Dead or alive No place to run

マドカ

Dead or alive No place to run


目が覚めると薄暗い部屋に居た。

そして記憶がない。

私は一体、、、、



「ようこそ」



黒い服の男が突如現れる。



「ここはこの世とあの世の境、あなたはこれから選ぶのです、生か死を」



そんなことを突然言われても意味がわからない。

何せ記憶がないのだ。



「簡単なことですよ、二つに一つ。 生きたいのか死にたいのか。」



、、、生きる?死ぬ?

私は私がどんな人生を辿ったのかわからない。

しかしこの男の言葉にはえもしれぬ「説得力」があった。

ここで軽々しく答えてはならないことと感じた。



「。。お悩みのようですね、無理もありません。 皆様そうですから。 時は無限にあります。 ではじっくりとお考えを。」



どれだけの時が経っただろう。

考えに考え抜いた結果、私は選択した。



「成る程思いの外早く決断されましたね。他の方ではもっと長いものですから少し驚きました。 では貴方のお望みのままに。よき旅を。」



***********



またか。

と私は思う。



私は歴史的な建築物の一つ。

1600年代後半に才能溢れる若き青年により、造られた建築物。



人間たちは私が破損、老朽化する度に修復する。

今回で一体何百回目なのだ?

飽きもせず、よくやる。



「すげえ! ガイドブック見てよかったな!」

「素晴らしいわこの構造、そして神聖で清らかな気持ちになるわ」



誉めてくれるのは有難いのだがね、そこは最早原型は殆どないのだよ。

君達が幼い頃に修復改善された所なのだよ。



私は常に考える。

実に九割近い私の体が、最新建築で補修され、変わっていく。

所謂、オリジナルの私は最早居ないのだ。



生きているではない、

無理矢理生かされている

死んでいるではない、

私の魂と意識は常に在るのだ。



ふと、大規模な修繕をされている時に意識が遠のく時がある。

その度に何か重大な決断をしているような気がする。

それが何なのか

私は覚えていない。

人間が言うところの夢なのだろうか?



いや、建築物が夢など可笑しい。

きっと気のせいだろう。。。。



*******



目が覚めると薄暗い部屋に居た。

そして記憶がない。

私は一体、、、、



「ようこそ」



「あなたはこれから選ぶのです、生か死を」



数百回繰り返す魂の行き場。

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