藤!?今の俺へ!?うわー!!まじかー!!)

驚きと喜びでメールを打つ手が震えて中々うまく打てない。


【あ、今、夜中ど真ん中。さんから返事、来ましたよ。果実さん!

僭越ながら、代読させていただきます。

{遠藤、ほんの、つい、ほんと、さっき言われたから驚いたけど、ずっと片想いだと思ってた。マジで嬉しいです。僕で良かったら、こちらこそよろしくお願いします。そして、僕だけじゃなく、遠藤もだと思うんですけど、輝さんのアドバイスのおかげです!本当にありがとうございます!}

わーー!!すごいですね!!番組内から素敵なカップル誕生です!

お2人とも仲良く、ラジオも今後ともよろしくお願いします!じゃあそんな2人にはこの曲を。aikoで”星のない世界”】



aiko”星のない世界” 歌詞 抜粋

【とても大事な宝物をあたしはやっと手に入れたんだ

 胸が病みそうで不安におぼれそうになったら

 まっすぐにあなたを思い出すよ】

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メモリアルパラダイス 君色ノイズ @m-amiya

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