全体的に完成度が高く、見所が多い作品だと思いますが、その中でも特に自分の目を奪ったのは、『主人公が自作した3Dモデル、その素材のDL数』という要素ですね。
これが変動するか、しないかが、物語のオチとして物凄く上手く機能しています。
主人公の本音としては、これの数字が一番増えてほしいわけですよ。にもかかわらず……なかなか変動しないのは、あらすじだけでも良く解ると思います。
それ故に、Vtuberとしてどんどん人気を博していく主人公の状況が理想的なサクセスストーリーに見えつつも……このDL数の存在が、「あ、これ、違うやん……」と、絶妙なタイミングでツッコミとして入ってくれるわけです。
その味わい深さが、クセになりますね。
昨今注目の高いVtuberものと思わせて、それだけでは終わらない今作、最後まで追い続けてみたいです。
突然だが、私はVtuberが大好きだ。
Vtuber。つまり、バーチャルで活動する配信者の事を指す。
様々な衣装や姿、人種の方たちが、日々面白いコンテンツを届けてくれる。そんなVtuberが好きで堪らない。
最近では海外でも活動が増えてきて、登場と共にあっという間に登録者百万人を超える方もいる。
さて、そんなVtuberにおいて、大きな特徴ともいえるのが見た目、つまり『ガワ』と呼ばれるものだ。
少し夢を壊すようだが、Vtuberは中に実際の人が存在する。そこに様々な葛藤や逆に魅力となる点があるのだが、今は割愛させていただく。とにかく、中に本物の人がいて、『ガワ』と呼ばれるグラフィックがある。
本作はそんな『ガワ』に焦点があてられた作品だ。
主人公の琥珀は『ガワ』を作るグラフィッカーである。色々な事情のもと、自分の小遣いの為に自信の傑作であるメイドサキュバスを制作、販売しているのだが......かかった費用に対して、売れていないのが現状だ。
そこで彼が辿り着いたのが、自分がその『ガワ』を使って活動をし、グラフィックの宣伝をするという事だった。
そして始まった、琥珀少年もとい、『ショコラ』の配信活動は、思わぬ方向へと発展していく。
本作はグラフィッカーという少し変わった立ち位置の人物に焦点が当たっている分、少しだけ専門的な部分も登場する。が、それを難しく感じさせないかみ砕き加減と、読みやすいテンポで、小説初心者にもVtuber初心者にも勧めやすい一作である。
さらに言えば、ショコラの配信のなかにはVtuberのファンなら思わず『あるある』といってしまう様な小ネタも多く、幅広く楽しまれる作品だ。
まだVtuberの事をあまり知らないんだけど......。
最近、Vtuber界隈でも小説の話が時々出てきて、読んでみたいけどどれから読めばいいのか......。
そんな人には、是非この作品をおすすめしたい。