第31話 ユリアと街中デート


設定集で、帝国(主に帝都)の文化について追記しました。


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学院の一学期が終わり、夏休みに入った。

夏休みとは言っても夏は終わりかけだが。



「おはようございます、ケント様!」

「おはようユリア。あれ?シルフィは?」

今日は珍しくシルフィが飛び込んでこない。

どうしたのかと思ったがベッドルームを出るとその答えが分かった。


「あっ!ケント君おはようございます!」

「おはようエリー、今日も早いね。さっき一の鐘が鳴ったばかりなのに。」

「今日はエファお義姉様にお呼ばれしているんです!!なので早めに来ちゃいました!えへへ」

「そうなんだ。ボクも朝からエリーの顔が見れて幸せだよ。それにシルフィとユーファの仲も良さそうだね」

ユーファはエリーの精霊獣だ。青い羽根の鳥で目が黄金色をしている。


「同じ鳥さんですからね!よくじゃれあっているんですよ!」

「おっと。ふふ、ユーファもかわいいね。」

手のひらに乗ったユーファを撫でたりしていると、シルフィがすねたのかエリーにすり寄っていた。

「シルフィちゃんは甘えんぼですね~。ユリアとも仲がいいんですよね?」

「はい、もちろん。朝は一緒にケント様を起こしていますから。」

「私もケント君の寝顔見たいです。でもお母様にも皇后陛下にも殿方のベッドルームには勝手に入ってはいけないと言われるんです。なぜでしょう?」

エリー、まだ純粋なままでいいよ。それは知らなくていいことだ。

男のベッドルームに入るなんて...あんなことやこんなことしちゃったりするかもしれないよ?うへへ。


”ピュイ!!”

”ピィ!”

「どうしたの?」


2羽が突然鳴いた...と思ったら扉がノックされた。

「ケント~♡入ってもいいかしら?」

「あ、エファ姉様?どうぞ~!」


扉が開くと、髪を一つにくくったエファ姉様が入ってきた。

「おはようケント♡それにエリーちゃんとユリアちゃんも♡」

「おはようエファ姉様。どうしたんですか?」

「「おはようございます!!」」


「ああ、エリーちゃんがケントの部屋にいるって聞いたから。別に特別な用事はないわ♡」

「そうですか。そういえば姉様は朝ごはん食べましたか?」

「まだだけど...」

「じゃあ一緒に食べましょう!せっかく一緒なんだし!」

「あら~いいわよ♡エリーちゃんとユリアちゃんは?」

「あ、私は屋敷で食べました。」

「私も食堂で軽く...」

「じゃあ食べている間シルフィのことお願いできる?」

「もちろんです!」


「ユリア、アマネ、朝食をエファ姉様の分もお願い」

「かしこまりました。少々お待ちください。」



もう一人のお世話係のリリーは今日は帝都の実家に帰っている。

2日後に戻ってくるらしい。

少し待つと2人分の朝食が運ばれてきた。



「じゃあ食べましょ♡」

「はい!」


「そういえばケント。今日は何かするの?」

「うーん、特に決めてないです。ユリアとのんびり過ごそうかなと思ってました。」

「ふーん、せっかくだし市街地デートでもしてみたら?教会の近くに新しいカフェができたらしいわよ。ユリアちゃんと行ってきたらいいじゃない♡」

「えっ?市街地に行っていいんですか?」

「騎士が一人つくと思うけどね。こんな休みの時じゃないとユリアちゃんとデートできないでしょ?」

「あ...確かにそうですね。」

「ふふ、でしょ?エリーちゃーん、ユリアちゃーん!」

姉様はシルフィたちと戯れていた2人を呼んだ。


「はい、なんでしょうエファお義姉様!」

「どうかされましたか?」

「今日、ユリアちゃんとケントは市街地でデートよ♡」

「市街地でですか!とてもいい案ですね!」

「あっ、でもメイドの仕事が...」

「そっか、今日はアマネと2人だけだったね。」

「ケント殿下、今日は特別な仕事はありませんから大丈夫ですよ。」

アマネは大丈夫らしい。


「ならいいわね!ケントとユリアちゃんは行ってきなさい!二人きりのデートなんて貴重でしょ?」

「そうですよ!それに私はお義姉様と2人きりのお茶会をするんです!せっかく2人きりなんですから行ってきてください!」

「わ、わかりました...。あっ、でも服が...この制服しかないです...。」

「今日は私の昔の服を貸すわよ♡ケント、ついでにユリアちゃんの服も買ってあげなさい」

「わかった。じゃあ昼食をカフェで食べて、そのあと服を買いにいこっか。」

「決まりね♡じゃ、ユリアちゃんは私の部屋に来て!エリーちゃんも来る?」

「はい!!」

「ケントは正門で待っててね♡ユリアちゃん、とっても可愛くするから!」

「わかりました...。」

ボクはエファ姉様に連行されるように連れていかれたユリアを見送り、自分の支度をすることにした。


「アマネ、トーレスに今日の予定を伝えてくれる?」

「あら、私から伝えなくてもよいのでは?」

「え?」


「その通りです、ケント殿下。」

うわっ!!いたのか!?

「びっくりした...!いつからいたの?」

「エファ殿下と共に朝食をとっておられるところからでございます。エファ殿下はお気づきのご様子でしたからケント殿下も気づいておられるのかと...。とりあえず話はすべて聞いておりました。カフェの手配も済ませてあります。」

ボクの専属執事が有能すぎて怖いんですけど...。

「あ、ありがとう...。ほんとにいたの...?」

「私の隣に立っておられましたよ?」

アマネとトーレスはにっこり笑った。

ホントウニホントウデスカ...?





ボクは着替え終わり、髪の毛がさらさら過ぎてあまりつかない寝癖を直して支度を終えた。

そして正門前で待っていると、ユリアがやってくる。

「ケント様...。お待たせしました...。」

おーん、かわいい。

半袖の白いシャツにふわっとした濃い紫のスカート、そしていつもはフリルカチューシャを付けて下ろしていた髪はいわゆるポニーテールになっている。


「あの、変じゃないですか...?髪型とか、初めてこんな感じにしたんですけど...」

「あ、すごくかわいいよ。ごめん、見惚れててまともに言葉が出てこなかったんだ。」

それを聞いたユリアは嬉しそうな顔になる。

「ありがとうございます!」

「2の鐘が鳴ってしばらくたったしカフェに向かおうか。」

「はいっ!」

ボクとユリアはは手をつないで歩き出す。

少し後ろから護衛の騎士が二人ついてきていた。

「今日の髪型いいね。あまり見ないから新鮮だよ。」

「本当ですか?私もあまり髪形を変えたことはなかったんですけど...これにしてよかったです。」

「すごく似合ってるよ。先が揺れてて可愛い。」

「照れますからその辺にしてください。あ、ここですね!」

着いたのはこじんまりとしたおしゃれな感じのカフェだった。

その店先には今日の日替わりメニューと共にちゃっかり”皇室御用達”の文字があった。


ドアを開けるとベルがちりんちりんと音を立てる。

「いらっしゃいませ、ケント殿下、ユリア様。」

迎えてくれたのはおっとりとした雰囲気の、眼鏡をかけた初老の男性だった。

「こちらへどうぞ。テラス席をご用意しております。」

店内には何人かの客がいて、ボクたちの方を向いて頭を下げてくる。

ボクはそういうのはいらないよ、と示してテラス席へと向かった。

水路のほとりに建てられたこのカフェには、きれいな水をたたえる水路を眺めることのできるテラス席が5つあった。

その中で一番端の一席は見るからに他とは違う。

皇室御用達の店にあまり貴族は来ないから、おそらく皇族用なのだろう。

ボクとユリアはそこへ案内され、向かい合って座った。

「すごくいい席ですね...!」

「そうだね。ユリアは何を食べるの?」

「えっと...あれ?このメニュー表、お値段がありませんけど...。」

「うん、値段は関係ないからね。食べたいものを選んでね」

「わかりました。少し考えます...。」

そう言うとユリアはメニュー表を見ながら悩みだした。

ボクは日替わりのものに決めて、悩むユリアを見ていることにした。


あ、カルマカウセット?それと...ああ、それかサンドイッチセットで悩んでるのかな?

そういえば数年前からサンドイッチがすごく流行ってるということをアマネに聞いた気がする...。


ふふ、まだ悩んでる。おいしいもの大好きだもんね。

仕方ないな~、ここはちょっとだけ...。

「ユリア、明日も来ようか、エリーも一緒に。」

「えっ?」

「そしたらどっちも食べられるでしょ?」

「で、でもお仕事が...。」

「じゃあ昼食だけここにきて食べよう。城からもそんなに遠くないし」

「あの、私そんなにわかりやすいですか...?」

「ふふっ、すごく悩んでたからね。」

「うう、アマネさんに言っておきます...。」


結局ユリアはサンドイッチセットを頼むことになった。

時折水路を通る舟に手を振ったりしながら待っていると、頼んだメニューがやってきた。

目の前で幸せそうにサンドイッチを食べるユリアを見ながらボクもおいしい料理を食べた。


「ご馳走様。おいしかったよ。明日の昼も来るからよろしくね。」

「ありがとうございます。お待ちしておりますね」




カフェを出て、ブティックの立ち並ぶ通りへ向かう。

ショーウインドウに並んだ服の中にユリアに似合いそうな雰囲気のものを見つけたのでその店に入った。

「いらっしゃいませ!ようこそおいでくださいました。」

「うん。この子に似合いそうな服をいくつか頼む。」

「かしこまりました。こちらへどうぞ。」

試着室に入ったユリアは店員さんと何か話している。


少し待つとカーテンが開いて着替えたユリアが出てきた。

「どうでしょうか。これから涼しくなるので長袖にしてみました!」

「うん、買おう。すごくいい。」

「は、速いです!もっと見てください!」

「ごめん。すでに可愛いから即決しちゃった。」

ボクはじっくりユリアを見る。

袖口に可愛いフリルのあしらわれたシャツに瞳の色と合う薄い緑のロングスカート。

そしてなんといっても下ろした髪に良く似合う緑のカチューシャ...。

最高です。かわいいです。

「あ、あのそんなにじっくり見られると照れます...。」

「可愛いなぁ。これは買いで」

「はい、かしこまりました。」

「よしじゃあ次だ。」

その後いくつかの店舗でユリアのファッションショーをして似合っていたものを買うと、もう夕暮れ時だった。


「いい時間だね。そろそろ帰ろうか。」

「はい!今日はありがとうございました!」

「またデートしようね。それとエリーにも明日のこと話そう」




☆  ☆  ☆  ☆  ☆  ☆




「陛下、ケント殿下が市街地を散策されている途中、不審な人物を7人ほど確認いたしました。」

「なんだと!?そやつらは今はどうなっているんだ?」

「別の”影”達が追跡して調査中です。加えて過去にも学院付近で似た服装の者が見かけられていたということです」

「わかった。もしケントやその周辺に危険が及ぶようであれば。」

「はい」

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転生したら大帝国の末っ子皇子でした あまぎ @kchan16

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