第4話家族と憎悪のルーレット

 魔術師・アマリオはいつも自分で頼る人を見つけるが、時に魔術師・アマリオの噂を聞きつけて彼の許へ訪れる人もいる。そんなある日、アマリオの所をある夫婦が訪れた。アマリオは客の訪問に興味を惹かれた。

「いらっしゃいませ。」

「あの、魔術師のアマリオさんのお宅ですか?」

「はい、私がアマリオです。」

「私はショウといいます。」

「私はショウの妻・リンです。」

「それで、お二人はどういった要件で?」

 するとショウとリンは、土下座をしながら言った。

「お願いします!!ヒロトを復活させてください!!」

「・・・それはあなた方の子供ですね?」

「はい、三ヶ月前に不慮の事故で亡くなりました・・・。」

「たった一人の息子なんです、どうか復活させてください!!」

 するとアマリオは、難しい顔で言った。

「復活させることはできますが、生贄が必要ですよ。」

「生贄・・・、一体何を?」

「死者と同じ血を持つ者・・・、つまり親か兄弟・姉妹でなくてはなりません。」

 その言葉にショウとリンは黙り込み、結論が出ずに今日のところは帰宅した。







 それからショウとリンは、誰が生贄になるかで言い争う毎日が続いた。

「あんた父親でしょ?だったら子供のために命を捧げるべきじゃないの!!」

「それは母親のお前も同じだ!!」

「子供を育ててきたのは私よ?だったら復活した子供のためにも、私が生き延びるべきよ。」

「俺だって子供を育てたさ、それに俺が生贄になったら誰が稼いでくるんだ?」

 こんな感じで言い争いは続き、当然お互いの仲も悪くなった。そしてリンがついにヒロトを復活させるため、行動に出た。リンは仕事帰りのショウに眠り薬入りの酒を飲ませ、眠ったショウを友達と一緒にリンの車まで運び、ショウを車に押し込むとリンは一人車に乗って急いでアマリオの所へ向かった。リンがショウを背負いながらアマリオに言った。

「生贄はショウよ。さあ、ヒロトの復活をはじめて。」

「・・・わかりました。」

 アマリオは儀式の部屋へリンを案内した。部屋の中央には魔法陣があり、アマリオはそこにショウを置くように言った。

「では行きます。哀れな死者よ、同族の血を糧に今こそ蘇りたまえ!」

 すると魔法陣が紫に輝き、ショウの姿が消えていった。そして少したつと、魔法陣の中心に少年の姿が現れた。

「・・・っ!!ヒロト、ヒロトよ!!」

 儀式が終わるとリンは魔法陣の中心に駆け込み、蘇ったヒロトを抱きしめた。しかしこれが、長いルーレットの始まりになろうとは誰も思わなかった。







 それから八年後、アマリオの許をヒロトが訪れた。アマリオは魔術を極めた故、年は取ろうと容姿は変わらない。ヒロトの方は立派な青年になった。

「父・ショウを蘇らせてほしい。」

 これがヒロトがアマリオに言った一言だった。

「それは出来ますが・・・、ショウの両親か嫁が生贄にならなければなりません。」

「あんたなら言うと思ったよ。」

 するとヒロトは一旦アマリオの家を出ると、リンを背負って戻ってきた。

「これは・・・。」

「さあ、儀式を始めろ。」

 驚くアマリオに、ヒロトが冷酷な声で言った。

「しかし、数年前に君はリンのおかげで復活したんだぞ・・・。」

「そんなのはどうでもいい、俺はショウに会いたいんだ。」

 アマリオはヒロトの決意に何も言わず、儀式を行った。するとリンが消えて、ショウが魔法陣の中心に現れた。

「父さん!!」

「ん・・・私は・・?って、その声はヒロトか!!」

 そしてヒロトとショウは抱き合って、感動を分かち合った。先程の冷酷な印象が、ヒロトからすっかり消え去っていた。







 それから二ヶ月後、今度はショウがヒロトを引きずりながらアマリオの所に来た。ヒロトはズタボロにされ、猿ぐつわをかまされていた。

「アマリオ、リンを復活させてくれ。」

 そういうショウにアマリオは、ヒロトと同じ質問をした。

「解っている、ただリンを犠牲にしたのが許せないのだ。」

 ショウが言うと、アマリオは何も言わずに儀式を行い、リンを復活させた。

「リン・・・リンか!!」

「ショウなの・・・?」

 二人は再会を喜び、抱き合った。







 それからルーレットが始まった。ショウが消えてヒロトが蘇り、リンが消えてショウが蘇り、ヒロトが消えてリンが蘇る。二ヶ月ごとにルーレットは続いた。そしてある日、アマリオは冥界の神から宣告を受けた。

「お前は生と死の摂理に反している事を繰り返している、止めなければ地獄に落ちるぞ。」

「わかりました、私に考えがあるので手を貸してくれませんか?」

 アマリオの考えを伝えると、冥界の神は納得して姿を消した。








 そして数日後、アマリオの所にヒロトがやって来た。もちろん眠っているショウを連れている。

「アマリオ、例の儀式を。」

「はい、承知しました。」

 アマリオは手順の通り儀式を勧めた、しかしショウを生贄に現れたのは凶暴なドラゴンだった。

「うわーー!!アマリオ、どうなっているんだ!!」

 ヒロトが言うと、ドラゴンはヒロトを丸呑みにした。そしてアマリオは言った。

「これからは冥界で親子仲良く、暮らしてください・・・。」

 




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魔術師・アマリオ 読天文之 @AMAGATA

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