第303話 帝国入り
トールを連れて、帝国へと転移する。
「皇帝とは会わないんですか?」
「会おうにも向こうもスケジュールがキツそうだしね」
挨拶くらいはしておきたいけど、今現在何やら皇帝やその周りは厄介事で少々大変らしいので無理をすることもないだろう。
教会からの今回の件は、帝国の皇帝を通して、シンフォニア、ダルテシアの両国王にも通ってるのでちょっと挨拶が遅くなるくらいは多めに見てくれるだろう。
「それに、会ったら会ったでトールと皇帝陛下は戦っちゃうでしょ?」
「否定はできませんね。あれほどの強者からの誘いは断れませんし」
断る気もないくせに。
むしろノリノリで付き合うでしょ。
普段ならそれが悪いとは言わないけど、今は明らかに不穏な空気のあるお誘いの前だしね。
「何かあった時、うちの騎士が暴れた後で大変なのが出てきたら困るし」
「その場合でも負けませんよ」
「知ってるよ。死んでも守ってくれるでしょ。だからこそだよ」
きっとうちの騎士はどんな最悪のコンディションだろうと、どんな最悪な状態だろうと必ず俺を守り抜くだろう。
それくらい信じてはいるが、無理してわざわざ窮地を作る必要もないしね。
「無理させてクレア達や大きくなったトリアに恨まれても困る」
最悪何がなんでも生き返られせるけど、このイケメンが死ぬところは正直想像つかないんだよなぁ。
「まあ、何もないのが一番ですが……殿下はこういった時に必ず何かを引き当てる星の元に生まれてますからね」
「そうか?むしろ俺はトール関連の可能性もあるんじゃないかと思ってるけど」
「例えばどんな?」
「……教皇のお孫さんがトールとの婚姻を望んでるとか?」
または教皇本人がトールをご所望とか。
「孫はとかく、教皇本人は男で妻帯者のようですよ」
「趣味は分からないからね。大人になったってことかも」
人の趣味というのは移ろうもののようだし、断定はできない。
それにこのイケメンの場合あまり性別は問題じゃないからなぁ。
「殿下まで呼んでる時点でそんな話ではなさそうですが……その場合もそのポジションは殿下になりそうですね」
「ないない。きっとお孫さんはトールに一目惚れするから」
「断言しないでくださいよ」
客観的に見て、トールと俺が並んで俺がトールより注目を浴びることは早々ない。
主従としてなら俺に向かってくる視線も分かるが、何も知らない状態で対面したらほとんどの相手はトールに視線が向くしそのままイケメンに魅了されるだろう。
「もう少し自己評価は正当にするべきですよ」
「かなり客観的に見れてると思うけど?」
地位的なものやブランド力で見られることはあるかもだが、素の魅力でこいつに勝てる道理はない。
アイリス達みたいに、俺本人を見てくれる人は稀だからね。
「はぁ……まあ、言っても意味ないかもしれませんが、殿下は素で十分にタラシですから」
「その根拠は?」
「僕らの存在ですよ」
……男をタラシ込んでもなぁ。
だからといってトールみたいに女からキャーキャー言われまくって辺り一面が常日頃から修羅場ってるのも嫌だけど。
普通が一番だね。
「まあ、何もないことを祈りつつ時間まで少し帝都を歩くとするか」
「それが一番の目的ですよね?」
「こういう機会じゃないと大手を振ってこれないからね」
転移で帝国には自由に来れるけど、シンフォニアやダルテシアのように大手を振って歩くにはちょっと面倒事も着いてくる場所だ。
なんちゃって王子らしく気にせずにいてもいいけど、好き放題し過ぎて家族に迷惑もかけたくない。
まあ、こちらで何かあってもあの皇帝なら問題にはしないだろうけど、万が一は考えておくべきだろう。
「ついででも、アイリス達との新しいデート場所の下見が今回の目的の大半だからな」
「清々しいほど殿下らしいですね」
「トールだって、嫁さん達とのデートとか大きくなったトリアと来る時のために参考にできるでしょ?」
「まあ、そうですね」
双子の嫁が増えたことだし、ケイトやピッケも子供を宿しているけど、落ち着いてから来ることもできる。
トリアだってまだ連れ出すには早いけど、大きくなってからトールが親子で遊びに来ることも出来るかもしれないしね。
「トリアへの良いお土産買えるかもよ?」
「まあ、それはそうかもですね。魔道具やベビーグッズは期待してませんが」
「厳しいね」
「殿下印でないものは期待できません」
父親のレビューが厳しすぎる件について。
まあ、俺も似たような評価を出してしまうかもだけど、専門職ではないんだがなぁ。
やっぱり人材育成をもう少し頑張るべきか。
民の基礎的な教養を高めるという観点だと、俺ではなく父様や兄様達の領域なんだけど、その辺は頼もしき家族がそのうち何とかするだろうし、そうなるように動いてるようなので心配はしてない。
俺が頑張るべきはそれ以外の細かな部分。
専門技能の学校とかあれば良いかも。
俺に子供ができるまでには形に出来ればなおよしだが、それは未来の自分に頑張ってもらうとして、今の俺はせっかくの帝都を楽しんで婚約者達とのデートの時にエスコートできるように下調べに徹するとしよう。
小さいことからコツコツとね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます