-弟妹といる風景

泉 水

第1話

うちは4人兄弟という、結構珍しいほうになるだろう兄弟構成である。

周囲を見ても、せいぜい2人兄弟、一人っ子も珍しくない。

ただ長兄である僕は高校2年、17歳。

その下は妹、弟、妹と続く。で、5歳、3歳、1歳。

年齢が離れすぎていて、兄弟というより、なんだか叔父さんになったような気がしている。よく知らんけど。


父は、遠距離トラックの運転手で母もパートにでていたりする。

そういうわけで長兄である僕は、下の弟妹の世話も結構やってきたりする。

おむつを替えたり、ご飯を食べさせたり、風呂に入れたり、エトセトラエトセトラ。

だからか、弟妹からは時々「お父さん!」と呼ばれたりする。


今日は一番下の妹を抱っこして、弟の手を引きながら、スーパーに買い物に行く。

すぐ下の5歳の妹は買い物かごを抱えながら、後をついてくる。

これはこれでほんわかした気分になるのだけど、どうせ抱っこするなら、どうせ手をつなぐなら、彼女にしたい。いないんだが。

妹達は僕と結婚する、って言ってるけど。


白い息を吐きながら、スーパーに到着。抱っこしている妹はスースーと寝息を立てている。弟はお菓子コーナーに猛ダッシュ。

買い物かご抱えた妹は「走っちゃだめよー!」とお姉さん風を吹かせている。

僕は長兄として、幸せを感じている。でも彼女欲しい。


母のメモにあったものを買い終え、うちに帰る。

抱っこしている妹はまだ寝ている。ポカポカしている。

上の妹と弟は互いに手をつないで、アニソンを歌いながら僕の後を歩いてる。


「お兄ちゃん!」

下の妹が大きな声で僕を呼んだ。

「どうした?」と振り返る。

弟がこけていた。

で、泣き出した。

しかたないから弟も抱っこした。

腕を買い物かごの取っ手に通して、右手に弟、左手に妹。

さすがにフラフラしそうになる。


すぐそこにある未来に対して、僕は悩んでいる。

この光景を後ろにおいて、自分の未来を目指していいのかな。

弟妹達よ、君たちが僕の年齢になる頃、僕は君たちに頼りにされる大人でいるだろうか?僕は君たちの理想の兄でいられるだろうか?


まだ親の庇護下にあるのに、どうにも年寄りじみた思いにとらわれつつ、我が家に帰り着いた。


僕は都会の大学を目指している。たぶん異世界に召喚されるより高い確率で、僕はこの家から離れることになる。

んなもんで、ラノベの読みすぎに気を付けつつ、教科書や参考書を読み進めることになる。


別れと出会いは紙一重。

弟妹達のおやつを用意しつつ、僕は今この瞬間、いとおしく思ったりする。

でもどうせなら彼女欲しい。




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