魔王の身体測定 1
『《狐舞サキ/白花さげ/萌乱真来》魔王vs
「お疲れ様でーす、ってうわぁ」
「サキ遅い。もう配信始まってる」
「着替え要らずとは便利だなこれ」
なんかタブレットみたいなのを持ってるさげちゃんはいつも通り白衣に似た雰囲気の法衣を着ていることもあって研究者感がすごい。
真来ちゃんはいつもの鎧ではなくラフなシャツ姿、というより体操服に近い感じ。
「てか何この衣装知らないんだけど」
「今回のためにスピカ先輩が用意してくれたらしいぞ。相変わらず仕事早いよな」
「一応先輩なんだから敬語」
「おい一応ってなんだ」
そして何故か私の衣装も動きやすい恰好に。ていうか呼び出された本社の体育館に入った瞬間に着替えさせられた。ほんとにうちの会社は息をするようにオーバーテクノロジーを開発しまくりやがる。
「それで、今日はなんで私を呼び出したの?何するか全く聞いてないんだけど」
「スピカ先輩が言ってた、うちに魔王の身体能力の研究をさせてくれるって約束したって」
「えぇ……それゲームの中での話じゃ……」
「そういえばお友達のアレが中々にピンチで」
「全力で協力させていただきます」
おい何やってんだ梨沙。レポートちゃんと提出したんじゃないのかよ。
「てことで今回やってくのは!!ぶっちゃけ戦士のあたしでも身体能力だけなら魔王に勝てる説~!!!」
「おお~」
【コメント】
:無理だろ
:まださげちゃんの知力の方が可能性あるぞ
:何気に真来ちゃんの運動スペック発揮する機会なかったからな
:何故無謀な戦いに挑むのか
:こんなに結果が見えてるの中々ない
ハイテンションの真来ちゃんとは対照的にあまり期待していなさそうな様子のさげちゃん。
私だってあんま期待してないよ。
「一応言っとくけど私、高校までめっちゃ運動部だったし最近また運動始めたから多分結構いけるよ」
以前のスポ〇チャやリン〇フィットで運動不足を実感したからね、最近は配信でまたリン〇フィットやったり定期的に走ったりしているのだ。やっぱ基礎体力なんてあればあるほどいいからね。
「あっ……じゃあ今回の配信はここまでということで」
「そもそも真来が魔王に勝てるなんて思ってない。ハナから当て馬程度にしか思ってないから気にしなくていい」
「さげ!?」
サラっと毒を吐くさげちゃんにツッコミを入れる真来ちゃん。仲いいなぁ。
そういえばしばらく同棲してたんだっけ?いいなぁ。
「はい、じゃあ早速やっていく。とりあえず身体測定から。二人ともこれ乗って」
さげちゃんがタブレットを操作すると、学校とかでよく見る身長体重を計測できる装置が出現。
もう今更そんなことにツッコむはずもなく、とりあえず大人しく乗ってみる。
……さっきお昼ご飯食べてきたから体重心配だなぁ。
「えーと。真来は身長160の体重61か。まぁ筋肉の重さってことにしとこう。それに対してサキは身長165の体重50と。こんなデカいもん引っ提げて筋力もあってこのBMIって何。ふざけてる?」
「筋肉は量じゃなくて使い方なんだよさげちゃん」
「限度ってものがある」
【コメント】
:相変わらずの謎ボディ
:リン〇フィットの時にある程度のスタイル割れてるから疑う余地ないのやばい
:同じ女としてすごくつらい
:なんか魔力とかでズルしてんじゃねえの
:真来ちゃんこれで筋肉なかったらある程度のデブ確定するんだよなぁ
心底呆れたと言わんばかりのさげちゃんはまたタブレットを操作して体重計を消し、次は握力計を三つ出現させる。
「じゃあ次は握力。言い忘れてたけど今回は新体力テストの項目のスコアで勝負する感じ。直接戦う感じだと真来の命が危ないから。ちなみに比較として、うちは……よいしょ、右も左も両方20。まぁ普段運動とかしない女子ならこんなもんでしょ」
「「え?」」
にじゅう?
確かに普段運動しないならこんなもんなのか……?いや、隣の真来ちゃんもぽかんとしている。多分さげちゃんがおかしいだけなのであろう。
「ほら、二人とも」
「あっはい」
まぁいい。とりあえず本気で……。
「えーっと……真来が右55で左50か。へぇ、戦士名乗るだけあって強い。それでサキは……え?右68で左66……??えゴリラ?」
「いやキツネじゃい」
「あたしより握力強い人中々いないんだけどなぁ」
【コメント】
:おいマジか
:街で出会っても握手とかせがんだらダメだぞ
:さげちゃん困惑してて草
:何気に数字初公開か
:確か成人男性の平均でも50弱じゃなかったっけ……?
「とりあえず握力はサキの勝ちか。じゃあ次は上体起こし。うちが足抑えてカウントもするから二人同時にやっちゃって」
「はい」
なんかこう、さげちゃんの言葉って逆らい難い何かを感じるんだよな。
実際の先生だからっていうのもあるけど、今は可愛い賢者の見た目なのに学校の先生の指示で新体力テストをやってる気分になってくる。
「じゃあ……スタート」
「そういえばこれ配信してるんだっけ?絵面的に地味すぎない?大丈夫?」
「確かに、こういう配信って運動できない人が苦労してるのを見るのが醍醐味だよな。てことでさげも一緒にやろう」
「やらない。そもそも今日はうちがサキの身体能力の研究をするついでの配信。当て馬如きが調子に乗るな」
「言葉強くない!?」
大人しく言うことを聞いて仰向けで上体起こしを頑張る私たちの足の上にさげちゃんが重しを生成、それで抑えながらカウントしてくれているといった構図だ。
自然と私たちを見下すような構図になっているのも相まって圧がすごい。
「はい終了。真来が38回で、サキが45回と。今んとこ見せ場皆無だけど真来恥ずかしくないの?」
「いやあたしの記録だって普通なら余裕で満点だからな!?1秒に3回やってるサキ先輩がおかしいだけだからな!?」
「サキの記録じゃ1秒あたり1.5回でしかないよ。算数くらいできるようになってから吠えたら?」
「なんかこうアレだね、さげちゃんの吐く毒ってアリシア先輩のと違って的確に人のメンタルを削りにいってるよね」
つづく
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アトガキ
今回からのお話、正直作者の中でサキのスペックをある程度固めるために書いてるみたいなとこある。てか普通に考えてサキの体重軽すぎ。筋肉どこ行った。
器用貧乏な私、VTuberになって… ユエ・マル・ガメ @yue-twitter
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