1章 15話 速き者
「うぉぉぉぉぉ!!」
俺は思いっきり地面を踏み込んだ。そして奴の顔目掛けてパンチを繰り出した。
「きゃははは!!そんなことをしても僕に攻撃できないのに馬鹿だねぇ〜!!」
俺が拳を振り下ろした時にはキマエルは背後に居り蹴りを繰り出した。俺は奴の一連の動きに反応出来ずそのまま攻撃を受け地面に倒れた。
「くそ、速すぎる……」
「諦めんなよお前、あんなガキ天使相手に苦戦しすぎだ。もっと全力でいけ!!」
「そんなことわかってるわ、もっと全力でぶちのめすまでだ!」
俺はその場から立ち上がり思いっきり踏み込み奴に攻撃を当てようと何発もパンチを繰り出す。
「はははは〜無駄だと思うけどねぇ〜僕の速さに追いつかない限り君は勝てない!!」
キマエルはパンチを全て避けながら背後に周り先程と同じく蹴りを繰り出した。俺はまたも奴の攻撃を見切れなくて蹴りを思いっきりくらった。
「ぐはっ!!……くそ、どうするルシウス、このままだとマジで死ぬぜ。」
「こうなったらあれをやるしかない。」
「あれってなんだよ?」
「お前は俺の指示に従え、俺に任せろ。失敗したら確実に死ぬかもしれない。だが成功すれば奴に勝てる程の力が出る。」
「わかった、その賭けに乗ってやろうじゃねぇか!」
俺はルシウスの提案に賭けた。これで状況が変わるのならなんでもやってやると思ったからだ。
「圭、あいつから少しの間距離を取れ、俺の魔力とお前の魔力を全部解放するんだ!」
「OK!!」
俺はルシウスに言われた通りにキマエルから少し距離を取ろうと奴のいる場所と反対方向に走り出した。
「えぇ〜なんでそっちに逃げるのさぁ〜まぁ追いつけるから意味ないんだけどねぇ〜」
奴と距離が取れたと思った俺は魔力を解放するために集中しようとしたが気がつくと目の前にキマエルが居たのだ。
「おいおいまじかよ?!」
「クソが、圭ひたすら走れ!」
「何か企んでるようだけど無理だと思うなぁ〜」
何度走っても追いつかれ別空間から放たれた矢を避けながらの繰り返しで体力の限界が近づいていた。
「ルシウス、あいつを何とかしない限りお前の作戦を実行出来ねぇ。」
「あぁ、何とかしないといけないが考えてる暇はないようだな。」
俺達が話している時だった。キマエルは大きな光の球を作成していたのだ。
「もうさ〜追いかけっこ飽きたから殺さない程度で痛めつけるね?死んだら魔力を手に入れられないからさ〜」
キマエルの手にある光の球はみるみる大きくなっていった。俺達は逃げようとしたがもう逃げる力も残っておらず諦めるしか無かった。
「痛みは一瞬だからね♪」
キマエルはその言うと光の球を投げた。
「マジで死ぬぜ」
「諦めんな、まだ終わったわけじゃねぇ!」
俺は今ある力を全て使いあの球を何とかしようと思った。この変化した両腕の力はまだ発揮できていない、今こそなんじゃないかと思い光の球を両手で抑えた。
「うぉぉぉぉぉ!!」
「俺の魔力を半分使え!」
ルシウスはそういうと魔力を分け与えてくれた。すると両腕が先程よりも不気味な姿になった。
「さっきよりもパワーを感じる!」
俺はそのまま光の球を押し返すことに成功した。
「うっそ!押し返せたのかぁ〜まぁいいか」
キマエルは笑いながらそう言うと指先から光弾を放ち光の球を打ち消した。光の球が消える瞬間辺りを眩しい光で包み込んだ。
「うわっ!眩しい〜!」
キマエルも想定外だったのか空高くに飛び目を瞑った。その光景を見ていたかのようにルシウスは感じとった。
「圭、今がチャンスだ!俺様と同じように持ってる魔力を全て解放しろ!」
「おう!」
俺はそう言うと目を瞑り今まで以上に集中した。全身から込み上げてくる魔力を一点に集めるために。
「ふぅ〜眩しかった〜……あれぇ?何してんだろぉ?何かの企みだろうけどもう間に合わないねぇ〜」
キマエルはそう言いながら俺の背後に回っていた。
「じゃあねぇ〜」
キマエルはそういうと右手から光の刃のようなものを出現させ俺の首元目掛けて振り下ろしたその瞬間俺の周りを青黒い光が包み込んだ。
「うわぁ〜なにこれぇ〜!」
キマエルはすぐさまその場から離れた。奴も何が起きたかわからなかったようだ。そして光はなくなり俺は立っていた。
「ふふふ〜何も起きてなかったねぇ〜じゃあもう一度……ってあれぇ?居ない……?!、な、なんで僕の背後に居るんだ!!有り得ない、僕は誰よりも速いはずだ!僕が背後を取られるなんて有り得ない!!」
「教えてやるよ、お前より俺の方が速い。ただそれだけだ。」
「な、なんだと!!ふざけるな僕の方が速い!!……え、僕が空を見上げてる?」
「どうだ、これが俺の力だ。お前より速い!」
「何をした!お前は弱かったはずだ!」
「弱くはねぇよ?ただ力を完全にコントロール出来なかっただけだ。それに俺は圭では無い、お前の大本命ルシウスだぜ?」
「何だと?!」
驚くのも無理はない。今キマエルの目の前に立っているのは俺であって俺ではない。中身はルシウスだからだ。何故ルシウスが俺の肉体に居るのか、それは先程俺とルシウスが魔力を解放していた時お互いの魂を入れ替えたのだ。ルシウスが言っていたキマエルを倒せる作戦というのは魂を入れ替える事。そうすることによって俺では出せなかった力をルシウスなら最大限に引き出せることが出来る。そしてこの方法は一心同体の俺たちでしかできない方法だ。
「流石は俺の魔力どんどん力が溢れ出すねぇ〜んじゃあ見せてやるよ!」
するとルシウスは魔力を解放し、背中から真っ黒の翼を出現させた。
「おお〜これは凄いなぁ〜!!俺の魔力と圭の魔力が合わさることにより俺の力をここまで増幅させるとは流石俺様感無量!!この姿に名前でもつけてやろうかなぁ〜両腕が変化したのがフェーズ1で、この翼の形態をフェーズ2とするか。」
「この野郎〜許さないぞ!」
「ふん、見してやるよ俺様の反撃をな。」
これからルシウスのターンが始まる。
普通の生活を送ってきた高校生が突如強い堕天使と同化して最強になるために奮闘する。 ガルブロス @kingkj
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