第304話 帝都観光
「うーむ。帝都、正直嘗めてたわ」
気持ちを切り替えて、トールと帝都を回ってみると結構というかかなり悪くない。
大陸最大の国の大都市なだけあって、色々な文化が流れて融合してる様も面白い。
見てるだけでも楽しいのだが、並んでる商品も面白いものが結構あった。
今食べてる中華まんなんて、家で作るのとは違った美味しさがある。
「早速良いお土産が出来そうだ」
中華まん自体のバリエーションは普通の中華まんからあまりバリエーション自体は多くないが、それでもクオリティが高く、また外で食べるシチュエーションも相まってかなり美味しく感じる。
「アイリスが喜びそうなものが多いですね」
さっさと食べ終わったトールは屋台のおばちゃんがオマケしてくれた梨のような果物をペロリと平らげる。
食べ姿ですら人目を惹くのだから恐ろしい男だ。
「カレーまんがないのが残念です」
「まだ香辛料はこっちじゃ高いだろうからな」
トールはプレーンな肉まん以外ではカレーまんを好む。
香辛料の類は俺の生まれ故郷のシンフォニアでは割と手に入りやすいので身内で楽しむ用にカレーまんは作ったのだが、そのうち落ち着いたら店にも並ぶようになるかな。
ピザまんやあんまん、豚まんなんかも作ってはみたけど、どれも評判は悪くない。
レイナはどちらかといえば普通の肉まんが好みのようで、セリィはピザまん、アイーシャはあんまんを美味しそうに食べてたな。
アイリスはプレーンな肉まん以外だと豚まんとか美味しそうに食べてたけど、どれも好きなようだし、今回のこの中華まんも喜んでくれるだろう。
「殿下が作った料理も流れてきてますね」
市場を見て、そんな事を呟くトール。
「良い事だよ」
美味しいものが広まれば、自ずとアイリス達とのデートで行ける場所も増える。
儲かるという打算もなくはないが、現時点で色々とやってても増えていく資産を前にするとむしろ死後に問題を残さないように上手く使い切りたくもなる。
「確か、店もこちらに出してましたよね」
「何軒かね」
一応、報告は受けてるしなるべく見に行くようにもしてるんだけど、出店数が増え過ぎててあまり顔を出せてないという現状もある。
それでも問題なく回ってるのは、最初に決めた責任者が頼りになるからだろう。
頼りすぎてもダメだろうけど、素人の俺よりも上手く回してるし、俺の方はおかしな点がないか報告を聞き、なるべく顔を出せるように頑張るのが懸命だろう。
なんにしてもこうして帝都にはあまり気軽には来れなかったし、来ても店に直接転移してしまうのでこうして自分の目で街を見て歩けるのは良い事だ。
「お兄さん。これいくつか頂戴」
気になる屋台には飛び込むべし。
俺のもっとうなので素直にその欲に従う。
「まいどあり。見ない顔だが観光か?」
「そんなところ」
「そうかい。悪いことは言わないからあまり裏路地には行かないようにな。表通りは警備の兵もいるから問題ないが、一歩裏に入ると絶対厄介事に巻き込まれるぞ」
厄介事というワードに思わずトールをチラ見してしまうと、向こうもこちらに視線を向けていた。
いやいや、お前の方が厄介事に愛されてるだろ?
『いえいえ、殿下の方が愛されてますよ』
数秒の攻防の末、互いに視線を戻して、不毛な戦いに終止符を打つ。
人間って愚か。
「忠告どうも。お礼にそっちのゴマ団子も貰うよ」
「お、まいど。ありがとな」
親切な屋台のお兄さんにお礼代わりに追加でゴマ団子も頼んでしまったけど、美味しそうだし仕方ない。
「あ、トール。麦酒みたいだよ。飲む?」
「それ聞きます?」
「まあ、我が騎士に自覚があるかのテストも兼ねてね」
「……外ではやらかしたら怖いので飲みません」
どうやら前に飲んで、酔っ払って嫁たちを大興奮させた記憶にない己を恐れてるようだ。
あれ以降、トールの嫁たちがトールに酒を勧めることも増えたなぁ。
「まあ、少し買っておこうか」
「殿下は飲まないですよね?」
「まだ子供だからね」
うん、分かったから子供アピールの度に『どこがですか?』という視線を向けないように。
少なくともこっちの世界での成人の15歳までは飲まないから子供ということで。
「冷やして飲むとかなり美味しいらしいから、フリーな日に飲みなよ。嫌いじゃないでしょ?」
露店の麦酒は冷えてないけど、ビールといえばキンキンに冷えてるものが美味しいらしい。
前世で飲む機会なんてなかったし、そもそも成人前に死んでるので酒の味なんて知らないのだが冷えたビールがやたらと美味しそうに見えたのは覚えている。
まあ、冷えた水には劣るだろうけど。
シンプルイズベスト。
全ての祖にして全能たるはやはり水。
水こそが全てを解決する。
そんな俺にやれやれと苦笑気味なトールだが、拒否は来ないので遠慮なく買い込んでおく。
飲める歳までは俺以外が飲むことになるのだろうが、楽しめる人が居るなら問題ないだろう。
酒以上に食べ物関連を買い込んでしまってるし、一緒に売ってた梨のジュースもなかなかいける。
アイリス達へのお土産と情報収集が捗って一石二鳥だね。
そんな事を思いながら、追加で買った小籠包を摘むのであった。
うん、これもいける。
砂漠の国の第2王子〜スローライフな日々をお求め〜 yui/サウスのサウス @yui84
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